ごちゃ倉庫

09/05

◎一番にいこう


2012-4-14 03:03

市場に行こう



このお話は島谷ひとみさんの『市場に行こう』をイメージに作っています。

あくまでイメージです。


宜しければ追記へ
(記憶喪失×健気人外)




なんにもいらない。君がいれば。

地位も名誉も記憶も…名前でさえ

いらない。


君さえ、いれば…





*
王子様、ねぇ…王子様、貴方さえ、いなければ、全ては上手くいくんです。


私の思い通り。
貴方は邪魔なのですよ、王子様。


だから…ねぇ、私の為に是非とも死んでください、王子様




それが、私の望みです、
ほら…死んで?ねぇ…○○




妖しい、そして美しい笑みを浮かべながら、その人物は短剣を持ち、こちらへ向かってくる。



裏切られた衝撃と、まさかとどこか心で予想していた出来事に、足は動かない。


短剣は、確実に近づいていたのに。
そこから一歩足りとも動けなかった。



「っ…!」
キラリと刃が光る。
それと鋭い痛み。
そして、衝動。


視界は、どろりとした、赤い色で彩られる。


薄れゆく、記憶。ニヤリ、と俺を刺した人間は、口角をあげる。



嗚呼、やはりお前が裏切っていたのか。

裏切り者をみて、見抜けなかった自分がなさけなくなる。


さようなら…○○、様…?



そして…そして。
視界は黒ずんでいく。

真っ黒な、色へと吸い込まれる。


記憶と共に。
リセット、されていく…。


何も知らない、全てを壊されて。


リセットされる。


全ては、一度、リセットに。


俺の記憶も、地位も生さえも、全ては飲み込まれた。





市場に行こう


 目覚めたら、自分の手には、何もなかった。

自分の名前さえなかった。


なにかが、なにか、大切なものが、あった気がしたのに。


それが、なんなのか…もう、忘れてしまった。

目覚めたら俺にはなにもなかった。



「リウ、リウ、」

愛おしい人の名を呼ぶ。
名を呼ばれた俺の愛おしい人、リウは、ぽけっと、しながらも俺を見つめた。


澄んだ、リウの青い青い、宝石のような瞳。

揺れる稲穂のような金の髪。

まるで、人形のように、綺麗な、精悍すぎる少し幼い顔。


そんなリウが俺をじっとみている。


子供の様な、双眸で。



「リウ、ちょっと外、行ってくる」


そう声をかければ


「そと…?どこ、いく?」


片言で、したったらずな言い方で尋ねるリウ。

幼子のようなその言い方。

幼子が好きな訳ではないが、リウのその言い方に、ついデレ、っと目尻が下がる。


リウは、綺麗なのに可愛い。


美しいのに美しい。
幻想的な、人。


人間ではない、人。
人の形をした、人ではない人。


だけど愛おしい、記憶がなかった俺の唯一の人



「市場。食べ物買いに行ってくる」

「市場、いく…?リウもいく。離れる…いや。いっちゃ、駄目?」


上目目線で、恐る恐る尋ねる、リウ。

揺れるリウの瞳。

一人で待っているのが心細いんだろう。



「駄目」


そんなリウに心揺れながらも、きっぱり断る。
途端、リウはしょんぼりと肩を落とした。



俺だってリウと市場にいきたい。リウが好きなものを買ってやりたい。


しかしリウは、人とは違うもの。
人間ではない。人外、というべきだろうか。


人間よりも美しく、幻想的な儚い。

雪のように消えてしまいそうで、炎のように、危うい。


そんな存在だ。

人間に似た容姿をしていても、リウは人ではない。人とは違う力を持っているのだから。


リウが、人が多い街へ出れば、その人とは違う、白い透き通る肌や、瞳から人に迫害される。

殺されそうになったり見世物として売られそうになる。

綺麗、なのに。
人とは少し違う、というだけで、その身は傷つけられる存在になる。


だから…リウはこの森にいたほうがいいのだ。

人が近づかない、この深き森で。



俺と、二人でいればいいんだ。


ずっと生きていればいい。


そう、俺だけといればいいんだ。


他の人間なんて、いらない。


俺にはリウだけいればいい。


この森にきたとき、俺は記憶をなくしていた。

そして…リウにであった



片言しか言葉をしゃべれない、人間ではない、幻想の生き物の、リウに。



「…っ、」
ぎゅ、っと俺の服の袖を握る、リウ。


「帰ってこない、いやだ。
リウ、ひとり、いや」



そういって俯いて、俺の服を握ったまま、離そうとしない。


俺は不安に目を潤ませるリウの頭を撫でる。


「帰ってくるから」

優しく髪を梳きながら、リウに言い聞かせる。

リウは、いつ俺が記憶を戻し俺が自分の前から消えるか不安なのだ。


記憶は確かに戻ってほしい。俺がどこの誰だったか…確かに知りたい


でも、それいぜんにリウがいてくれればいい。


リウさえ、いてくれれば…。


記憶も地位もなくても別に困らない。
いいんだ。

リウが側にいるだけで
それだけで、幸せだから。


「すぐ、帰ってくるから…な」


いまだに不満そうなリウを抱きしめて、髪をかきあげて額にキスをする…


「…っ…いきなり、ズルイ…」
「ちゃんと…リウはお留守番、出来るよな…」


ニッコリと笑っていえば、リウは渋々うなづいた。


「ちゃん…と…帰っ…て…きて…」

「あぁ、ちゃんとリウのところにくるから…」

記憶なんて、なくていい。
その手に、この愛おしい存在が居続ければ。



‐‐‐‐‐‐‐

一時間クオリティー。

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