ごちゃ倉庫
◎アイ、
2012-9-12 19:25
アイ、
アイキルユー。
「命乞いは…しないのか?」
カチャリ、と、嫌な金属音。銃口を向けられる。かつて愛した人間に。
俺が、馬鹿みたいに愛していた人間。
正樹。俺の、恋人、だった人。
気付かなければ、良かったのだろうか。
正樹が、俺の敵の人間だと。けして交わってはいけない人間だと。
気が付かなければ、偽りの幸せに身を委ねられたのだろうか…。
愛のまどろみに、身を任せていたのだろうか。
敵国のスパイの俺と、この国の防衛の要とも言えるお前。
この国を壊したい俺と、守りたいお前。
初めから、違い過ぎていた。
少しも、俺たちの距離は近くなんかなかった。
「しねぇよ…、命乞いなんて…殺すなら、殺せ…」
吐き捨てるようにそういえば、正樹は忌々しそうに眼を細めた。
いつもは、俺を愛おしそうに見つめる瞳が…今は…、
「いい度胸だな…、」
凍えるように冷たい。
じゃり…、と、繋がれた鎖が、やけに重く感じる。
繋がれた手足。
薄暗い廃墟。周りには…、無数の死体。
どこか非現実な場面なのに、俺は異様に落ち着いている。
もう、殺されるっていうのにさ。
「ここで、殺されてもいいのか…?」
「…っ」
お前に殺されるのなら…それはそれで、本望かもしれない。
だって、お前は、俺を初めて愛してくれた人だから。
初めて、必要としてくれた人間だから。
愛してる。その言葉を、その意味を、初めて教えてくれた人だから。
だから…、
「殺すなら、殺せよ」
お前に殺されるんなら、
俺にとっては、本望なんだよ。
*
敵対同士の恋人設定。
スパイの方が、大きな組織の一員で、裏切ったものには死を!みたいな厳しい罰則があるところで
あえて、恋人に殺されようとするのとか好きです。
で、事実を知らない恋人も、殺せず家に監禁→逃避行とか。

