対面
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ミムラさんと会う事になったのは、クリスマスが近くなった冬の日の事でした。
そういえば、ちょうど一年前くらいの前に、僕は朔夜君に告白されていました。
今は、色々あったけれど、だいぶ僕は落ち着いたと思います。
もういつかの日のように死にたいとは思いませんでした。
ミムラさんに会おうとしたきっかけは、僕がたまたま放課後、朔夜君とその恋人が教室でキスするところを偶然見てしまったからでした。
もう、朔夜君のことはあきらめたと思ったのに。
その光景を見て、僕はやはり傷ついて…。
家に帰り、ミムラさんの電話がきたら、衝動的に言っていたのです。
『ミムラさんに会いたい、』と。
ミムラさんの僕を好きだという気持ちを利用しているようでしたが、ミムラさんに会えば、この感情を消せると思ったのです。
未練がましい、この感情を。
「ようやく言ってくれたな…。俺に会う覚悟、できたか?」
「…はい…、まだ、怖いけど…でも、会いたいです…ミムラさんに」
「俺も怖いよ。キノの理想のミムラさんが、壊れたらどうしよう、って思うと。なんせ俺、本気の相手にはこっぴどく振られちゃった男だしな」
「ミムラさん…」
理想が壊れる事なんて、ない。だってミムラさんは、いつも優しくて、何もないのに優しさだけで僕の話を聞いてくれたのだから。
どんな彼だって、僕はきっと失望なんてしない。
僕らは、話し合い、12月15日に会う事になりました。
お互いに、赤いバラを当日もって、それを目印にして会おうということになったのです。
近所、ということで今まで会えばあえる距離でした。
ここまでずるずると会わなかったのは…やはり僕も怖かったのかもしれません。
電話のミムラさんのイメージが崩れるのがというか、ミムラさんに僕が失望されるのが。
決めてから当日まで、僕はどきどきして、ろくに眠れませんでした。
そして、当日。
僕は待ち合わせの1時間前に、薔薇を持って、待ち合わせの駅前の時計の下にいきました。
ミムラさんはどんな人なのでしょうか。
カッコいい人?背は高い?低い?
いいえ、ミムラさんならば、容姿なんてなんだって、構いません。
すれ違う全ての人がミムラさんに見えました。
―薔薇を持った人が、僕に会いに来てくれる。
なんだか少しロマンチックだな。
そんなことを考えながら、赤らんでいく頬に手を充てます。
ミムラさん…会ったら何話そう。
会ったら、まずは、お礼を言おうか。
貴方がいてくれたから、今僕は生きています、って。
貴方が支えてくれたから、ここにいるんです、って。
そしたら…ミムラさんはどんな顔をしてくれるだろう。
待っている間、僕はひたすら、ミムラさんの事を考えていました。
ですが…
約束の時間を過ぎ、いつまでたっても、ミムラさんは来なかったのです。
ミムラさんは、約束の場所には現れませんでした。
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