▼
| 200 - 151 |
不在/イグノラムス・イグノラビムス/真も愛も、どこかに在ればそれでよかった/永遠のイマージュ/満たす恩寵/美しく善きもののすべて/愛情と同情の混濁/眼内閃光/こどくな夜、見つめる先にある空気清浄機の緑色、正常に動いていないのはわたしだけと知る/ぜんぶ丸ごと海に沈んでしまえ/わたしのこと、忘れないでいてね、でもどうか、だれよりも幸せになってね/秋の斜陽/たとえいつか失くすことがわかっていても、掴まずにいられないのは生の希望でしょうか、あるいは/喪失と再生の永劫回帰にはほとほと飽いてしまったのです/鍵を返すよ、ポストにいれて/もう聞こえないあなたのちぐはぐな足音について/傷ついていたと知るのは、いつだってすべてが過ぎ去ったあとのこと/こんないたみだけ残して往かないで/星の海をわたるディアスポラ/百年、あなたのお墓の傍で坐って待っていたとして、あなたが会いに来てくれないことなんて解ってる/暗闇のなかであなたの輪郭をなぞる、その指先からほどけていってしまわぬように/生涯あなたのいちばんでいさせてよ/おろかなひと/いつだって素知らぬ顔をしている、苦しめられるのが好きなあなたのために/落とし穴とわかっているのに/いつか過ぎゆく傷みなら/心臓がいたいの/どれだけ傷つけてくれてもいいよなんて、いわれたって/トレミーの48星座/アポスタシア/光学的欺瞞/蛮勇だねとわらうあなた/臆病だねとかえすわたし/今際の傷さえ皮肉でまとって欺くことしかできないような口なら、いっそのこと縫いつけてしまおうか/殺してくれよって笑う、その歯列がたまらなく好きだ/花印/食べられた心臓/現身のミニアチュール/善なる魂/つまるところ、ぼくはキミのマクガフィンってわけ/水声/行けども、行けども、慰めはどこにもなく/甘い毒みたいなこの泥濘にいつまでも浸っていられたら/曼荼羅の瞳/百日紅の花が咲くころに、もう一度出会い直しましょう/生殖の呪いをこえて/だって神様はわたしだけを愛してくれないでしょう/散り散りに別れていく渡り鳥にも似て
[イグノラムス・イグノラビムス]《Ignoramus et ignorabimus》ラテン語で"我々は知らない、知ることはないだろう"の意. [イマージュ]《image》フランス語で表象の意. [言祝ぎ]《コト-ホ-ギ》 [ディアスポラ]《διασπορά》ギリシャ語で"撒き散らされたもの"の意.民族離散. [百年〜]夏目漱石著"夢十夜"の一節. [アポスタシア]《άποστασία》ギリシャ語で背教,反乱,出発.離別の意. [現身]《ウツ-シミ》現世に生きる人.生を受けた人の身体. [ミニアチュール]《Miniature》彩画.細密画.古代・中世の絵付き写本に収録された挿絵. [マクガフィン]《MacGuffin》小説や映画などのフィクション作品におけるキーアイテム.物語が成立するならそれ自体が何であるかは重要ではなく,代替可能なもの.泥棒が狙う宝石や,スパイが狙う重要書類など. [水声]《スイ-セイ》 水の流れる音. [泥濘]《デイ-ネイ》 [曼荼羅]《マン-ダ-ラ》 宇宙の真理を表す方法として,仏や菩薩などを体系的に配列して図示したもの. [百日紅]《サルスベリ》 ヒャクジツコウ.すべすべした幹肌が特徴で,夏から秋にわたって紅色の花を咲かせる.
▼
| 150 - 101 |
絶滅願望/ようやっとはじまりの場所/あなたは奇跡の顕現/ねえ私たち、いつまで経ってもどこにもいけないね/こびりついた呪いみたいな恋慕/あなたに手渡せず破り捨てた恋文が百通にもなったころ、わたしはようやく気が付いたのです/どんな失くしものをしても迎えたい夜明けがあるの/ぴったり癒着してしまった貴方と私の両腕、どうにか切り離さなくっちゃ/この夜を越えないで/あなたの素肌から立ちのぼる破滅の香りはひどく甘い/天国になんかいけなくったっていい/薄汚れの歪んだ欲動/これ以上わたしの人生を狂わすのはやめて頂戴/思索と詩作/次の瞬間にはもう忘れてるよ、こんな胸の高鳴りも、馬鹿げた後悔も/星辰のみちびきによれば/二人静/憂鬱質の聖なる狂気/昏沈の夕べ/ビリジアンの瞋恚/萌え出づるピエタ/オレンジ・ペコーがよく似合う/いつかその瞳の濁るときが来ようとも/本を読むことも、映画を見ることも、ぜんぶあなたに会うための口実だもの/無為な一夜をすごしてみたくらいで、ほんのすこし貴方の女になった気でいるの/電車を一本逃してみたくらいで、ほんのすこし悪い女になった気でいるの/煙草を一本吸ってみたくらいで、ほんのすこし強い女になった気でいるの/卯の花曇り/朝顔の君/水辺の仙境に咲く花/一生解けない呪いをかけてあげるよ/黄昏をつれてくる人/冬が来たらあなたに伝えようと思っていたのに、もう幾度も季節が巡ってしまったのでした/泣けよ凡骨/愚行/棕櫚の花/お似合いなのにね、わたしたち/傷つけ合いのごっこ遊び/エピステーメー/とんがったナイフみたいだったあなたの眦も、今はまるくひしゃげてる/玻璃の塔/こんな茶番がアレゴリーだとでもいうの/打ち砕けないアイボリー/あなたが本の頁をめくる指先を、ただ見つめているのが好きだった/あなたが煙草をくゆらす指先を、ただ見つめているのが好きだった/あなたがその人の髪にからめる指先を、ただ見つめているのが好きだった/ただ見つめているだけでよかったはずなのに/さながらフラヌール/この青春の終わりに
[星辰]《セイ-シン》 星宿.星座. [二人静]《フタ-リ-シズカ》暗く渋い紅紫色のこと.源義経の愛妾"静御前"をモデルとした能の演目の一つ. [昏沈]《コン-ジン》仏教における煩悩のひとつ.心の沈鬱,ふさぎ込むこと. [瞋恚]《シン-イ》仏教における煩悩のひとつ.憎しみ,嫌うこと,いかること. [ピエタ]《Pietà》イタリア語で"哀れみ","慈悲"の意.十字架にかけられ死を遂げたイエスを抱くマリアの像をピエタ像と呼ぶ. [オレンジ・ペコー]《Orange pekoe》紅茶の茶葉の大きさを示す等級の一つ.名前から連想されるようなオレンジの香りや味はしない. [朝顔の君]《アサ-ガオ-ノ-キミ》"源氏物語"の登場人物.唯一源氏の求愛を拒んだ人物としてしられる. [凡骨]《ボン-コツ》平凡な才能,器量の者. [棕櫚]《シュ-ロ》ヤシ科の常緑高木.五月頃,淡黄色の粟粒のような小さな花を多数つけ,穂状に垂れる. [エピステーメー]《ἐπιστήμη》ギリシャ語で"知識"の意. [眦]《マナジリ》めじり.まなさき. [アレゴリー]《allegory》擬人化した動物などを主人公に,教訓や風刺を織りこんだ物語.例:イソップ物語. [アイボリー]《ivory》淡く黄色がかったやや灰味の白色.象牙. [フラヌール]《flaneur》目的をもたずに都市を彷徨う人物のこと.遊歩者.
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| 100 - 51 |
悔悟者/デカダンスの色香/あなたを好きじゃなかったことなんて一度もないよ、もう全て手遅れだけど/来世でやり直せますように/どんなに仕様がなくなってもきっと愛してあげる/浅ましい顔を見せて/情けない声で鳴いて/もし一度でもわたしを愛してくれたことがあるのなら/記憶を琥珀に閉じこめて/たとえ1カラットに満たない輝きでも/後生これだけを大事に抱えて生きていく/狂わせる春/挽歌/恩寵なんかいらない/つややかな殺意/まっさらな告発/あなたみたいになりたいのか、あなたの特別になりたいのか、もうなんだか分からなくなってしまって/過ちと知りながら手を伸ばすあなたの愚かさを愛してる/決して共に滅びてはくれぬあなたの賢しさを憎んでる/触れ合えもしなかったふたりのこと/あなたに出逢った瞬間の眩しさが、瞼の裏に焼きついたまま/ディレッタントになりきれぬ君/日曜日の沈黙/気づいた時には溶け合って/幻滅させてもくれない人/かわいそうなウェルテル、たかが愛のために死ぬなんて/わざと足を踏み外す私を、どうか生涯許さないでいてね/やっとあなたにふさわしい私になれたのに/身のほど知らずの夢の果て/その骨ばった両手で今すぐに首を絞めてよ/深いところに閉じ込めようとしてどうにもならなかったそれを、砕いて燃やして灰にして、最期は天まで届きますように/あなたのものになれないのなら/わたしのものにならないのなら/死も、また毒も/鳥瞰図/ゆるしとみれん/冥界下り/メヌエットを踊りましょ/ルバイヤート/憂いの国の皇子/この門をくぐる者、一切の絶望を捨てよ/路傍の石よりも軽い命をあなたは拾ったのだった/菩提樹の下で眠る/箴言をかなぐり捨てよ/どれほど美しいものをかき集めたって、生まれ直せるはずもないのに/やがて滅びゆくものたちの美学/夜間飛行/今さら錆びついた心臓/永遠への渇望なんてずっと知らないまま大人になりたかったの/光芒
[悔悟]《カイ-ゴ》過ちを認めて後悔すること. [デカダンス]《décadence》虚無的,退廃的な風潮や生活態度.19世紀末,フランスに登場した芸術至上主義のこと. [挽歌]《バン-カ》葬儀の際,柩を載せた車をひく人たちがうたう歌. [ディレッタント]《Dilettante》芸術や学問を趣味として愛好する人.好事家. [若きウェルテルの悩み]《Die Leiden des jungen Werthers》18世紀のドイツ文学.若き青年が叶わぬ恋に絶望し,自死を選ぶ. [鳥瞰図]《チョウ-カン-ズ》上空から斜めに見下ろしたような形式の地図. [メヌエット]《Menuetto》フランス発祥の宮廷舞曲.優美で穏やかな雰囲気を持つ. [ルバイヤート]《Rubaiyat》アラビア語で"四行詩"を意味する語の複数形. [菩提樹]《ボ-ダイ-ジュ》釈迦がその下で悟りを開いたと言われる樹木. [箴言]《シン-ゲン》旧約聖書の中の一書.教訓の意をもつ短い句. [光芒]《コウ-ボウ》細く伸びる一筋の光.天使のはしご.彗星の尾.
▼
| 50 - 1 |
愚かだって泣いて喚いて、せめて最後はすがってみせて/二度と還らぬ貴方の偶像/ヴェスパー、どこへ消えたの/滴りおちる名前/午餐、談笑、退屈/空言なんてもうたくさん/世界に頽落/要らないわ、ナイフもロープも、ましてやピストルも/行くてをさえぎるネビュラ/ご覧、喪われた愛を悼む葬列を/蔦蔓/天使さえ足を踏み入れないその場所で/星喰らい/眠れぬ夜の忌まわしい薄明かり/青鈍の幕引き/エイロネイア/額に垂れた髪を払うその気怠い仕草が、冷めた視線が、美しい横顔が/フィルム・ノワールでなくメロドラマなタイプの君/その愚かでちっぽけな、取るに足らない悪意ごと飲み込んで/懶惰な僕は馬鹿の一つ覚えみたいにただ感傷に浸る/一体誰が死んでいいと言った/ピカレスク・ロマン/明滅するエチカ/地獄の岸辺に立つ君よ/わびしさとむなしさのあわい/きかないまじない/どんなに言葉を尽くしても、きっと貴方を象れない/悪魔は涙を流さないと言うけれど、どうやら君は違うらしい/行き止まりの言葉たち/荒地に佇む木立の孤独/まるで太陽に翼を焼かれたイカロスのように/あなたとなら千夜一夜を語り明かせるわ/完全な君の、この世でたったひとつの瑕疵になりたい/墜ちていく綺羅星のなんと麗しいことよ/目にすることを禁じられたほどの鮮やかな橙/夜明けにだけ捧げる祈り/ロマン主義者のなれのはて/金彩のように美しい魂/ひとり闇の底を往くさびしさについて/待つ人は来ない、けれども、ここから離れることはもうない/君が背負う眩いばかりの光輪/満ちる思慕の杯/あなたはこの焼け野原に何をみていたの/不在(截然たる)/ああ、だからこそ、神は我々を見離したのだろう/百合と混凝土/霞む瞳の先にある/沈黙は金、雄弁は銀、だがわたしは言祝ぎを持たず/死んでも死にきれぬ恥辱/突きはなしたような青
[ヴェスパー]《Vesper》宵の明星.晩の鐘. [空言]《ソラ-ゴト》うそ.いつわりごと. [頽落]《タイ-ラク》くずれ落ちること. [ネビュラ]《Nebula》星雲. [蔦蔓]《ツタ-カズラ》つるくさの総称. [天使さえ〜]《Where angels fear to tread》君子危きに近寄らず.転じて"無知は恐ろしい"の意.[青鈍]《アオ-ニビ》青みがかった灰色のこと.平安時代の衣服令では凶色として,僧尼の衣に用いる色とされた. [エイロネイア]《ειρωνεία》ギリシア語で"よそおわれた無知"の意.皮肉を意味する英語ironyの語源. [フィルム・ノワール]《Film Noir》20世紀中頃に流行した犯罪映画の一形態.殺伐とした都市風景やシニカルな男性の主人公,その周囲に現れる謎めいた女性の登場人物を特徴とする. [懶惰]《ラン-ダ》めんどうくさがり,怠けること.またそのさま. [ピカレスク・ロマン]《Novela Picaresca》悪漢小説のこと.下層階級出身で悪知恵に富む主人公の体験や生活を,諧謔と風刺をもって描く. [エチカ]《Ethica》ラテン語で"倫理"の意. 17世紀の哲学者スピノザの著書. [イカロス]《Ἴκαρος》ギリシア神話の登場人物.蝋で固めた翼を手に入れるが,太陽に接近しすぎて溶けて翼がなくなり,墜落死した. [截然]《セツ-ゼン》ものごとの区切りがはっきりしているさま.切り立っているさま. [混凝土]《コン-クリィ-ト》
| 200 - 151 |
不在/イグノラムス・イグノラビムス/真も愛も、どこかに在ればそれでよかった/永遠のイマージュ/満たす恩寵/美しく善きもののすべて/愛情と同情の混濁/眼内閃光/こどくな夜、見つめる先にある空気清浄機の緑色、正常に動いていないのはわたしだけと知る/ぜんぶ丸ごと海に沈んでしまえ/わたしのこと、忘れないでいてね、でもどうか、だれよりも幸せになってね/秋の斜陽/たとえいつか失くすことがわかっていても、掴まずにいられないのは生の希望でしょうか、あるいは/喪失と再生の永劫回帰にはほとほと飽いてしまったのです/鍵を返すよ、ポストにいれて/もう聞こえないあなたのちぐはぐな足音について/傷ついていたと知るのは、いつだってすべてが過ぎ去ったあとのこと/こんないたみだけ残して往かないで/星の海をわたるディアスポラ/百年、あなたのお墓の傍で坐って待っていたとして、あなたが会いに来てくれないことなんて解ってる/暗闇のなかであなたの輪郭をなぞる、その指先からほどけていってしまわぬように/生涯あなたのいちばんでいさせてよ/おろかなひと/いつだって素知らぬ顔をしている、苦しめられるのが好きなあなたのために/落とし穴とわかっているのに/いつか過ぎゆく傷みなら/心臓がいたいの/どれだけ傷つけてくれてもいいよなんて、いわれたって/トレミーの48星座/アポスタシア/光学的欺瞞/蛮勇だねとわらうあなた/臆病だねとかえすわたし/今際の傷さえ皮肉でまとって欺くことしかできないような口なら、いっそのこと縫いつけてしまおうか/殺してくれよって笑う、その歯列がたまらなく好きだ/花印/食べられた心臓/現身のミニアチュール/善なる魂/つまるところ、ぼくはキミのマクガフィンってわけ/水声/行けども、行けども、慰めはどこにもなく/甘い毒みたいなこの泥濘にいつまでも浸っていられたら/曼荼羅の瞳/百日紅の花が咲くころに、もう一度出会い直しましょう/生殖の呪いをこえて/だって神様はわたしだけを愛してくれないでしょう/散り散りに別れていく渡り鳥にも似て
[イグノラムス・イグノラビムス]《Ignoramus et ignorabimus》ラテン語で"我々は知らない、知ることはないだろう"の意. [イマージュ]《image》フランス語で表象の意. [言祝ぎ]《コト-ホ-ギ》 [ディアスポラ]《διασπορά》ギリシャ語で"撒き散らされたもの"の意.民族離散. [百年〜]夏目漱石著"夢十夜"の一節. [アポスタシア]《άποστασία》ギリシャ語で背教,反乱,出発.離別の意. [現身]《ウツ-シミ》現世に生きる人.生を受けた人の身体. [ミニアチュール]《Miniature》彩画.細密画.古代・中世の絵付き写本に収録された挿絵. [マクガフィン]《MacGuffin》小説や映画などのフィクション作品におけるキーアイテム.物語が成立するならそれ自体が何であるかは重要ではなく,代替可能なもの.泥棒が狙う宝石や,スパイが狙う重要書類など. [水声]《スイ-セイ》 水の流れる音. [泥濘]《デイ-ネイ》 [曼荼羅]《マン-ダ-ラ》 宇宙の真理を表す方法として,仏や菩薩などを体系的に配列して図示したもの. [百日紅]《サルスベリ》 ヒャクジツコウ.すべすべした幹肌が特徴で,夏から秋にわたって紅色の花を咲かせる.
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絶滅願望/ようやっとはじまりの場所/あなたは奇跡の顕現/ねえ私たち、いつまで経ってもどこにもいけないね/こびりついた呪いみたいな恋慕/あなたに手渡せず破り捨てた恋文が百通にもなったころ、わたしはようやく気が付いたのです/どんな失くしものをしても迎えたい夜明けがあるの/ぴったり癒着してしまった貴方と私の両腕、どうにか切り離さなくっちゃ/この夜を越えないで/あなたの素肌から立ちのぼる破滅の香りはひどく甘い/天国になんかいけなくったっていい/薄汚れの歪んだ欲動/これ以上わたしの人生を狂わすのはやめて頂戴/思索と詩作/次の瞬間にはもう忘れてるよ、こんな胸の高鳴りも、馬鹿げた後悔も/星辰のみちびきによれば/二人静/憂鬱質の聖なる狂気/昏沈の夕べ/ビリジアンの瞋恚/萌え出づるピエタ/オレンジ・ペコーがよく似合う/いつかその瞳の濁るときが来ようとも/本を読むことも、映画を見ることも、ぜんぶあなたに会うための口実だもの/無為な一夜をすごしてみたくらいで、ほんのすこし貴方の女になった気でいるの/電車を一本逃してみたくらいで、ほんのすこし悪い女になった気でいるの/煙草を一本吸ってみたくらいで、ほんのすこし強い女になった気でいるの/卯の花曇り/朝顔の君/水辺の仙境に咲く花/一生解けない呪いをかけてあげるよ/黄昏をつれてくる人/冬が来たらあなたに伝えようと思っていたのに、もう幾度も季節が巡ってしまったのでした/泣けよ凡骨/愚行/棕櫚の花/お似合いなのにね、わたしたち/傷つけ合いのごっこ遊び/エピステーメー/とんがったナイフみたいだったあなたの眦も、今はまるくひしゃげてる/玻璃の塔/こんな茶番がアレゴリーだとでもいうの/打ち砕けないアイボリー/あなたが本の頁をめくる指先を、ただ見つめているのが好きだった/あなたが煙草をくゆらす指先を、ただ見つめているのが好きだった/あなたがその人の髪にからめる指先を、ただ見つめているのが好きだった/ただ見つめているだけでよかったはずなのに/さながらフラヌール/この青春の終わりに
[星辰]《セイ-シン》 星宿.星座. [二人静]《フタ-リ-シズカ》暗く渋い紅紫色のこと.源義経の愛妾"静御前"をモデルとした能の演目の一つ. [昏沈]《コン-ジン》仏教における煩悩のひとつ.心の沈鬱,ふさぎ込むこと. [瞋恚]《シン-イ》仏教における煩悩のひとつ.憎しみ,嫌うこと,いかること. [ピエタ]《Pietà》イタリア語で"哀れみ","慈悲"の意.十字架にかけられ死を遂げたイエスを抱くマリアの像をピエタ像と呼ぶ. [オレンジ・ペコー]《Orange pekoe》紅茶の茶葉の大きさを示す等級の一つ.名前から連想されるようなオレンジの香りや味はしない. [朝顔の君]《アサ-ガオ-ノ-キミ》"源氏物語"の登場人物.唯一源氏の求愛を拒んだ人物としてしられる. [凡骨]《ボン-コツ》平凡な才能,器量の者. [棕櫚]《シュ-ロ》ヤシ科の常緑高木.五月頃,淡黄色の粟粒のような小さな花を多数つけ,穂状に垂れる. [エピステーメー]《ἐπιστήμη》ギリシャ語で"知識"の意. [眦]《マナジリ》めじり.まなさき. [アレゴリー]《allegory》擬人化した動物などを主人公に,教訓や風刺を織りこんだ物語.例:イソップ物語. [アイボリー]《ivory》淡く黄色がかったやや灰味の白色.象牙. [フラヌール]《flaneur》目的をもたずに都市を彷徨う人物のこと.遊歩者.
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悔悟者/デカダンスの色香/あなたを好きじゃなかったことなんて一度もないよ、もう全て手遅れだけど/来世でやり直せますように/どんなに仕様がなくなってもきっと愛してあげる/浅ましい顔を見せて/情けない声で鳴いて/もし一度でもわたしを愛してくれたことがあるのなら/記憶を琥珀に閉じこめて/たとえ1カラットに満たない輝きでも/後生これだけを大事に抱えて生きていく/狂わせる春/挽歌/恩寵なんかいらない/つややかな殺意/まっさらな告発/あなたみたいになりたいのか、あなたの特別になりたいのか、もうなんだか分からなくなってしまって/過ちと知りながら手を伸ばすあなたの愚かさを愛してる/決して共に滅びてはくれぬあなたの賢しさを憎んでる/触れ合えもしなかったふたりのこと/あなたに出逢った瞬間の眩しさが、瞼の裏に焼きついたまま/ディレッタントになりきれぬ君/日曜日の沈黙/気づいた時には溶け合って/幻滅させてもくれない人/かわいそうなウェルテル、たかが愛のために死ぬなんて/わざと足を踏み外す私を、どうか生涯許さないでいてね/やっとあなたにふさわしい私になれたのに/身のほど知らずの夢の果て/その骨ばった両手で今すぐに首を絞めてよ/深いところに閉じ込めようとしてどうにもならなかったそれを、砕いて燃やして灰にして、最期は天まで届きますように/あなたのものになれないのなら/わたしのものにならないのなら/死も、また毒も/鳥瞰図/ゆるしとみれん/冥界下り/メヌエットを踊りましょ/ルバイヤート/憂いの国の皇子/この門をくぐる者、一切の絶望を捨てよ/路傍の石よりも軽い命をあなたは拾ったのだった/菩提樹の下で眠る/箴言をかなぐり捨てよ/どれほど美しいものをかき集めたって、生まれ直せるはずもないのに/やがて滅びゆくものたちの美学/夜間飛行/今さら錆びついた心臓/永遠への渇望なんてずっと知らないまま大人になりたかったの/光芒
[悔悟]《カイ-ゴ》過ちを認めて後悔すること. [デカダンス]《décadence》虚無的,退廃的な風潮や生活態度.19世紀末,フランスに登場した芸術至上主義のこと. [挽歌]《バン-カ》葬儀の際,柩を載せた車をひく人たちがうたう歌. [ディレッタント]《Dilettante》芸術や学問を趣味として愛好する人.好事家. [若きウェルテルの悩み]《Die Leiden des jungen Werthers》18世紀のドイツ文学.若き青年が叶わぬ恋に絶望し,自死を選ぶ. [鳥瞰図]《チョウ-カン-ズ》上空から斜めに見下ろしたような形式の地図. [メヌエット]《Menuetto》フランス発祥の宮廷舞曲.優美で穏やかな雰囲気を持つ. [ルバイヤート]《Rubaiyat》アラビア語で"四行詩"を意味する語の複数形. [菩提樹]《ボ-ダイ-ジュ》釈迦がその下で悟りを開いたと言われる樹木. [箴言]《シン-ゲン》旧約聖書の中の一書.教訓の意をもつ短い句. [光芒]《コウ-ボウ》細く伸びる一筋の光.天使のはしご.彗星の尾.
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愚かだって泣いて喚いて、せめて最後はすがってみせて/二度と還らぬ貴方の偶像/ヴェスパー、どこへ消えたの/滴りおちる名前/午餐、談笑、退屈/空言なんてもうたくさん/世界に頽落/要らないわ、ナイフもロープも、ましてやピストルも/行くてをさえぎるネビュラ/ご覧、喪われた愛を悼む葬列を/蔦蔓/天使さえ足を踏み入れないその場所で/星喰らい/眠れぬ夜の忌まわしい薄明かり/青鈍の幕引き/エイロネイア/額に垂れた髪を払うその気怠い仕草が、冷めた視線が、美しい横顔が/フィルム・ノワールでなくメロドラマなタイプの君/その愚かでちっぽけな、取るに足らない悪意ごと飲み込んで/懶惰な僕は馬鹿の一つ覚えみたいにただ感傷に浸る/一体誰が死んでいいと言った/ピカレスク・ロマン/明滅するエチカ/地獄の岸辺に立つ君よ/わびしさとむなしさのあわい/きかないまじない/どんなに言葉を尽くしても、きっと貴方を象れない/悪魔は涙を流さないと言うけれど、どうやら君は違うらしい/行き止まりの言葉たち/荒地に佇む木立の孤独/まるで太陽に翼を焼かれたイカロスのように/あなたとなら千夜一夜を語り明かせるわ/完全な君の、この世でたったひとつの瑕疵になりたい/墜ちていく綺羅星のなんと麗しいことよ/目にすることを禁じられたほどの鮮やかな橙/夜明けにだけ捧げる祈り/ロマン主義者のなれのはて/金彩のように美しい魂/ひとり闇の底を往くさびしさについて/待つ人は来ない、けれども、ここから離れることはもうない/君が背負う眩いばかりの光輪/満ちる思慕の杯/あなたはこの焼け野原に何をみていたの/不在(截然たる)/ああ、だからこそ、神は我々を見離したのだろう/百合と混凝土/霞む瞳の先にある/沈黙は金、雄弁は銀、だがわたしは言祝ぎを持たず/死んでも死にきれぬ恥辱/突きはなしたような青
[ヴェスパー]《Vesper》宵の明星.晩の鐘. [空言]《ソラ-ゴト》うそ.いつわりごと. [頽落]《タイ-ラク》くずれ落ちること. [ネビュラ]《Nebula》星雲. [蔦蔓]《ツタ-カズラ》つるくさの総称. [天使さえ〜]《Where angels fear to tread》君子危きに近寄らず.転じて"無知は恐ろしい"の意.[青鈍]《アオ-ニビ》青みがかった灰色のこと.平安時代の衣服令では凶色として,僧尼の衣に用いる色とされた. [エイロネイア]《ειρωνεία》ギリシア語で"よそおわれた無知"の意.皮肉を意味する英語ironyの語源. [フィルム・ノワール]《Film Noir》20世紀中頃に流行した犯罪映画の一形態.殺伐とした都市風景やシニカルな男性の主人公,その周囲に現れる謎めいた女性の登場人物を特徴とする. [懶惰]《ラン-ダ》めんどうくさがり,怠けること.またそのさま. [ピカレスク・ロマン]《Novela Picaresca》悪漢小説のこと.下層階級出身で悪知恵に富む主人公の体験や生活を,諧謔と風刺をもって描く. [エチカ]《Ethica》ラテン語で"倫理"の意. 17世紀の哲学者スピノザの著書. [イカロス]《Ἴκαρος》ギリシア神話の登場人物.蝋で固めた翼を手に入れるが,太陽に接近しすぎて溶けて翼がなくなり,墜落死した. [截然]《セツ-ゼン》ものごとの区切りがはっきりしているさま.切り立っているさま. [混凝土]《コン-クリィ-ト》