職場体験終了後、最初の実技は救助訓練レースだった。
複雑に入り組んだ密集工業地帯で救難信号を出したオールマイトを誰が一番に助けるかを競うレース。一週間の職場体験での成果を見せる者もいれば、己の課題を突き付けられた者もいた。
授業が終わった男子更衣室では、先ほどの授業の感想を言い合いながら着替えをしていた。
「おい、緑谷! やべェ事が発覚した! こっちゃ来い!」
「ん?」
着替え終わった峰田が、まだ着替えている最中の緑谷に声をかける。
「見ろよ、この穴! 恐らく諸先輩方が頑張ったんだろう! 隣はそうさ、わかるだろう!? 女子更衣室!!」
峰田が女子更衣室がある壁を指さす。その壁にはプリントが貼られていたが、テープの粘着力が弱くなったのか剥がれかけている。そしてプリントの下には女子更衣室へと通じる小さな穴が空いていた。
「み、峰田くんダメだよ!」
緑谷は慌てたように峰田を止める。しかし、暴走している峰田の目は血走っていた。
「バカヤロー! それでもお前は健全な高校男児か!? なぜ覗くか!? そこに穴があるからだろ!」
爆豪は「ケッ!」と我関せずな態度をしており、数名の生徒も苦笑しながら見ているだけだったのだが――
『ひゃあ! え、ちょっと三奈、どこ触ってるの!』
男子更衣室内に高い声が響き渡った。明らかな女の声のそれに、男性陣は石のように固まった。
『前から引き締まってたけど、さらにキュッてなってる! 職場体験の影響かなー?』
『あはは、くすぐったいよ!』
「芦戸と……望月じゃね?」
上鳴が確認するように尋ねるが、返事が来る前に隣から声がもれる。
『じゃあ、私はこっち!』
『きゃあ!』
『莉緒ちゃんの胸って着やせして見えるよね!戦闘服 も着物だし、制服もそんな感じに見えないのに脱いだらすごい!』
『んぅ……ちょっと、透ちゃん!?』
『やわらか〜い!』
毅然な態度を取っていたメンバーも、この甘い声と聞こえてくる内容に顔を赤くして戸惑っているようだ。
「神展開かよ!? 芦戸と葉隠ナイス!」
「オイラは戦闘服 を着ていようが、望月のポテンシャルに気付いていたけどな!」
『やっ! ま、待って! 私より百ちゃんとか皆の方が……』
『莉緒ちゃんの場合はこのギャップだよねー! 筋肉がつきにくくてスラッとしている割に、ここはしっかり成長してるし!』
「やべェ、今夜のオカズ決まりだろ!」
「おい、止めろって!」
「そ、そうだよ! 早くそのプリントを戻そうよ! そうしたら声も聞こえなくなるかもしれないし……っ!」
あまりにも下品な上鳴を切島が止め、緑谷もそれに加勢するが――
『は、ぁっ……誰か、助けて!』
再び聞こえてきた莉緒の喘ぐような声に、二人は更に顔を赤くさせ言葉を失った。
『あ、莉緒ちゃん、その水色のブラジャーかわいい!』
『お茶子ちゃん、今そこじゃないから!』
『あ、ホントだ! この前の黒のレースとかピンクのも似合ってたけど、それも良いねー!』
『ひぅ……ッ! 三奈はいい加減、私の腰撫でまわすのやめて! 透ちゃんも!』
『『えー?』』
「おい、聞いたか!? 望月の今日の下着、水色だってよ!」
「黒のレースにピンク? やべェ、想像しただけでエロい! っつーか、声ヤバい!」
興奮して鼻息を荒くさせる峰田と上鳴。
「おいおい、さすがにこれ以上は望月が可哀そうだから止めようぜ」
「っつか、何か寒くね? この部屋……」
「あいつらが勝手に聞かせてんだろ!? オイラたちは悪くない! おい、轟! 寒いから止めろ、何なんだお前は!」
莉緒の身を案じる砂藤と部屋の異変に気付く瀬呂。どうやら部屋が寒くなっているのは轟が冷気を放っているからのようだ。
『まぁまぁ、お二人とも。莉緒さんが困ってますから』
『百ちゃん、天使!』
『早く着替えないと時間がなくなっちゃうわ』
『ですよねー、梅雨ちゃんの言う通り! ほら二人とも離して!』
『『えー!?』』
『っん……ほら!』
『『はーい』』
「やべ、早く見ねェと終わる!」
「峰田くん、やめたまえ! ノゾキは立派なハンザイ行為だ!」
峰田が壁の穴に顔を近づけて覗こうとするが、硬直状態から復帰した飯田が急いでそれを止める。
「オイラのリトルミネタは、もう立派なバンザイ行為なんだよォォ! 望月の甘い声と着やせボディ! 八百万のヤオヨロッパイに芦戸の腰つき! 葉隠の浮かぶ下着! 麗日のうららかボディに蛙吹の意外おっぱァアアア!!」
峰田の目に壁の穴から出てきた耳郎のイヤホンジャックが刺さっている。どうやら女子側にバレてしまったらしい。
「耳郎さんのイヤホンジャック……正確さと不意打ちの凶悪コンボが強み!」
「自業自得だ、言わんこっちゃない!」
峰田が「目から爆音があああ!」と叫ぶなか、緑谷は峰田の愚行が止まったことに安堵していた。
「つーか寒いんだよ、轟ィ! 何してんだてめェは!」
「……わりィ」
男子更衣室の温度を下げてしまった轟が爆豪に謝る。峰田もそれに参戦して「オイラのリトルミネタが縮こまるから止めろよな!」と、懲りていない様子。
着替え終わった緑谷たちが更衣室を出ると、ちょうど女性陣も更衣室から出てきた。その中に莉緒の姿を捉え、先ほどの会話を思い出した緑谷は顔を赤くして視線を逸らした。緑谷だけではなく、ほとんどの男性メンバーが同じようなことをしている。
しかし、峰田と上鳴だけは違った。莉緒の制服姿――特に胸の辺りを凝視している。
それに気付いたのか、莉緒が胸を隠すように自分の体を抱き締めた。顔を赤くした莉緒は、少し潤んだ顔で峰田と上鳴を睨みつける。
「ばか! えっち!」
怒ったように言われたそのセリフはどこか恥ずかしさを孕んでおり、莉緒を直視していた峰田と上鳴はだらしない顔になっていた。
『あ〜、それじゃ逆効果だよ望月さん!』などと緑谷が思っていると、周囲の空気が冷たくなった。「いや、だからさっきから寒いって!」と瀬呂が轟に注意をしていたが、当の本人は無意識だったらしく言われた言葉に驚いていた。
轟のその様子に『もしかして轟くん……』と緑谷が推測しているなか、女性陣は莉緒を視線から庇うようにして去っていった。
複雑に入り組んだ密集工業地帯で救難信号を出したオールマイトを誰が一番に助けるかを競うレース。一週間の職場体験での成果を見せる者もいれば、己の課題を突き付けられた者もいた。
授業が終わった男子更衣室では、先ほどの授業の感想を言い合いながら着替えをしていた。
「おい、緑谷! やべェ事が発覚した! こっちゃ来い!」
「ん?」
着替え終わった峰田が、まだ着替えている最中の緑谷に声をかける。
「見ろよ、この穴! 恐らく諸先輩方が頑張ったんだろう! 隣はそうさ、わかるだろう!? 女子更衣室!!」
峰田が女子更衣室がある壁を指さす。その壁にはプリントが貼られていたが、テープの粘着力が弱くなったのか剥がれかけている。そしてプリントの下には女子更衣室へと通じる小さな穴が空いていた。
「み、峰田くんダメだよ!」
緑谷は慌てたように峰田を止める。しかし、暴走している峰田の目は血走っていた。
「バカヤロー! それでもお前は健全な高校男児か!? なぜ覗くか!? そこに穴があるからだろ!」
爆豪は「ケッ!」と我関せずな態度をしており、数名の生徒も苦笑しながら見ているだけだったのだが――
『ひゃあ! え、ちょっと三奈、どこ触ってるの!』
男子更衣室内に高い声が響き渡った。明らかな女の声のそれに、男性陣は石のように固まった。
『前から引き締まってたけど、さらにキュッてなってる! 職場体験の影響かなー?』
『あはは、くすぐったいよ!』
「芦戸と……望月じゃね?」
上鳴が確認するように尋ねるが、返事が来る前に隣から声がもれる。
『じゃあ、私はこっち!』
『きゃあ!』
『莉緒ちゃんの胸って着やせして見えるよね!
『んぅ……ちょっと、透ちゃん!?』
『やわらか〜い!』
毅然な態度を取っていたメンバーも、この甘い声と聞こえてくる内容に顔を赤くして戸惑っているようだ。
「神展開かよ!? 芦戸と葉隠ナイス!」
「オイラは
『やっ! ま、待って! 私より百ちゃんとか皆の方が……』
『莉緒ちゃんの場合はこのギャップだよねー! 筋肉がつきにくくてスラッとしている割に、ここはしっかり成長してるし!』
「やべェ、今夜のオカズ決まりだろ!」
「おい、止めろって!」
「そ、そうだよ! 早くそのプリントを戻そうよ! そうしたら声も聞こえなくなるかもしれないし……っ!」
あまりにも下品な上鳴を切島が止め、緑谷もそれに加勢するが――
『は、ぁっ……誰か、助けて!』
再び聞こえてきた莉緒の喘ぐような声に、二人は更に顔を赤くさせ言葉を失った。
『あ、莉緒ちゃん、その水色のブラジャーかわいい!』
『お茶子ちゃん、今そこじゃないから!』
『あ、ホントだ! この前の黒のレースとかピンクのも似合ってたけど、それも良いねー!』
『ひぅ……ッ! 三奈はいい加減、私の腰撫でまわすのやめて! 透ちゃんも!』
『『えー?』』
「おい、聞いたか!? 望月の今日の下着、水色だってよ!」
「黒のレースにピンク? やべェ、想像しただけでエロい! っつーか、声ヤバい!」
興奮して鼻息を荒くさせる峰田と上鳴。
「おいおい、さすがにこれ以上は望月が可哀そうだから止めようぜ」
「っつか、何か寒くね? この部屋……」
「あいつらが勝手に聞かせてんだろ!? オイラたちは悪くない! おい、轟! 寒いから止めろ、何なんだお前は!」
莉緒の身を案じる砂藤と部屋の異変に気付く瀬呂。どうやら部屋が寒くなっているのは轟が冷気を放っているからのようだ。
『まぁまぁ、お二人とも。莉緒さんが困ってますから』
『百ちゃん、天使!』
『早く着替えないと時間がなくなっちゃうわ』
『ですよねー、梅雨ちゃんの言う通り! ほら二人とも離して!』
『『えー!?』』
『っん……ほら!』
『『はーい』』
「やべ、早く見ねェと終わる!」
「峰田くん、やめたまえ! ノゾキは立派なハンザイ行為だ!」
峰田が壁の穴に顔を近づけて覗こうとするが、硬直状態から復帰した飯田が急いでそれを止める。
「オイラのリトルミネタは、もう立派なバンザイ行為なんだよォォ! 望月の甘い声と着やせボディ! 八百万のヤオヨロッパイに芦戸の腰つき! 葉隠の浮かぶ下着! 麗日のうららかボディに蛙吹の意外おっぱァアアア!!」
峰田の目に壁の穴から出てきた耳郎のイヤホンジャックが刺さっている。どうやら女子側にバレてしまったらしい。
「耳郎さんのイヤホンジャック……正確さと不意打ちの凶悪コンボが強み!」
「自業自得だ、言わんこっちゃない!」
峰田が「目から爆音があああ!」と叫ぶなか、緑谷は峰田の愚行が止まったことに安堵していた。
「つーか寒いんだよ、轟ィ! 何してんだてめェは!」
「……わりィ」
男子更衣室の温度を下げてしまった轟が爆豪に謝る。峰田もそれに参戦して「オイラのリトルミネタが縮こまるから止めろよな!」と、懲りていない様子。
着替え終わった緑谷たちが更衣室を出ると、ちょうど女性陣も更衣室から出てきた。その中に莉緒の姿を捉え、先ほどの会話を思い出した緑谷は顔を赤くして視線を逸らした。緑谷だけではなく、ほとんどの男性メンバーが同じようなことをしている。
しかし、峰田と上鳴だけは違った。莉緒の制服姿――特に胸の辺りを凝視している。
それに気付いたのか、莉緒が胸を隠すように自分の体を抱き締めた。顔を赤くした莉緒は、少し潤んだ顔で峰田と上鳴を睨みつける。
「ばか! えっち!」
怒ったように言われたそのセリフはどこか恥ずかしさを孕んでおり、莉緒を直視していた峰田と上鳴はだらしない顔になっていた。
『あ〜、それじゃ逆効果だよ望月さん!』などと緑谷が思っていると、周囲の空気が冷たくなった。「いや、だからさっきから寒いって!」と瀬呂が轟に注意をしていたが、当の本人は無意識だったらしく言われた言葉に驚いていた。
轟のその様子に『もしかして轟くん……』と緑谷が推測しているなか、女性陣は莉緒を視線から庇うようにして去っていった。