どこかで鐘が鳴って
らしくない言葉が浮かんで
寒さが心地よくて
あれ なんで恋なんかしてんだろう……
聖夜だなんだと繰り返す歌と
わざとらしく煌めく街のせいかなぁ?
……なぁーんてね。失恋ソングもラブソングも歌詞にするとこうも綺麗になるのだから不思議なものだ。実際にはクリスマスに独りでいることがこんなにも孤独なんて歌の歌詞からは伝わらないし、敢えて言えば彼氏がいるのに、クリスマスにぼっちなんて笑えないくらいに辛い現実。もう、ハッピークリスマスじゃなくてアンハッピークルシミマス!って感じだよ。
はぁ、メリーメリークリスマス!皆さん今宵はいかがお過ごしでしょうかー?恋人と一緒に過ごせる人たちはどうぞお幸せに〜!……ふんだっ。
「……はぁ。」
自然に溜め息が次から次へと漏れてくる。
街のイルミネーションが、こんなに鬱陶しいと思った日はない。チカチカチカチカ……目に悪いったらありゃしない。
こんにちは、名字名前、独身。絶賛、遠距離恋愛の真っ最中。
街はすっかりクリスマス一色で、イブを超えた今日は完璧なジーザスのハッピーバースデー。
日本は今年もそんなことすら無視でとりあえず毎度のことながら呑気に盛り上がってます。
「あーあ……はぁ。」
カップルだらけの大通りをクリスマスデートのため定時バンで切り上げた同僚たちのシワ寄せにこの時間まで拘束された私が、のしのし歩く。
とは言っても自ら引き受けたのだ。「いいよ!ほらほらさっさとお帰りなさいよ」って。だから誰も悪くない。もちろんクリスマスが悪いわけでもない。
会いたいと思う回数が
会えないと痛いこの胸が
君の事をどう思うか教えようとしてる
いいよ、そんなこと自分で分かってるよ
サンタとやらに頼んでもしかたないよなぁ
って……。この曲、どうしてこの時期に延々と街中で流れ続けてるんだろう。いつからかクリスマスの定番ソングになったんだよね。一昔前は、クリスマスが今年もやってくる〜♪ってケンタッキーのCMのテーマソングが代表的なクリスマスソングじゃなかった?あっちの方がまだ明るい感じでよかった気が……まあ、どっちでもいいけどさ、こんな僻みたっぷりの独身女の愚痴なんか。
……ああ、さよなら幸せ。今年の私は定年間際のサラリーマン風。風というか本当にそうなのだろう。
第一、彼氏の三井寿が今年の頭にU・S・A☆に行ってからというもの私の総ては、崩れっぱなしだ。残業しかり、体重しかりファンデーションのノリまでも悪い始末。
「はぁ〜っ!」
はしゃぐ恋人たちはぁ〜トナカイのツノなんか生やしてぇ〜よく人前で出来るなぁーいや、別に羨ましくなんてないけどぉー!
と、心の中でヤケになって大熱唱しながら目の前でいちゃこくカップルの真後ろで不自然すぎる溜め息を盛大に吐いてそいつらを抜かして早歩きする。あ、今笑われた。ちっ、と思わず舌を打ち鳴らしてしまう。みっともなくても、もういい。
現役バスケットボール選手の三井寿とは付き合って約三年が経った。一応去年と一昨年は一緒にクリスマスを過ごせたんだけど今年は絶対無理。今年のクリスマスは本場アメリカで彼はのびのびとバスケットを楽しんでるはずだ。
あーあ、ありえない。ありえなすぎて悲しい。応援はしてる。でも日本一の彼女は辛い。きっと人並みの幸せすら許されないのだろうな。それが現実。それが至って私のリアルなのだ。
「お腹すいたなぁ、ケーキでも買ってこうかな」
こうして独り言が増えていく。慣れたはずの、寿が隣にいないという現状に実際は慣れてなかったんだなと思い知らされる。
イベント事が来るたびに、バスケが憎らしくてたまらなくなるのが本音。私はバスケットボール選手じゃない。チアガールでもない。だから私はバスケの大切さがわからない。彼が全てをかけてやってるもの、それを理解することがまだ出来ていないのかもしれない。
頭ではわかってる、寿にはバスケしかないんだもの。でも同じように私には寿しかいない。寿は私がいなくてもバスケがあるから大丈夫だけど、私は?寿がいなくなった私は、どう?笑っちゃうくらいボロボロだよ。はぁ……何か惨めだなぁ。
家に着いて電気も付けずにベッドに倒れ込む。一週間の残業続きは、さすがに辛過ぎた。
そういえば今年は絶対に渡せないと思っていたから考えてもなかったけど、寿が喜ぶプレゼントってなんだろうと、なんとなく考えてみる。
彼女って立場の私だけがあげられるものって、なんだろうか。一昨年はマフラーを、去年は何をあげたんだっけ……忘れちゃった。まあいっか、悩んだところで今年は渡せないし。
それでも寿から貰ったクリスマスプレゼントはしっかりと覚えている。何なら今も目線の先に、それが見えているから。
『香りの記憶って消えないらしいぜ』
ふと、香りと記憶の関係性について呟いた寿を思い出す。寿は私がプレゼントの包み紙を開けてる横で「忘れられないんだってよ」とさっきまでいつものように私を揶揄って遊んでいたくせして急に甘い雰囲気を醸し出して真面目な表情で「どーする?」なんて言って私を見つめてきたから、心底ドキドキさせられた。
だってそう言われたあとに開いたプレゼントの中身は、まさかの寿がつけていたボディコロンと同じ匂いの香水だったから。
けれど返事に困って固まっている私を見つめていた寿が、次の瞬間にはそんな空気を遮るように茶目っ気たっぷりに「なーんてな」と、いつものおどけた顔を見せたから結局何も返せなかった。
いまでも大事に化粧棚に飾ってあるその香水の瓶を眺めて私は思わずまた、ため息を漏らした。
「アメリカなんか……」
金髪で二重でぼんきゅぼん!な人ばっかりなんじゃないの?……ぎゃー!やだ!勝ち目ねぇ〜!
はぁ。どうせ電話をする勇気もないよ私は。メッセージなんてもう一ヵ月も返ってきてないし。
私……こんなんで寿の彼女って言えんのかな。彼女ってもっと相手を支えたり支えられたりするもんじゃないのかな。
私は——寿を支えられているのかな……。
「……」
できれば横にいて欲しくてどこにも行って欲しくなくて僕の事だけをずっと考えていて欲しい。
でもこんなことを伝えたら格好悪いし長くなるだけだからまとめるよ。君が——
もうっ!頭からとっとと消え失せろ、このクリスマスソング!それに、難しいことを無い知恵を絞って考えたって眠気が先行するだけだ。
拝啓——寿、元気ですか? わたしは元気!
……な、わけないじゃんかーっ!くそーっ!!
「…会いたいと毎日思っててーそれを君に知って欲しくてーすれ違う人混みに君を探しているー」
頭から消え失せろと思いつつ思わず口ずさんでしまうオチ。いるはずがないのに。
でも本気で思う、こんな日は他の誰かと笑ってるかな、って。胸の奥の奥が——苦しくなるよ。
「自然消滅、したりして……」
きっと突拍子もなく「大好き」とメッセージを送ったとしよう。でも彼のことだから望んだ返事は返って来なかろう。
でも、思ってた返事とは違っても、それだけで嫌いになんてなれやしないから星に願いをなんてさ柄じゃないけど、結局わたしは、寿じゃないと嫌なんだって——。
……待て待て。これじゃ、あの歌詞のままじゃないか。この曲のアーティストにファンレターでも送ろうかな、私の想いがそのまま歌詞に反映されていて驚きました!って。ハハ、バカらしい。
—
——やばい、寝過ぎた。
まどろむ私の視界は真っ暗、なので私はまた、そっと瞼を閉じた。
クリスマスの予定——起きる→朝食を食べる→会社に行く→苦手な上司と会議→残業→スーパーで割引になった夕食を買う→家に帰る→寝る。←ちょうど今、ここの段階だ。
うっわー、うっわぁー!鼻がつんとしてきた。悲しいよ、孤独だよ、ねえ、寿……会いたいよ。
「……へぁ?」
ベッドが大きく揺れて、思わず変な声が出た。
……待てよ?今この家、わたししかいないはずよ?だって独り暮らしだもん。寿と同棲するはずだったのに彼の渡米が決まって白紙になってずっと変わらず住んでる私だけの家のはずだよ、ね?
「え、ちょ……」
——え?
「……?」
……えっ!?
まさか、サンタクロース……!!?んなわけ、
「しぃー......」
「——!?」
目を凝らすと厚いほうのカーテンを閉めていないせいで、月明りが暗闇をぼかす。
私はその中に、見慣れた顔を見付けた。人差し指を口に当てて静かに。≠ニ制する、わたしの恋人——。
「ひ、さし………?」
暗闇でも映える、真っ赤なパーカーとグレーのスウェットズボン姿の、世界に羽ばたいて行った三井寿が——私のベッドにいた。私に馬乗りになって、にやっと口角を吊り上げながら。
「メリクリ。」
その言葉のあと、ちゅ、と額にキスを食らう。そのせいでしばらく停止していた私の喉からようやく声が出た。
「ちょ、ちょっと待って? ひ、ひさし……!?わたし、とうとう頭がおかしく……」
「ふはっ、名前は変わらねェなー」
そう言って呑気に笑い声を響かせる、三井寿。私はがばっと起き上がったが、急に起き上がったことで軽く目眩を起こす。こめかみを抑えながら頭をブルブルと振ってからもう一度声を発した。
「つーか!!何でいんの……不法侵入!!」
「あ?一応……サンタを意識して赤いの着て来たんだけどな」
「へえ〜、って!そんなこと聞いてないよっ!」
思わず枕で寿を殴る。それでも寿の運動神経が勝って、それをガシッと掴まれた。しかも何が楽しいのか奴はずっと嬉しそうに笑っているのだ。
「帰って来るならさ、ひと言くらい、連絡……」
「してよね」まで言い切れない。息が詰まって。
だって……今は動揺が遥かに勝ってる。あと、聞きたいこともたくさんあって……ありすぎて。
「メッセージとか……さ」
「あー、送る前に着いちまってよー」
とか言って寿は苦笑する。なるほど、って!そうじゃないでしょ。今はそんな冗談言ってる状況じゃないでしょう。だって、だってさ……。
「俺が合鍵持ってること忘れてたのか?」
寿はじゃら、と私の目の前にほかにもたくさん鍵のついたキーケースを見せる。そこにぶら下がる、お揃いのストラップに私は下唇を噛んだ。
「……寿、ちょっと、髪伸びたね」
手を伸ばしてちょっと襟足が伸びた感じの彼の髪に触れてみる。
久しぶりに触れた恋人の髪の毛は、以前と何ら変わりなく、それだけで胸が締め付けられた。
「なかなかいい美容院見つかんなくってなー」
「……そう、」
「自分で切ったりもしたけどよ、いまは伸ばしっ放しだわ」
そのまま頭を撫でてみると寿はくすぐったそうにはにかんだ。いつもなら「くすぐってぇ、やめろ」とか言って抵抗するのに今日はそのまま私にされるがままになっていて、何なら少しだけ頭をこちらに寄せてくれた。
「……」
「……つか——、反応薄くね?」
いや、だって……。
寿が帰ってきたらきたで、私はまた悲しくなるんだもん。自分が後ろめたすぎるから。
私は心が狭いんだろうな。だって、素直に喜べない。ちっとも、可愛くできないんだもん。
「聖夜のサプライズだぜ?これ、一応」
「うん」
「きゃあ寿!私のために戻ってきてくれたのね!って泣き付いて来るって予想してたんだけどな」
「うん……ごめん」
寿は抑揚つけて私の真似なのか声を少し高くして言ったけど私はそのノリに乗っかれずにいる。軽い感じで、真似しないでよ!すらも返せない。
最悪。私はどこまで最悪なんだ。寿は私のために、わざわざアメリカから来てくれたっていうのに。たかが——ただの、クリスマスなのに。
「寿、ごめん……」
「あ、なにが?……うぉ!?ちょっ!」
私がだんだん寿にもたれかかって耐えきれなかった涙を落とすから当たり前に寿は慌てる。でもすぐに小さくため息を吐いて仕方ないなって感じで私の頭をポンポンと撫でてくれた。
「どうしたよ?おまえ今日変じゃね?」
——今日=B久しぶりに会ったくせに。細かく言ったら、約一年ぶりに会ったくせに。
なんでアンタはいつもそうなの?こんなに好きなのも苦しいのも私だけってこと?何それ、なんなの、それ……不公平だよ、こんなの。
「今日ってなに……わたしはいつもこうだよ」
嘘つき。わたしは嘘つきだ。
だってさ、なんかイラッとしたんだもん。全然会ってもないのにさ、全部知り尽くしてるような顔しないでよね。
寿だって変わったんでしょ?一人でアメリカに行って出来もしない英語で会話して、綺麗な女の人もいっぱいで。わたしだけ何も変わらないで。
「何なのよ、なんにも連絡寄越さないで、勝手に来ないでよね」
「悪かったって。もうしねーって」
「もうしないとか言わないで」
「ふはっ、どっちだよ。めんどくせーなァ」
めんどくさいとか言わないで、って小さな声で言ったら、ヘイヘイ、って軽い感じで返事をしてぽんぽんと私の頭を小さくはたきながら愉快そうに寿は「素直じゃねーな」って言う。
はたくな、撫でろ。愛でろ。もっと大切そうに抱きしめて、よ——。
「……え、なんで笑ってんの?」
「ん?あー、だってよ……名前がかわいくてな」
……は?
寿の言葉が理解できなくてつい彼を見上げた。それでも寿はやっぱり楽しそうにしている。
そして寿からはなぜか、私と同じ香りがした。
「要するに、寂しかったんだろ?」
暗がりの中、月の光に照らされて、寿は小首を傾げながら笑う。その笑った、ガキ大将みたいな無邪気な顔がずっと憎かったけど、好きだった。
……そうだよ。悪いか、お見通しだよ畜生。
「——寂しいなら、」
「……」
「ちゃんと素直にそう言わねーと、な?」
「……う、うぇ〜……」
知ってる。わかってる。寿だけ凄いんだもん。私はただの平凡なOLだもん。それなのに寿は、まだまだまだまだ、でかくなる。
情けない声を出して泣いてすがりつく。それが恥ずかしくて必死になって会話を繋いだ。
「び、美人いっぱい、いるんでしょ?」
「あー、まぁ……正直、日本よりはな」
「ぼんきゅぼん!……なんでしょ」
「まあなー」
ガーン。うわーん!私、全然慰められてないじゃーん!って心底落ち込みながら私は矢継ぎ早に当たり散らかす。
「寿だけずるい、どんどんでっかくなってさ私なんか化粧のり悪いしこんな狭い部屋だしカップルや家族持ちのシワ寄せで今日も残業だったし!」
「どぅ、どぅ。落ち着けって、悪ィな天才でよ」
「しねー!しかも馬扱いすんなー!」
思わず枕をまた寿の頭に叩き付ける。枕をそのままに、私はそこに自分の頭を乗せる。枕は私の涙をどんどん吸っていく。鼻水を啜る音が籠る。
「寿がこれ以上遠くなんの、やだよ……」
やっと出た本音は本当に難産で。自分で聞き取るのが、やっとなくらいにしか声を出す事ができなくて。
「あんま俺を過大評価すんなっつの……」
枕の向こうで寿が呟いた。ちょっと落ち込んだような声のトーンで。
「悪ィけど俺、バスケしかしてねーんだよ」
枕を挟むから声が聞き取り辛い。けど、やっぱり何だか、いつもの自信満々な彼とは違う感じがした。何でだろう、変なの。
「正直それこそ成功できるかわかんねーんだぞ?アメリカ行ったからって元を正せば俺は、バスケ以外は何もできやしねーんだぜ?」
寿の手が私の背中に伸びて、抱きしめられる。ようやく、抱きしめてくれた。目の前が寿の匂いでいっぱいになる。覚えてるよ、この香り——。寿の匂いと私の匂いが混ざった様な香りがする。
「けどお前は違うだろ友達だって親だってみんなそばにいて。趣味とかこれから……何でもできんだろ、俺みたいにバスケしかないわけじゃねェ」
それは天才ゆえの不安なのかもしれない。そう思ったら私は一人で思い悩んでいるのが申し訳なくなった。あと、ちょっとだけ……ちょっとだけだけど、なんだか嬉しかった。
「俺だって、名前が羨ましいって思うことくらいあるっつの」
枕を退かすと寿の瞳と出会う。そこにはさっきまで楽しいそうにしていた恋人の姿はなく、情けなさそうに眉を歪める、スーパースターがいた。
「ほら、なんかちょっと見ないうちに?すっげー可愛くなってるしな?」
「嘘つき。寿だってかっこよくなってるよ」
なぜか二人で臭い台詞を言い合ったことに照れたように笑い合って、月明りの中どちらからともなくキスをする。
スーパースター相手に、こんなことをしても許されるのは、紛れもなく私だけという事実が今はとっても特別で幸せなことだと思った。
「……やべ。何か、かなりロマンチックだな」
「わざわざ言わないでよ、馬鹿」
寿が言うから私はつい笑ってしまった。
やっぱりこいつはロマンチックの欠片もない。けど、これが私たちって感じで落ち着くんだ。
「てか帰ってくんの知らなかったからプレゼントとか何もないよ?」
「いらねーよ。俺もねェし」
「ないの!?お土産とか!一個も!?」
「俺がここにいること自体奇跡だろうが。今年はこれで我慢しろぃ」
すると寿は私をベッドに倒して口付けた。その瞬間、危険信号を察知した私はあわあわと焦って待ったをかける。
「へ!?あ、あの……お風呂まだ入ってなくて」
「俺も入ってねーからヘーキだ、ヘーキ♪」
「そ、そーいう問題じゃ……」
「ちゃんと、ゴムもあるしな」
「何でそこは念入りなのっ!」
「しぃー、おとなしく観念しろぃ」
「ちょ、待って……きゃー!!!」
そりゃあ確かに、日本を発ったときからやってなかったけどさぁ……!!
でもね、鼻水を啜りながら、寿の体温を感じながら私はこれは最高のクリスマスプレゼントかもしれないなんて思ったよ。言ってやんないけど。
できれば横にいて欲しくて
どこにも行って欲しくなくて
僕のことだけをずっと考えていて欲しい
やっぱりこんなこと伝えたら格好悪いし
長くなるだけだからまとめるよ
君が……
——寿が、好きだよ。
「寿、」
「ん?」
「大好き」
床に散らばった寿のジャケットと私が一昨年のクリスマスプレゼントに送った赤と黒のチェックのマフラー。私はそれを横目で見やり、なんだかくすぐったい気持ちになった。
「……へぇ。でも俺は——愛してるぜ?」
……わたしも。
聞こえるまで、何度だって言うよ。
寿を——愛してるって。
恋人が サンタクロース 。
(ねえ?去年は私、なにあげたんだっけ?)
(は?……あー、………覚えてねーな)
(その間は絶対覚えてるやつじゃん!)
(……香水、もらった。)
(香水?そうだっけ?それは寿からじゃない?)
(リクエストした、お前のつけてんのがいいって)
(——え。覚えてない。何かロマンチックだね)
(ハァ〜。ったく、どーしよーもねェ彼女だな)
※『 クリスマスソング/backnumber 』を題材に
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