残念ながらべた惚れ
君が君でよかった。出会えてよかった。
生まれてきてくれてよかった。
今この世界に君が存在しているという奇跡に、
ただ感謝してる。
わたしはいつも
耳をすまして
あなたの声を聴いているよ
11.11
for.ZORO
Happy Birthday
for.ZORO
Happy Birthday
「悪夢、だ」
わたしはぽつりとつぶやく。
いつもと変わらないサニー号での午後のひととき。気づけば、冬がそこまでやってきているとでも言いたげな冷たい風が、甲板を通り抜けて、私の肌へと降り注いでいた。
転生したのだ、海賊世界に。
この世界と、麦わら海賊団に少しづつ慣れ始めた今日、この頃。私は11月が嫌いだ。
なぜかって?
だって、ほら
「ゾロォ!誕生日おめでとうー!」
「ゾロもまたひとつ歳食ったんだなー」
「あ!ゾロ、これもらってよ!」
「私も用意したわ」
今日みたいに、ほら、ロロノアゾロみたいに、
誕生日があるから。
実はわたし、彼女なんだけどね。
なにを隠そう、ロロノアゾロの彼女なんだよね。
みんなそれを知ってて私より先に、奴にプレゼント渡すんだよね。
あーあ、
情けないなぁ…わたしって。
奴はモテないくせに、モテるくせして(どっち)、プレゼントもらって、鬱陶しいフリをしながら、嬉しそうにはにかんでやがるのに。私はひとり、甲板の上で光合成。
プレゼント?
あるよ。
でも一日中こんなんじゃ、ぶっちゃけいつ渡すんだって話だよ。
まあでも、あれだよね。
やっぱり、一緒にいる時間には勝てないってやつだよね。
もうずっと古くから、みんなで一緒になって色んなことを共有してきて、もう仲間という次元を通り越して、きっと家族みたいなものなんだろうしね。
わたしなんてさ、わたしなんて……
「どうしたナマエちゃん?今日はマリモの誕生日だろう。に、してはテンション低いな」
「おおー……サンジくん…あなたはいつも眩しいなァ」
この船イチ男前(中身も見た目も。私は勝手にそう思っている)のサンジくんが、キラキラ微笑みながら私に話しかけてきた。
「…相変わらずすごい囲まれようだな、マリモ。もう午後なのに」
「でしょ?もうなんかこっちもどうでもよくなってくる」
そう言って、はぁ、とため息をひとつ。
「まあまあ。今日はこのあと島降りたらデートするんだろ?」
「?いや、なんもないけど」
「え!嘘!?」
ホントだよ。
ゾロはな、トレーニングで、ものすごーく忙しいんだよ。
わたし、ぼっちなんだよ。彼氏のバースデーに。ありえねーんだよ。
「もうひとりで降りよっかな……」
「いやいやいや。それはさすがに、ね?」
「だってゾロはデレデレしてるしさー……一向にトレーニングルーム行きそうにないしさー」
そう。
現にロロノアゾロはいま、
もうとっくにトレーニングをやってる時間のはずなのに、まだ一味たちに囲まれて、楽しそうに話しこんでいた。
わたしが、ここにいるのに。
「私はあの中に入れないもん、新参者だし」
「…そんなことないだろ」
「……見てんのツラいしね」
「ナマエちゃん……」
「ゾロって背が高いよなぁー!何センチあるんだ?」
「あン?えーっと、181だったか?たしか」
「うわ〜!でけェ〜!」
「いいわよね〜、長身男子はっ!」
「かっこいいぞー、ゾロ!」
ああそう、
私なんて、初めて聞いたよ、身長。
ありがとな!チョッパー。お陰様で、いまはじめて身長知れましたよ。
いや、自分から教えてよね。
身長、体重、血液型とか…好きな物とか、嫌いなこととか……
「ゾロ、もし悪魔食べるとしたら何食いてーんだ?」
「ああ?ンなの決まってんだろ」
「なんだ?なんだ?」
「ゴム以外だな、絶対に」
ドッと、その場に笑い声がこだまする。
ふん、バカじゃないの
鈍感が直る悪魔の実食べなさいよね。もしくは、サンジくんみたいなレディーファーストになれる実。
そのとき、ちょうど船が港に着いたと知らせるように、フランキーが声をあげた。
「……降りる」
「おい……マジかよ、ナマエちゃん」
私はつかつかと船を降りるため、甲板をあとにする。途中、ゾロにおい、とか背後から声をかけられたけど、そんなん無視してやった。
むかつく。
私は浜辺に降り立ち、走り出した。
「はっ……はぁっ」
ガチ走りしたら、相当息が切れた。砂浜で足がもつれたのもあったかも知れないけれど、とにかく心底、疲れた。
うわぁー、振り向いたら誰もいない。
追ってもこないのか、くそ剣士。
「……ばっかみたい」
呟いたら、途端に視界がぼやけてきた。
じわりじわりと目頭が熱くなっていく。一滴の雫が頬をつたうと、涙が次から次へと零れてくる。
「………」
こら、ゾロ。
ロロノアゾロ、
今日はなんの日だよ!
「!!」
急に後ろから手が伸びてきて、抱きしめられた。
「なぁーに逃げてんだよ」
耳元でしたのは
わたしの大好きな、
「ナマエ」
ゾロの声。
「……い、いまさらなに」
「あン?」
「船いれば?また楽しそうにみんなとくっちゃべってくれば」
「妬いてんのか?」
「笑わないでよ!」
くやしい。
告白してきたのそっちじゃん、3ヶ月前に。
なのにさ、なにこれ?
わたしはいたってずっと本気なのにさ
出会ったころからずっと好きだったのにさ
ゾロはさ……
ゾロは…………遊びなの?
「……っ離してよもう、ゾロなんてどこへでも行け!」
「おまえンとこ以外どこ行くんだよ」
「離さないとこのまま一本背負いしてやる!」
「無理だろうが」
「うるさい!いいから離し、てっ?」
突然、ゾロにくるっと身体の向きを変えられて
わたしたちは向き合う形になる。
真っ正面からまっすぐに見つめられて、恥ずかしいことこの上ない。しかもわたし、泣いてるから超ぶさいくだし
「……かわいーから」
ゾロが鼻で笑いながら、抑揚つけて言う。完全にバカにした声。腹が立つ、のに、好きが溢れてくる自分に、心底情けなくなる。
「か!かわいく、ない」
「ナミたちの10倍はかわいいな」
「……び、微妙だよ!」
「愛してる」
「───!」
ずるい
こんなタイミングで?
「ナマエは?」
「………」
「言えよ」
「…………好き」
「おい」
「……だってゾロはずるいよ!わたしばっかり!わたしばっかり、いつも、やきもち妬いて……!」
ダメだ。こんなことしか言えないの
恥ずかしい
嗚咽がひどい
涙が止まらないよ、ゾロ、
わたしだって
「愛してるよぉ……」
誰よりもあなたを。
親指の腹で、少し乱暴に私の涙を拭ってくれたゾロの掌を、そっと自分の掌で包み込むと、ゾロのいつもは険しい瞳が柔らかくなって微笑んだ。その顔が好き。
私を見下ろして、おでこに小さくキスを落とす、そんなゾロが好き。
「おたん、じょうび……おめでとう」
「………サンキュ」
あなたが生まれてきたこの日に。
どちらからともなく口づけて
わたしたちは愛を確かめ合う。
口唇が離れたら、笑いあった。
「プレゼントある。あげるね」
「さんきゅ……タオル?」
「と、トレーニングのときにでも」
「ほーん、ありがとな!大事に使わせてもらう」
「だってあのボロ雑巾みたいなタオルじゃさぁ……」
「う、うるせーな!使い込んでんだよっ!」
俺だって
お前がコックと話してんのヤだったんだよ。
ぜってー言ってやんねーけど。
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