気に食わねェ。

「お、なんだトシ。焼きそば食う?」

 地元の小せェ祭り。屋台も大してないし、やりたかった射的もないし、その割に人でそこそこ混んでいて、皆が皆、連れと楽しそうに笑ってやがるのも気に食わなくて。
 焼きそばの屋台に視線をやっていた土方に、近藤さんが気付いて声をかけた。姉上も「あらいいわね」なんてやさしい声で野郎に構ってやっている。

「総悟も食うよな?」
「……いいです。今、焼きそばの気分じゃねェんで」

 近藤さんはまだ何か言ってたけど、草履を鳴らして勝手に離れる。くそ、くそ。気に食わねェ。俺の世界にあの野郎は要らなかった。俺が欲しいのは、姉上と、近藤さんと、それから──

「総悟」

 高い声が俺を呼んだ。そういえばいつの間にか姿を消していたアイツが、ヘラヘラ笑ってそばに立っていた。片手にヨーヨーをつって、片手には赤いかき氷を持っている。

「……んだよ」
「別にィ」

 せっかくの祭りに拗ねてるのが、コイツにはきっとバレていた。なのにそう言ってこないのに腹が立った。俺の次に年下のガキのくせに、コイツは俺の前ではいっちょ前に大人ぶってやがった。

「総悟も一緒に食べよ。ストロー二本もらってきたから」
「いらねェ。一人で食やいいだろ」
「あらゆるものを少しずつ全部食らいたいのよ。ホラ皆別の並んでんでしょ。あたしらだけで食べちゃお。そんで近藤さんに焼きそば何口か分けてもらおーぜ」

 からりと笑うそいつの髪が、真夏の夜風にさらわれている。蒸した夏の空気の中で、水に浸かったみたいに、茹だった頭が冷えていく。

「ん〜うま〜。どうにかインチキして毎食食えないかなコレ」
「……おい、よこせ」

 楽しげなソイツから受け取ったかき氷をざくりと食む。熱かった口の中が一気に冷えていった。いちごシロップの甘さが口全体に染み渡って、余韻が消える前にさらにかっ込む。コイツは「美味しいねぇ」なんて笑っていたが、俺がシロップの掛かった部分だけ掬ってるのに気づくと「いや白い部分も食えや」と小突いてきた。

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