銀のバットに敷き詰められた薄黄色を丁寧に掬っていく。専用の器具なんてない、ただのスプーン一本で、ネロさんはなんてことないように綺麗に丸く整えていった。

「最後に──《アドノディス・オムニス》」

 ネロさんがかざした手のひらから、淡い光を伴ってシュガーが生まれ、宙で細かく砕かれた。きらきらした雨が降り注ぐように、星の砂がまぶされるように、アイスクリームを美しく彩っていく。

「はいよ、旅人さん」
「やった、ありがとうございます」

 小腹がすいてキッチンを覗きに来た私に、ネロさんは作り立てのアイスを振る舞ってくれた。溶いて、火を入れて、冷やして混ぜて、冷やして混ぜてを繰り返すという手間のかかっているらしいそれを、一番乗りで食べられるのはかなり贅沢なことだと思う。
 ありがたみを感じつつ一口掬うと、口いっぱいに卵とミルクの風味がふわっと広がった。素朴で、冷たいはずなのにほっとするような味わい。砕いたシュガーの食感が彩りとアクセントになっている。

「おいしいです!」
「そりゃ良かった」
「ネロさんは食べないんですか?」
「お試しで作ったから量も少ねぇし、今回はおこちゃまたちだけに……いや、わかったわかった。食うからそんな顔すんなって」

 ネロさんは困ったように少しだけ笑んだ。彼が作ったおいしいものを、彼が食べられないのは残念だとは思ったけれど、自分はどんな表情をしていたのだろう。

「んじゃ、一口だけ」

 余っていたスプーンをネロさんが手に取る。バットは一度冷凍庫にしまっていたし、彼は回し食いに特段抵抗がないと知っていたし、何よりシュガーの掛かったものを食べて欲しくて、手元の器をしれっと寄せてみる。私がそうすると分かっていたのだろう、彼は笑って、そこから一口掬った。

「ん……いけるな」
「本当おいしいですよ。また作ってください」
「はは、そうだな。次はたくさんな」

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