大人と子どもの区切りは一体どこだろうか。
 一般には成人年齢による、法律上の区切りが最も分かりやすいだろう。だが誕生日を迎えて、歳を重ねた瞬間に子どもだった人間が大人に変わるわけではない。しかもそれは、あくまでも肉体の時間経過による区分であるわけだから、個人差のある精神や脳の発達、成熟とはまた別物だ。
 ならば心構えの問題だろうか。そうすると、人が大人になるのは例えば「子どもを守らねば」と、そういう気持ちが生まれた時だろうか? 「子どもの頃に戻りたい」とでも思った時だろうか? だけどそれは、十代くらいの子だって抱えることもある感情だ。
 私はいつから大人になったのだろう。自分の気持ちを上手に吐けなくなった頃だろうか。でも、それなら、私はこの幼い体躯を手にして、子どもに向けられる視線や声を得るようになってから、幾分か素直になれることが増えたように思う。

「ど、どうしましょう……!」
「わ、私たち、このまま殺されちゃうの……!?」
「心配すんな! 俺がぜってーなんとかすっから!」
「で、でもよぉコナン……!!」
「大丈夫だから落ち着きなさい! 江戸川くん、まずは子どもたちを逃がさないと……」
「ああ……!」

 ──結局、大人なんていうものは、「誰かにとっての」大人でしかないのかもしれない。
 元は十代だという彼らは、純然たる小学一年生のあの子たちと比べて、自分たちを大人だと言うのだろう。だからあの子たちを子どもと称し、自分たちは守る側に立って動こうとするのだろう。
 だけど私はそんなふうに、自分たちを大人とカウントする彼らも含めて、この子らのことを子どもだと思う。大人が守るべき若い芽だと思う。
 上着のポケットを触って、中にバッジがあることをしっかりと確認する。それを少し考えてから、利き手のひらの中に握り込んだ。

「……聞いて。私が今から犯人を引き付ける。皆は探偵バッジからの合図を待って」
「は!? みょうじ、オメー何を……!」
「お、囮になるつもりですか!?」
「そんなことしたらオメーがやべーじゃんかよ!」

 どのみちこのままでは、全員口封じに殺されるかもしれない。誰かが犠牲になるしかない。

「バカ言わないで!」
「危ないよ、なまえちゃん! 行かないで!」

 その犠牲を、子どもが負う必要などない。世の不条理に巻き込まれて、汚い大人に振り回される必要なんてどこにもないのだ。

「大丈夫」

 動揺に呑まれている彼らの前に出る。五人分の視線を受けた背筋を伸ばして、私たちを捜している犯人が潜んでいるであろう闇を見据えた。
 私は大人として、この、未来を持った子どもたちをできるだけ「子ども」でいさせてやりたい。きっと彼らからしたら願い下げであろう、そんな願いを持って、言い放つ。

「君たちは私が守るから」

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