夏は湯船に浸かるのが億劫で、シャワーだけで済ませることが増える。今日もカラスの行水でとっとと風呂を出ると、私より先に上がっていたはずの従兄が、まだ髪も乾かさずにリビングでダラダラとテレビを見ていた。

「ちょっと、髪垂れてる」
「お、そのまま乾かしてくれ〜」
「却下」

 従兄とは長期休みを利用して互いの家に泊まりに行くことが多い。この夏休みは、叔父さんと叔母さんの都合がつかず、条介くんだけがうちに遊びに来ていた。
 ポタポタと床を濡らす従兄の髪を、その肩に掛かっていたタオルで雑に拭いていく。珊瑚色の癖毛は日頃から日光や海水に晒されて傷み気味だった。
 滴が垂れない程度に水分を取ってやってから、自分の顔の手入れにかかる。といっても、薬局の安い化粧水をつける程度だけど。

「おめーを待ってたんだよ。これ食おーぜ、へへ」

 濡らした手を両頬に当てていると、冷蔵庫に移動していた従兄が何かを取り出した。青い袋のそれは、二つに割れるソーダバー。いつの間に買っていたんだろう。
 私の返事を待つこともなく袋を開けた従兄は、パキッと小気味良い音を立ててアイスを割った。「ん」自分の分を咥えながら、こともあろうに人の口にねじ込むガサツ男に蹴りを入れつつ、舌の上で冷たさと控えめな甘みを感じる。温度差で唇が凍りそうだ。ぱぱっと顔の手入れを終わらせて木の棒を手に持ち、改めて一口齧れば、シャキッと清涼感のある食感と風味が広がった。風呂上がりで火照る体に沁みていく。

「ん〜〜」
「っぱ夏はこれだな〜」

 ソーダ水に浸かったようなさっぱりした心地に揺蕩っていると、がつがつ食べ進めていた条介くんが冷たさにやられたらしい頭を押さえ出すものだから、思わず笑った。

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