「皆には内緒ですよ」
用務員室の前。差し出されたのは、チョココーティングされた小さいバニラアイスが、六粒入ったやつ。荷物運びをちょっと手伝っただけなのにこの厚遇とは。やっぱ用務員さんって結構オレのこと好きだよね、なんて口元がニヤつきかけた。ただ、普通に食いかけで五粒に減っていたあたりは、案外適当なとこあるんだよなと愉快な気持ちになってくる。
「お、当たり入ってんじゃん」
「そうなんですよ、ハート型! エースくんどうぞ」
「え? いやいやいーって、それこそ用務員さん食べなよ」
「遠慮しなくていいから、ほら」
オレの分のピック代わりに用意してくれたらしいフォークで、ハートのアイスを口元に運ばれる。屈託のない笑みにまごついて、でも不意打ちの「あーん」にテンパってるなんて思われたらダセェから、思い切ってかぶりついた。
フォークと歯が当たる高い音。間近の笑顔。ヒヤリとした心地よさに、やわらかなミルクの甘みと、それに比べたらビターなチョコレートの味わいが混ざって、最近の暑さにバテ気味だった心身に染み渡る。口内に籠もった冷気をはふ、と吐き出して、うま、とか甘、とか咀嚼しながら呟くと、用務員さんも付属のピックで自分の口に一つ放り込んだ。
「んは、うま、おいしいですね」
あ、用務員さんもうまいとか言っちゃうんだ。他の生徒絶対知らねーだろうな、なーんて優越感湧いたりして。
「ねえ、もいっこ食べていい?」
「もちろん。人が通る前に、食べ切っちゃいましょう」
誰にも内緒の時間。用務員さんの甘さを一点集中で注がれる、わけわかんない、でも全然悪くない時間。
結局用務員さんは、三粒くれた。
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