※通信簿ネタ
※会話文ss


「う、うう……」
「わっ、河部さん? そんな所でうずくまってどうしたの!? 大丈夫!?」
「あ、な、苗木……」
「(青ざめた顔でボクを見上げる河部さん。ボクは慌てて彼女の横にしゃがみ込み、しかし安易に背中を擦るなんてこともできずおろおろするばかりだった)」
「う、うん、ごめん、大丈夫……ちょっとお腹痛くて……ああ、帰りたい……」
「そりゃ、そうだよね……いきなり閉じ込められて、コロシアイなんて言われちゃ……」
「それもそうなんだけど……」
「え? 他にも何かあるの?」
「その……場違い感が強すぎて」
「……は? 場違い?」
「だだだって! ここには大人気小説家とかアイドルとか野球選手とか、御曹司だとかプログラマーだとかモデルとか! 凄すぎる人たち勢揃いじゃん……! も、もう、居たたまれなすぎて……」
「そ、そんなこと言ったらボクなんてただの運でここに来てるんだよ? それに河部さんだって“超高校級の鑑定士”なんでしょ?」
「い、いや……本当はそんな肩書きに見合う実力なんてないんだよね……」
「えっ、そうなの?」
「わ、私んち鑑定館で、お父さんが鑑定士なんだけど……私はただちょっとそれを手伝ってたくらいで、とくに大きな実績があるわけでも、どこかで特集組まれたわけでもないんだ。だから学園がどうやって私を知ったのかも不思議なくらいで……」
「(なるほど……ここに来る前に希望ヶ峰学園のスレでだいたいの人物は把握してたけど、河部さんの名前が無かったのはそういうことだったのか)」
「それにしても、家が鑑定館なんてすごいね。ってことは、普段から掘り出し物のお宝に囲まれてたりするの?」
「え、あ、うん。そうだね。珍しくないものもたくさんあるけど、中にはこの世に二つとない代物とかもあったりしてさ……!」
「へえ! 凄いなぁ……!」
「うちは無銘でもなんでも、基本的にすべて買い取りしてるから、お客さんも色んなものを持ってくるんだ。宝石とか骨董品、書画はもちろん、古い玩具でもブランド品でも、果ては衣服やアイドルグッズまで……」
「そうなんだ! なんか、質屋とか万屋みたいだね」
「アハハ! そうかもね。小さい時からお父さんの仕事を隣で見てたけど、やっぱりそういう色んなものを見るのは楽しくてね。
売り手にとってはガラクタかもしれなくても、それを必要としている人はこの世のどこかに必ずいる。そして、売り手の中には捨てるに捨てられない人や、理由があってどうしても手離さざるを得ない人もいる。そうして価値をつけて買い取った、売り手の想いがつまったものを、必要とする人のもとへ届ける。それが私たちの役割だって、お父さんは言っててね」
「へぇ……素敵な仕事をしてるんだね、河部さんたちは」
「え!?」
「えっ!?」
「え、あっ、いや、あり、ありがとう……お、面白いとは言われたことあるけど、素敵だなんて言ってもらったの初めてで……でへへ、照れるなぁ……!」
「(河部さんは顔をフニャフニャと歪ませて笑った。最初は随分険しい顔をした人だと思っていたけど、どうやら緊張やら何やらで強張っていただけみたいだ。彼女の笑顔はこっちまでやわらかい気持ちにさせられて、それからちょっと可愛い……)」
「って、ごめんなへァい!」
「え!? な、なにが!? というか舌大丈夫!?」
「……らいじょぶ……じゃなくて! ご、ごめん興味もないであろうことをペラペラと一方的に……!」
「だっ大丈夫だよ!? むしろ興味あってボクから聞いたんだよ!?」
「い、いやでももっと共通の話題のほうが……! ほら、ゲームとか!」
「えっ河部さんもゲームやるの?」
「やるよ〜! 最近発売したラストファンタジーとか!」
「えっ! ボクもそれ買ったよ! もうすぐクリアするってところで今止まってるんだけど……」
「うわ〜っおしいな〜! 今語るとネタバレになっちゃう! あっエンディングめちゃくちゃ良かったよ!」
「本当!? 楽しみだなぁ……! あ、そうだ!河部さんさえよければ、ここから出たら通信プレイしようよ」
「エ!? い、い、いいの!? 是非! やった、ここから出たときの楽しみが増えたね!」
「ウッ!」
「え!? ど、どうしたの……?顔色悪くない……? アッお腹痛い!? 正露丸飲む!?」
「い、いやちょっと……台詞が同じだったから、大和田クンとの約束も思い出してしまって……」
「えっ何紋土くんに変な約束でも取り付けられたの? 大丈夫? 私がガツンと言ってこようか?」
「い、いいよ大丈夫! 気にしないで!」
「そ、そう……? わかった……それじゃ、私そろそろ行くね! バイバイ苗木!」
「う、うん! また夕食の時間にね、河部さん」
「(パタパタと走り去っていく河部さんの背中が見えなくなってから、ボクはどっと重いため息を吐いた。……どうしてボクは、あんな見栄を張ってしまったんだ……と。とはいえ、河部さんと少し仲良くなることもできたし、何より安心感を覚えていた。超高校級の生徒たちに囲まれて萎縮していたボクだけど、河部さんみたいにボクのような人間に近い感覚を持った人もいたのだと思うと……なんて、本人に言ったら落ち込ませてしまいそうだけど)」


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