南沢と電話と選考会

『はぁいこちら鬼城、A地点異常無し、どーぞー』
「こちら南沢。お前の頭に異常有り、どうぞ」
『つれないですね』
「充分乗ってやったろーが。で本題に入るが」
『何用ですか? こちとらそれなりに忙しいんで手短に』
「お前が開口一番寄り道したんだろーが! ……で、お前も流石に知ってるだろうが、今日FFIの選考会だろ」
『ああ〜ふっとぼーるふろんてぃあいんたーなしょなるびじょんつーの選考会ですね』
「分解すんなまどろっこしい。それでお前、剣城から何か聞いてないか」
『何か、と言いますと?』
「あー……例えば、突然知らねぇ面子も同行させるように言われた、とか」
『ああ、京ちゃんから聞いたわけじゃないけど、仰るとおりの展開になってます』
「チッ……そっちもか」
『なーる、岡崎体育のほうもサッカー部以外のメンバー連れていくように突然今日言われたわけっすね』
「月山国光! 拾いにくいボケかましてんじゃねェよ」
『でもちゃんと拾ってくださるさっすが南沢センパイ。略してさすみな』
「略すな」
『で、それってどんな人ですか?』
「……バスケ部のエースだとよ。全国クラスの実力らしい」
『ぶわっはっはっは、ご冗談はよしこちゃんですよ』
「お前のボキャブラリーの古さのほうが冗談だろ」
『その人、前々からサッカーへの転向考えてたとか?』
「俺が知るか。話したこともねェよ」
『今ちょちょっと聞いてくりゃいいじゃないすか。同じ場所にいるんでしょ』
「胡散臭ェ展開だから他校のお前にまで探り入れてんだろうが」
『いやーま、ほんとですよね。だってそれ、ねえ〜。今日説明もなくいきなりでしょ? そんなん百パー"選ばれるから"でしょ。先輩たち、今日行く意味あるんですかねェ』
「チッ……やっぱそういうことだよな」
『そりゃ、そういうこととしか思えないでしょうよォ』
「だークソッ、どうなってんだ一体……」
『あ、だから先輩、部外者の私に電話したのか。危惧した通りの展開になってるとしたら、"お前も多分選ばれないぞ"って選手候補の誰かに言う流れになっちゃいますもんね』
「……そこまでわかってて、俺には随分と無遠慮だなァ」
『おっと口元ひきつってそうですね、声色に怒気が。だって実際問題そうじゃないですか』
「……で、俺たちの貴重な枠を奪ったそっちの部外者はどんな奴なんだ」
『そうですねェ、めちゃめちゃ美少女です』
「あーそういやこの大会から男女混合になったんだっけな。その理由も怪しいもんだが……つーか聞きたいのはそこじゃねェんだよ。どこの部活のやつだ?」
『帰宅部ですん』
「きっ……、学校外のどこぞのサッカークラブに所属してるやつか?」
『いんや、それもないですね』
「……サッカーの公式試合に出たことは?」
『それもナシですよアキネイターセンパイ』
「……マジで冗談みてーだな」
『ところがどっこい現実なんですよね〜』
「わーってるよ」
『選考側も狂ってるけど、選ばれた選手側も変ですよねェ。バスケ全国狙えるような人が引き留められるわけでもなく、バスケの時間削ってまでサッカーの世界に来るとか。こりゃグルですよ、グル。何らかの特別なメリットないとそんなん絶対やりませんもん。絶対報酬とか前払いされてますぜ』
「なんっなんだよ一体……」
『あれっ、でもそのわりには私何も貰ってねぇな』
「……あ?」
『まさか元々多少関わってるからって、何もご褒美なくても私のこと釣れると思ってる? えっもしや、拙者……ナメられてる?』
「……おい、ちょっと待て、まさかそっちで連れてこられた外部の奴って」
『あ、そろそろ出発らしいんで切りまーす』
「おい待っ」

 ──ブツッ。
 無慈悲にも通話は終了され、ツー、ツー、と無機質な音だけが流れてくる。南沢は開いたままのガラパゴスケータイを耳に当てたまま、しばし言葉を失う他なかった。







「おっ京ちゃんおまた〜」
「遅い。置いてくぞ」
「まさかぁ、『代表選手』を置いてくわけないでしょうよ」
「……チッ、どうなってんだ一体」
「確かに私超〜実力者だし? こないだまで付喪神ならぬ化身とともに時間遡行軍に立ち向かってたくらいだし?」
「何言ってんだお前」
「でも私たちが時をかける少年少女やってたことを大会運営側が知ってるわけもなし。一体全体どこから私のことを知ったのやら」
「……ゴッドエデンでのことが割れた可能性も、ないわけじゃないが……」
「その程度の情報で、ホーリーロードを勝ち抜いてきた数多の猛者たちを差し置いて内定貰っちゃうとか考えにくいですなぁ」
「確かにそうだな……」
「これで京ちゃん選ばれなかったら私くびり殺されちゃう」
「本当にな」
「そこは否定しましょうや。でもほんと、私はもう皆々様に実力知られてるからまだ納得してもらえるんだろうけど、他校は荒れそうだな〜」
「あ? ……そういや、さっきまで誰と電話してたんだ」
「南沢セーンパイ。あっちも今日ひとり、いきなり部外者連れていくよう言われたらしくて」
「ああ……」
「まだ始まってもないのに、早速大波乱の予感ですなぁ」
「……本っ当にな」
「はー辞表出したい」
「お前それ、絶対他の奴らの前では言うなよ。つーか俺の前でも言うな」
「いだだだだあいあいさ」

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