今、私の目の前には頭を床につけて綺麗な土下座をしているルード。いつもなら「すまん」って謝るが、今回ばかりは部が悪いらしく「大変申し訳ありません。もう二度とこのようなことは」と敬語だ。
ことの始まりは、数時間前に遡る。私がリビングのソファーで寝ている彼を見つけ、“休みだからと飲みすぎたんだな。全くしょうがないなー“とブランケットを持ってきて掛けようとした時のこと。いつもなら2個ほどシャツのボタンを外しているが、今日はいつもの倍は外されていてシャツが乱れている。まったくもう!とボタンを閉めようとした際に、嫌でも目に入る彼の逞ましい胸板。その素敵な胸板に綺麗な形のキスマークが付いていたのだ。え、冗談でしょ?いやいや、そんなまさか。と現実を受け止められず、もう一度見てみるとそこにはやはりくっきりと口紅でキスのマークが。
ふつふつと怒りが込み上げてくる。"どこの女と!遊んできたのよ!"言い逃れができないように、自分の端末を使い写真を撮る。近くに置いてあるデジタル時計を彼の近くに置いて、バッチリと。消されたら困るから、会社のパソコンにメールで送っておく。さて、どうやってこの男を料理してやろうか…。まだ起きないだろうし、一度外で気持ちを切り替えてこよう。
いつもよりも早く起きてしまったため、近くのカフェに入り、モーニングメニューを頼む。店内には数人しか居らずとても静か。そこに優雅なクラシックが流れ、食器がぶつかり合う音が時折する。とても心地よい空間だ。
頼んでいたモーニングプレートを店員さんが持ってきて、私の前に置く。「ごゆっくりどうぞ」と言い去っていく店員には目もくれず、目の前にある湯気が立ち昇る朝ごはんに心躍らせた。
想定よりものんびり食べてしまい、時計を見て驚く。そろそろ彼が起きる時間だ。結局なにも考えられず、気分転換しただけで終わってしまったな…。でも、ここのカフェのモーニングに来ることができたからよかった。
家に帰ると、寝ぼけたルードが身体を起こしソファに座っていた。「おはよう」というと、私を今認識したのか少し驚いた表情をし、挨拶を返してくれた。さて、これからどう…しようか。
「昨日はいつも通りレノと…?」
「そうだが…」
いつもと違う私に戸惑いながらもしっかりと目を合わせて返事をしてくれる。まずは合格。では、次はどうかな。
「これはどういうこと?説明してもらえる?」
ルードが起きる前に撮ったあの写真を彼に見せつける。途端に自分の胸元を確認して、目を見開く。
「これはだな…」
言い訳を始めようとしたルードを冷めた目で見てしまうのは仕方ない。この男は何を言おうとしているのか。納得できないことだったら…、いやどんな理由でも酔っ払って胸元に口紅をつけて帰ってきてるんだから許しはしない。やるのなら、私にバレないようにやってほしい!
「昨日の任務でレノが女装して、そこで付けたやつだ…。誤解させるようなことをして申し訳ない…です」
「じゃあ、私はレノ嫉妬したってこと!?」
「…イリーナもその場にいたから証明できる」
レノに嫉妬したとか恥ずかしすぎる…。いや、そもそも口紅を落とさないで帰ってきたのが悪くない?浮気じゃなかったことへの安心感、レノへ嫉妬していたことの羞恥心、紛らわしいことをした彼への怒りで感情がごちゃごちゃ。
「ま…紛らわしいことをしたルードが悪いんだから!」
ミッドガルにある有名洋菓子店に真っ黒のスーツにサングラスをかけたスキンヘッドの男が数量限定スイーツを求めて並ぶ。それを見た一般社員たちが「あの人見た目と違って、スイーツ男子だったんだね」と話し、噂が広がった。タークスって非道な人としか思ってなかったが、人間らしいところあると影で言われてたり。
その噂は、ルードと付き合ってることを秘密にしている一般社員の私の耳にも入ってきた。彼にとっては恥ずかしいこと間違いなし。私は美味しいスイーツも食べれるし、大満足だ。
「タークスのスキンヘッドの人…ルードさんだっけ?スイーツ男子なのではと、ギャップにやられてる社員多いらしいよー」
「え、そうなの?見た目、怖いもんね…」
同僚にいきなり話を振られて、驚いた。ちょっと私の彼なんだから!って言いたい。いいお仕置きだと思ったのに、まさか人気出ると思ってなくて…。
自分で招いたことだけど、もやもやするのはまた別の話。
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2020/10/15