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定時をだいぶ過ぎ、むしろ深夜勤務になるこの時間に地下3階の総務部調査課__通称タークスのオフィスではキーボードを忙しなく叩く音が鳴り響く。
少しイラっとしてしまっているのでキーボードを叩く力はいつもより強めだ。このオフィスには私しかいないから気にしない。
ついさっき任務から帰ってきたばかりなのに、"月末だから報告書をすぐに提出する必要がある"とツォンさんから連絡が入っていた。
気分は最悪。疲れて早く帰りたい体に鞭を打ち、モニターと睨めっこしつつキーボードを忙しなく叩く。いつもならやらないが、今日はenterキーをタッーーン!と盛大に叩いて、八つ当たり。
遅くまで仕事してたんだから1日くらい遅れるの許してくれたっていいのに…と愚痴をこぼし、眠気覚まし兼糖分摂取のために買ったカフェオレを飲む。必然と溜息の回数が多くなる。
何回目かの重い溜息ついたところで、突然ガラッとオフィスのドアが開いた。そこには帰ったと思っていたレノがいた。
「おつかれさん、と」
ドアに寄りかかる姿は様になる。流石、モテ男。イケメンがやるからこそ、ぐっとくる。
ちょっとだけ現実逃避をしている間に、私の傍までレノが来ていた。
「この時間まで任務…?」
「いや、ちょっと上のフロアに行ってたんだぞ、と。そろそろ終わりそうか?」
「見直ししたら終わりかな。あと10分くらい」
「んじゃあ、10分後に迎えに来るぞ、と」
"帰る準備しておけよ"とレノは言ってオフィスから出ていってしまった。この後どこかに行くのだろうか?
疲れているから早く帰りたいけど、好きな人と一緒だから、まあいいか…と思い、顔が緩む。
早く終わらせないと…と気を取り直して報告書の見直しを行う。
3回ほど読み直し、誤字脱字や報告内容にミスがないことを確認できたので、ツォンさんにメールで報告する。
送信ボタンを押し、任務完了。
ふーっと息を吐きだし、モニター右下の時計を確認するとちょうど10分経つところだった。
急がないと、レノを待たせてしまう。急いでパソコンを落とし、鞄を引っ掴み立ち上がる。あたりを軽く見渡し、忘れ物はないことを確認。うん、これでいつでも出れる。そう思っところで、ガラッとドアが開き、レノが顔を出した。ジャストタイミング。
「お、時間通りだな。気分転換に行くぞ、と」
「え…?」
「この前、オレのバイクの後ろに乗りたいって言ってただろ」
「覚えててくれたんだ…」
行くぞ、と…手を掴まれ、レノと神羅ビルを歩く。レノと手を繋ぐのhさしぶりだな…なんて思っているとあっという間に正面エントランスへ着いてしまった。
え、バイク…?どこにあるの?と周囲を見渡していると、
「バイクはあそこだぞ、と」
キョロキョロしてた私を見て、クスクス笑いながらバイクのほうへ顔を向ける。
きっと私を待つ時間で前に回しておいてくれたんだろう。そういうところが好きなんだよねと思いつつ、レノに手を引かれバイクのもとへと向かう。
レノがバイクに跨ったところで私も跨がり、レノの腰に軽く腕を回す。
「しっかり掴まっておかねえと落ちるぞ、と」
返事はせずに、レノの腰に回した腕に少しだけ力をこめる。
"今日は一段と甘えん坊だな…"ボソッとレノが発した言葉を聞き逃さなかった。
そんなことないもん、と小さい声で言うと頭をわしゃわしゃされた。少しくすぐったい。
でも、凄く心地よくて少し火照った顔を背中に押し付けた。レノの香りがとても落ち着く。少しだけぐりぐりと頭を押し付けていると、"くくっ"と笑われてしまった。
「行き先のご要望はありますか、と」
「レノと一緒ならどこへでも」
2020/5/28