俺が好きな女は同僚の…、今隣で報告書を必死に作成している女。すごい流されやすく、ちょっと押せ押せにしてしまうと駄目な子だ、そんなところが可愛いんだが。最近、社長にも気に入られてるらしく、とても困る。例え社長であろうと好きな女を横取りされるのは許せない。

「いや、あの…社長、近すぎませんかね?」

「私はそうは思わないが」

 押せ押せな社長にタジタジなあの子、俺は何を見せられているんだ。せめて目の前でやるのはやめてほしいが、社長相手にそんな事は言えないので眉間にシワを寄せてしまう。
 チラチラとこちらを見てくる社長は挑発的だ。クッソ・・・対抗できないのがイライラする。それに俺の反応をみて遊んでいる気もするし、何がしたいのかわからなくてむしゃくしゃする。

「レ、レノっ!助けて!」

 へーへー。むしゃくしゃする気持ちを押し殺して、助けに向かうとしますか。何で主任やルードがいても、俺に助けを求めるのかは理解できないが。

「社長、それくらいにしてやってください。彼女もツォンさんから報告書提出するように求められてるんで」

「それはすまなかった。邪魔したな」

 あっさりと身を引き、ツォンさんにアイコンタクトし二人でどこかに向かってしまった。本当、あの人に振り回されるのは疲れるぞ、と…。
 はあー…と重たいため息をついていると、視線を感じた。ちらっと見ると、彼女と目があった。どうしたのだろうか。少し首を傾げると、鏡合わせのように首を傾げた。んだよ、この小動物可愛すぎるだろ…。思わず抱きしめたくなるが、俺達はそういう関係ではない。ただの同僚だ。

「どうかしたか?」

「あっ、いや…毎回助けを求めてしまって申し訳ないなって…。でもレノなら助けてくれると思って。…ごめん」

 こいつに動物の耳生えていたら、きっと垂れ下がっていただろう。目の錯覚でそういう風に見えてしまっているのだが。惚れた弱みだなって、つい先日相棒にも言われたばかりだがそのとおりだよな、と。今なら頭撫でても怒らないだろうと思い、利き手を伸ばしわしゃわしゃっとする。自己満足していると下から覗き込まれた。

「もう少し撫でて欲しい…です…」

 か細い声でこいつは何て言った!?もっと撫でろって?そーっと手を伸ばしもう一度撫でると気持ちよさそうにし、目を瞑る。あー…、俺の理性頑張るんだぞ、と。

「ほう。やっと距離が縮んだのか。面白半分でちょっかい出していたが、レノが手を出さないなら横取りしようかと思っていたところだ」

「しゃ、しゃちょー!?」

「三角関係というのを体験してみたかったんだがな」

「…俺たちで遊ぶのはやめてくださいだぞ、と」

 俺の後ろに隠れて、真っ赤な顔でちょこっとだけ顔を出して社長に抵抗しているのすら愛おしいと感じる俺はもうダメなのかもしれない。ただ、それを第三者として見れないのが悔しい。俺のポジションは譲る気ないけど。

「レノに飽きたら俺のところに来ると良い。歓迎する」

 クツクツと笑いながら言う社長、冗談には聞こえない。そんなことはさせない、と少し腰を落とし警戒する。

「精々飽きられないように大切にすることだな、レノ」

 再びツォンさんとアイコンタクトを取ると、何処かへ向かった。今度こそ、行ったみたいだ。ホッとして気が抜ける。

「れ、レノぉ…」

 ああ、そういや俺の後ろに隠れていたっけ。体制を立て直し、彼女の方へ向く。少し涙目でうるうるさせている。あーもう、無理だな、これ以上伝えないのはできない。

「好きなんだよ…自惚れてもいいのか…?」

「…う、自惚れてもいいぞ、と」

 尻すぼみになりながら俺の口調を真似して返してきた言葉に驚いた。本当に、自惚れていいのか?聞き間違えじゃないか?もっと早く言っておけばよかったという後悔と両想いの嬉しさ。というか、今までの俺の努力よォ…。力が抜けてその場にしゃがみ、うなだれる。

「わたし、レノのこと好き」

 隣にしゃがみこんで俺にしか聞こえない声で伝えてくるの可愛すぎるぞ、と。



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2020/10/15




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