私の視線の先には私が想いを寄せている彼の姿が。今日も元気有り余っていて可愛いなと思ってしまうのは仕方ない。大型犬みたいで本当に可愛いのだ。わしゃわしゃと頭を撫でてみたい衝動に駆られる。だめだめ、仕事に集中しないと。シミュレーターを長時間使えないと困る人達がいるのだ。


 出会いは、なんの取り柄もない一般社員の私が偶然シミュレーターを使い終わった彼らとバッタリ会ったところから始まる。
 上司に「シミュレーターのデータが届いていないからちょっと見てきてくれ」と言われたので、機械が正常に作動しているか確認をするために足を運んだが、使用中で確認ができない。とりあえず、使用中になっているし、ぱっと見た感じはちゃんと機能してそう。今使っている人たちが出てきたら、システムを確認してみよう。近くのソファーに座って、待っていると中から出てきたのは、ソルジャーファーストの方々…!こんな近くで見れるなんて!と感動していると、見たことがない人も一緒に出てきた。誰だろう…?でも、きっとファーストの方々と一緒にいるから、ソルジャーなのかな。そんなふうには見えないけど…。ってそんな事考えている場合じゃない。早く確認しないと、データが取れないとあの統括からお叱りが…!慌ててメンテナンスの札をかけて、作業をする。確認したところ、データはちゃんと取れている。データを送ることができていないのかな?メモリの容量とかも確認しよう。

「なあ!これ、なんか調子悪いのか?」

「いえ、データが起きられてこなかったので原因を…え!?」

 私は誰と会話をしていたんだ!?びっくりして振り返ると、そこには先程クラスファースト達と一緒にいた彼の姿が。あたりをみても、彼一人だけ。どうかしたのだろうか?

「ちょっと話してみたいなーって思ったからさ!」

 初めて会ったばかりなのに彼との会話はとても楽しくて、つい時間を忘れてしまった。私の持っていた端末が鳴り、上司からの電話が来るまで話に花を咲かせながら作業をしていた。本来なら作業する際に連絡入れるべきだったのに。彼に断りを入れて、通話ボタンを押す。

「連絡がないけど、大丈夫なのか!?」

「す、すみません!今確認しているのですが、メモリの空き容量が不足していたことが原因みたいです。空きを作っているところで…」

「そうか…それならよかった。引き続き頼むよ」

 通話が切れてホッとする。怒られなくてよかった…。
 横から視線を感じ、そちらを向くと彼がこっちを見ていた。どうしたのだろうか。

「お前って凄いんだな!って、あー!そういや名前言ってなかったな!?俺、ザックスっていうんだ」






「なあ、また調子悪いのか?」

 ここで彼と出会ったときのことを思い出していると、ふいに声をかけられた。あれ、聞いたことある台詞だな…。振り返ると今しがた思い出していた記憶に出てきた彼がいた。声をかけてくれていたらしい。心配そうな顔をしているため、ボーッとしていただけだよと伝える。

「これは定期メンテナンスだから問題ないけど…。あっ、使いたいよね?ごめんね、あと10分で終わるから」

 そう言って作業に戻ろうとすると、私が操作している機器の端に彼の手が置かれた。どうしたんだろうか?不思議に思い、彼の方へ改めて向くとぶつかりそうなくらいに近い距離にザックスがいて、私を見下ろしていた。え、え…ちょっと待って、何この展開理解ができないんですけど…。

「あ、あの…ザックス近すぎませんかね…?」

「こうしないと、こっち見てくれないと思ったから」

 いつもとは違って真剣な表情で私を見つめていて、どうしたらいいのか分からなくなる。なんで、どうしてこんなことするの?あまりにも近すぎて目が合わせられないんだけど…。

「俺の目、見てよ」

 機器に手を置いていない方の手につけている手袋を口で取り、床に投げ捨てる。何もつけていない彼のゴツゴツして角張った指が私の顔に伸びて、そっと頬に触れる。愛おしそうに見つめてくる瞳から目をそらすことができない。ゆっくりとザックスの顔が近づいてきて、もう無理と目を伏せたら瞼に柔らかい感触とリップ音。

「お前のことが好きなんだけど」

 ず、ずるいよ!こんなのされてトキメカない人がいると思うの!?顔に熱が集中し、火照る。
 がばっと彼の胸に飛び込み、抱きつく。

「わたしだって、すきなんだから」

 か細い声で言ったのが彼に届いたらしく、ぎゅっと抱きしめる力が強くなる。「やっと俺のだ。絶対に離さないから」なんて抱きしめて言ってくるの反則だよ…。

 私も離れる気、ないよ。



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2020/10/15




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