サングラス、スキンヘッド、真っ黒のスーツ、所属は総務部調査課。これだけ聞くと怖い人にしか思えない。でも、サングラスの向こう側にはとても優しいブラウンの瞳があり、小鳥たちと戯れることがあるのを私は知っている。彼とは八番街のカフェで会ったときだけだが、一緒にお茶をし他愛もない話をする仲…所謂カフェ友だ。
 そんな彼に淡い恋心を抱いてしまった。ここ数回はドキドキしてしまい、うまく話せている気がしない。相手はタークスだ…私の態度がおかしいことに気付いてしまっているのだろう。


「最近どうだ?」

「んー…最近入った新人がね…」

 働く部門が全く違うので、こんなことが最近あってねと私が話すことが多い。彼は聞いてくれて、相槌をうってくれる。あまり喋るのは得意ではないから聞いてるだけで楽しいと以前聞いたときに言ってた。それからはその言葉に甘えて、沢山話させてもらっている。
 今日もいつものカフェでのんびり過ごしているのだが、オフの日にしか彼は来ないため、私が彼のスール姿よりも私服姿の方が見慣れている。シンプルな服を着こなしていて、まるで高級ブランドの服を着ているのかのよう。実際は、お手頃なお値段の服を着ているそうで、驚いた。センスが良すぎる。
 いつ見てもかっこいいなー…と思っていると、ルードの端末が震えた。メールのようで眉間に皺を寄せている。今日はここまでかな…。

「すまない、仕事が」

「気にしないで。またオフの日に是非。気をつけていってらっしゃい」

「ああ」

 そういうと足早に行ってしまった。タークスって大変だな…。私には何も出来ないけど、無事に帰ってくることくらいは祈らせて欲しい。いや、勝手に祈っているけど。
 さて、私も帰ろう。彼に会えてよかった。また明日からお仕事頑張ろうっと。



ーー翌日

 普段は次席に根っこが生えたように動くことのない私が珍しくフロアを出て神羅ビル内を資料を持ち移動していると、ルードがいた。ビル内で見かけるのはいつぶりだろうか…?久々だから、ちょっとテンションが上ってしまう。声をかけようと思い、足を踏み出したところでルードに声をかける女性がいて、踏みとどまる。私よりも若くて小柄で守ってあげたくなるような女の子だ。野暮なことはせずに見ていると、プレゼントを渡していた。恥ずかしそうにしながらも受け取っていて、胸がギュッと苦しくなる。
 もう無理、見ていられない。彼に背を向け一気に走り出す。

 「ちょ、待て!」

 待てと声が聞こえたが、そんなの知らない。私は必死に走る。
 あんな瞬間、見たくなかった。デートではないけども二人で話したりするのは特別な扱いされていると勘違いしていた私が悪い。私以外の異性と二人でいるの見たことがなかった。必死に走って彼から逃げて、だいぶ離れたところまで来たので下を向いたまま立ち止まる。こんなにも私、彼のこと好きだったんだと自分の気持ちを認識してしまい辛くなる。こんな風に逃げてしまったんだ、もう彼に会うことはできない。
 涙が溢れてきて、止まらない。止まってよ、止まってよ…と必死に目尻に溜まる涙を利き手の人差し指で拭うが止まる気配はない。こんな形で彼との関係を終わらせることになるとは思っていなかった。やだ、好きなのに…好きなのに…。

「その言葉、自惚れていいのか」

 はっと後ろを振り向くと、走ってきたのかスーツが少し乱れた彼がいた。何でここにいるの…?それに自惚れていいのかって…なに…?

「今、好きなのにって言ってただろう」

「えっ…!聞こえて…!」

 ど、ど、どうしよう!よりによって本人に聞かれるとは。思わず後ずさりしようとしたが、できなかった。あっという間に距離を縮めた彼にぎゅっと抱きしめられた。何がなんだかわからなくて、混乱する。やだやだやだ、離れてよ。心臓がうるさくて、聞こえちゃう。

「俺も好きだ、好きなんだ」

 聞こえてきた言葉が信じられずに目を見開いて、彼を見上げる。勝手に溢れてきて止まらなかった涙はいつの間にかピタッと止まっていた。彼の優しい手が私の目尻をそっと触り、こぼれ落ちる寸前だった涙を拭う。
 少し猫背になり、私の額に自分の額をコツン…と当ててきた。

「好きだ。愛おしいと思っているんだ。だから、逃げないでくれ」

「でも、さっき女の子から…」

「あれはレノへ渡してくれと」

 私は勘違いして…!羞恥心から、逃げ出してしまいたい衝動に駆られる。でも目の前にいる彼が離してくれない。

「嫉妬してくれたのが嬉しかった」

「で、でも!」

「それだけ俺のことが好きなんだろう?」

 何も言い返せなくなってしまい、彼の胸元に顔を埋める。ああ、もう好きだよ。どうしようもないくらいに好き。彼の腰に両腕を回し、ぎゅっと抱きしめて距離を縮める。優しく抱きしめ返してくれた彼に包まれ、幸せを噛み締めた。



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2020/10/15




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