なんでも屋をやっている彼は毎日忙しい。私はそんな彼のために何ができるのだろうか…?いくら元ソルジャーだからといっても休息は必要だ。せめて安心して休める場所を提供できれば…と考えたところで、はっとなった。我が家の合鍵を渡せば解決するのでは!?そう思い立ってからの行動は早かった。すぐさま予備の鍵を鞄の中に入れていつでも渡せるようにした。
 折角渡すんだから鍵だけじゃなくてお揃いのストラップとか付けたいな…と思い、スラムを徘徊する。とある露店の前を通った時、そこで売っていた石がクラウドの瞳みたいな綺麗なアイスブルーで目が離せなくなった。悩んだ挙句、私の鍵には魔晄の瞳のようなアイスブルーの石を、クラウドに渡す鍵には私が好きな色の石を買ってつけた。
 お揃いの石をつけた鍵たちは見ているだけでも幸せになる。早く会って渡したいなー…。いつ会えるのだろうか。片手で2つの鍵を持った私は、暫く石をぶらぶらと顔の前で揺らしていた。

 合鍵を用意してから数日経ったある日のこと。正午を過ぎた頃にクラウドから連絡があり、いつもなら事前の連絡なのだが今回は違った。「今日夜どこか行かないか」ってシンプルな文面。相変わらず言葉が少ないなー、そんなところも好きだけど。断る理由がないので、私もシンプルに「行く」とだけ書いて返した。急にだけど、彼と会うことができるのがとても嬉しい。まだ夜まで時間あるけど、久々に会うからと気合を入れて準備を始める。

 あっという間に夜の帳が下り、外は暗くなった。そろそろ来てくれるのかな?とそわそわしてしまい、端末を握りしめたまま部屋の中を意味もなく歩く。
ーーピロン
 持っていた端末から音が鳴り、急いで確認すると「外にいる。待っている」って。慌てて鞄を掴み、家の外へ飛び出す。少し先に会いたくて堪らなかった彼を見つけた。

「慌てると転ぶぞ」

「早く会いたかったから!」

 少しだけ乱れてしまったので身なりを直していると、不意に手を差し出された。その手を握り返し、クラウドとの距離を縮める。これからどこに行くのかな?少しだけ手を引っ張り、彼を見る。

「着いてからのお楽しみだ」

 そう言って連れて来られたのはスラムの外れにある空き地。日中は野良猫たちの溜まり場になっているところだ。もう動かない兵器たちが折り重なっている。

「こっちだ。足元に気をつけろよ」

 鉄の塊の上を2人で一歩一歩確実に登っていく。途中何回か滑りそうになったけど、クラウドと手を繋いでいたお陰で助かった…。なんとか上まで登れ、空を見上げるとそこには満天の星空が広がっていた。まさか空を見れる場所があるなんて…久しぶりに見た夜空はとても綺麗で感動した。

「よく見つけたね?こんな綺麗に見れるところ」

「先日依頼を受けた時に偶然な」

「連れてきてくれてありがとう!」

 暫く立って見上げていたが、そろそろ疲れてきたのでその場に腰を下ろすと、彼も私のすぐそばに腰を下ろした。クラウドの腕が私の腰に回り、ぎゅっと抱き寄せられる。そのまま彼に体を預け、再び空を見上げる。
 暫くするとぽつりぽつりと会っていなかった間のことを話し始めた。彼から出てくるのは基本依頼をこなしている時のことで、ちょっと眉間に皺を寄っている。

「もっと会えたらいいんだけどな」

「そのことなんだけど…これをクラウドに」

 鞄から私の好きな色の石をつけた鍵を取り出し、彼の手の上に乗せる。

「これは…」

「私の家の鍵だよ。身体休めるのに私の家使っていいから…ダメかな?」

「…いや、そんなことない。大事にする」

 よかった…ホッとして力が抜け、彼に寄りかかる。これで少しは会える頻度増えるといいな。来てくれた時は手料理振る舞いたいし、添い寝したいし…あれ?いつからこんなに我儘になってしまったのだろうか…?

 合鍵を渡してからは以前よりも会う頻度が増え、一緒に過ごせることが多くなった。思い切って渡してよかったと心の底から思う。だって、家にいるから部屋着見れる。それにシャワーから帰ってきた彼の髪の毛はしょんぼりしていていつものチョコボ頭じゃない。ほかにも上げていったらキリがないくらい。もっと沢山彼のこと知りたいと思っても仕方ないよね。

 新しい一面を見るたびに私は何回も恋をする。同じ人を何回も好きになるってなんて贅沢なんだろう。



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2020/10/15




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