物心ついたときから常に一緒に過ごしていた幼馴染のことがずっと好きだった。でも気づいたら彼のそばには私ではなく可愛い女の子がいて、私の居場所を奪われてしまった。私よりもずっと可愛くて守りたくなる、そんな女の子。彼の幼馴染ということで私とも仲良くしてくれる素敵な人だ。幼馴染という壁をぶち壊して距離を縮めることができなかった私は臆病者。ただ、立場をキープできていることだけは良かったかもしれない。
 幼い頃から冷静で、常に落ち着いて周りを見ることができる男の子だった。私はいつも彼の後ろをついて歩き、離れることができなかった。内気で話すことが苦手だったから同い年の友達はレズリーしかいなく、何をするにも彼と一緒だった。
 あるときを境に彼の背中の後ろにいることが減って、ひとりでいることが増えた。今までレズリーがいたからどうにかやり過ごすことができていたことも、自分でやらないといけなくなってしまった。私は彼の優しさに甘えていたことをその時初めて思い知った。
 暫くひとりで過ごしていて、やっとひとりで過ごすことになれてきた頃、レズリーに呼ばれた。「会って欲しい人がいる」そういった彼は、少し離れたところにいた女の子を連れて私の前で止まった。「俺の彼女、マールっていうんだ。仲良くしてほしい」彼と離れることはない、ずっと一緒だと勝手に思い込んでいた私にはショックな出来事だった。その後の会話はうろ覚えなのだが、私のことを幼馴染と紹介して彼女と会話をした。その日をきっかけにまた私は彼といるようになった、マールも一緒に。私がいたら邪魔だと思うのが、それを言うと彼らは決まって「そんなことない」と言うのだ。
 二人と一緒に過ごしているうちに、マールのことを羨ましいと思っていたはずがこのふたりの幸せを願う気持ちが生まれていた。好きだった彼が幸せそうにしていて、私はそれを近くで見ることができる。友人ではなく、幼馴染だからこその距離感。


 彼の隣には今私しかいない。マールがいないのだ。私達は今彼女を探すために必死になっている。レズリーはコルネオの側近として、私は蜜蜂の館で情報を集めているのだ。まさか私がハニーガールになるなんて、誰が想像しただろうか。あそこは神羅の上の方の人が来るから、情報収集にうってつけの場所だ。利用しないなんて勿体ない。

「なにか進展あったか?」

「んー…今のところは何もないかな…」

「そうか」

 ふたりで昼間のウォールマーケットで階段に腰掛けコーヒーを飲みながら情報共有をする。週に1回は必ずここで会う。今回も進展なしか…。重たいため息しか出ない。

「そういえば、小耳に挟んだんだが」

「ん?」

「最近入ったハニーガールが可愛くてダンスが上手い、だと。アンタのことだろ?」

 最近入ったハニーガール…新人と言われるのは、確かに私のことかもしれない。薄暗いところだし、メイクしてるしそう見えてしまっているのかもしれない。それにそんなにダンスは上手くない。毎日アニヤンのお小言が嫌になる。考えただけで嫌になって、思わず眉間にシワを寄せてしまう。

「自身を持てよ。俺もチラッとしか見てないが、ダンス良かった」

「えー…毎日アニヤンのお小言もらうのにー?」

「更に上達すると思っているのだろう。今度はしっかり見に行く」

 そう言うと彼は立ち上がった。そろそろ仕事の時間のようだ。名残惜しいが、また1週間後だな。重たい腰を持ち上げ、伸びをする。私も仕事に向かうとしますか。

「じゃあ、また。何かあったら連絡してね」

「わかった。…ああ、そうだ言い忘れていた」

「どうかしたの?」

「メイクしてもしなくても十分可愛い、自信を持てよ」

 別れ際にとんでもない爆弾を落としたぞ、この男は!びっくりして硬直している私を気にも止めず「仕事、頑張れよ」と言い、去っていってしまった。あまりにも衝撃が大きくて、その場から動けなくなって小さくなっていく彼の背中を見つめ続けることしかできなかった。次回からレズリーが消えたところで、やっと力が抜けへなへなと階段に座ってしまう。
 私の心を乱すことが本当に得意だよね、君は。ひとりの女として見られていないのわかっているけども、嬉しすぎる。顔を下に向いていると、ぽたぽたと雫が落ち石の階段にシミを作っていく。…泣いているのか、単純だな…私。

 今宵も愛しい幼馴染のため、私は舞う。



Twitterにて開催されていた"幼馴染"祭に参加
2020/10/15




Story