今日はハロウィンらしい。松葉杖を使って、少しだけ病院内を歩いた時に知った。いつのまにか病院内の飾り付けされていて、カボチャやおばけでいっぱいだった。そして、いつもは入院服を着ている子供たちが、仮装している。魔女、狼男、シーツおばけ…他にも沢山。みんな看護師さんたちに、キャンディーやクッキーなどのお菓子をもらっていた。
 私のいる病室にも、子どもたちが数人訪ねてきた。ドアを開けた瞬間、「全然ハロウィンになってない!」って言い放つ。そこは「お菓子をくれなきゃ、いたずらするぞ!」じゃないのかよ…とツッコミしたかったけど、そのタイミングすらくれなかった。ドアを全開にしたままにして、子供たちは去ってしまう。…が、数分後ハロウィンの飾りを持って現れ、みんなで手分けをしながら真っ白な壁に飾り付けをし始めた。殺風景だった病室がオレンジや黒などであっという間にハロウィン仕様になった。
ひとり、私のいるベッドの横に来て、「オレら優しいおばけだから、お菓子あげるんだぞ!」と手に持っているカゴからお菓子を分けてくれた。看護師さんたちにもらったやつだけどって。とても優しい子たちだ。
 そして、この子達に広い個室にひとりぼっちの私が淋しいように見えたらしく、ここでお菓子を食べながらお喋りすることになった。幸いにも私の病室には、ルードやレノが来てくれた時に置いていってくれたお茶やジュースがある。私だけではとてもじゃないけど、飲みきれないなと思ってたからちょうどいい。よりどりみどりの飲み物を出したところ、珍しいジュースがあったらしく大はしゃぎ。お菓子のお礼じゃないけど、もう一本ずつ渡すととても喜んでいた。子供たちのこんなに笑う姿を間近で見たのは初めてで、なんかこそばゆい。

 子供たちと話していると、時間が過ぎるのはあっという間だ。タークスになってから全然世の中のことを知らなかった私には、とても新鮮だった。こういう遊びが流行ってるんだよ!とか、この本面白いんだよ!とか。みんなとお茶会…ハロウィンパーティーをして、何もないこの病室で死を待つだけだった私の心に少しだけ陽がさした。私は彼らがどのような病気と闘っているのかは知らない。元気そうに見えても、実は重たい病気を患っていて、それでも今を一生懸命生きてるのかも…。今まで任務ばかりの人生だったから、最後くらいは…ね。



 夜になりベッドの上から空を眺めて、改めて今日のことを思い返す。大人も子供も楽しんでいて、ハロウィンっていいものだなと思った。そう、みんながこの祭りを楽しんで笑顔になる。
日記に書いておこうと思い、サイドテーブルから日記とペンを取ったところで病室のドアが勢いよく開く。シーツをかぶっているだけで足下が丸見えの人が入ってきた。真っ黒のパンツに真っ黒の革靴。うん、この革靴はレノだな?

「私の病室に来たシーツおばけ…さんは、何しに来たんだぞ、と」

「シーツ被ったのに即バレかよ。ったくー…」

「革靴でモロバレだよ。隠す気なかったでしょ?」

「…まあな」

「ところで、そのシーツはどこから?」

「看護師の姉ちゃんにお願いしたんだぞ、と」

 頭からかぶっていたシーツを捲って顔を出し、おちゃめに笑うレノと目が合う。このやんちゃ坊主が。…消灯時間がとうに過ぎているのに来てくれたってことは、任務帰りってところかな?つかれてるんだから、早く帰って休めばいいのに。

「今日がなんの日か知ってるか?」

「ハロウィンでしょ?そこの壁見てよ、子供たちが飾ってくれたの」

「へー…お前にもオトモダチがいたんだな」

「たまたまこの病室にお菓子をもらいに来た子供たちと、仲良くなっただけよ」

 聞いてきたくせに興味なさげにしていて、"まったくこいつは…"と思ってしまう。深く入ってこないくせに聞いてくるのずるいよね。
 ふと思い立ったかのように、レノはシーツを再度被った。今度は何をする気だろうか?

「お菓子をくれなきゃ…いたずらするぞ、と!」

 そう言いながら、何処からか取り出したお菓子の山をベッドの上に置いた。いやいやいや、その台詞いうなら私がお菓子あげないとだめじゃないか!なんて思うが、目の前に置かれた大量のお菓子とお花にめを奪われる。

「これは…花があるからわかるだろ?あいつからだぞ、と。気合を入れて作ったって」

「エアリスが…!!」

「んで、こっちはオレたちから」

「私が好きな洋菓子店の…!」

 エアリスの手作りお菓子とお花。私が好きな洋菓子店のフィナンシェやマドレーヌ、マフィンはタークスから。え、これ真っ黒のスーツ着て買いに行ったの?あのおしゃれなお店に??誰が行ったんだろう…想像するだけで笑っちゃうんだけど。

「ちなみに今日の任務は、この洋菓子店に並ぶことが含まれてたぞ、と」

 無邪気に笑い伝えてくるあたり…ね。タークス、そんなに暇じゃないでしょ…?身内に対してはとことん甘いんだよな…と思うが、この上ないくらいに嬉しい。



 この身体になってからはタークスの任務を遂行することができなくなってしまい、正直気分は最悪。タークスであることを誇りに思っていたから。でも、この病院に入院することになり、今までタークスとして任務を淡々と遂行することだけだった私は沢山のことを知る機会を得ることができた。
 せめて、クリスマスまで持ち堪えてくれるといい…そう心から願う。

 ハッピーハロウィン。私にとって、最初で最後のハロウィンだったけど、とても楽しかったよ。
 ところで、今日の日記にはシーツ被ったレノおばけの落書き付き。我ながらこれは似てると思うぞ、と!


Twitterにて開催されていた祭り『ハロウィン』に参加
2020/12/24




Story