爆処追悼2020
今年もこの日が来てしまった…。大好きな友人2人の命日。学生時代に3人で撮った写真を持ち、思い出の場所を巡る。
まずは小学校。転校してきたばかりでなかなかクラスに馴染めなかった私に優しく話しかけてくれた。思えばこの時から萩原はコミュ力お化けだったな。萩原と話すようになってから松田とも徐々に話すようになって、いつのまにか常に彼らと一緒にいた。
次に来たのは中学校。大きめの学ランを着た2人は裾も袖も長すぎて、折っていたな…。卒業する頃には大きめに買ったはずの学ランを窮屈そうに着ていて、みんな同じ目線で話していたのに彼らを見上げて話すようになった。
さらに足を運んで、今度は高校。まさか2人と一緒の高校とは思ってなくて、入学式にブレザーをピシッと着たニヤケ顔の2人が校門にいてびっくりした。私だけクラスが分かれてしまったのにお昼ご飯誘ってくれたりしてくれて、「どっちと付き合ってるの!?」って何回も言われたなー…。
次は彼らが通った警察学校。ここでいい友人を出会ったみたいで、携帯使える時間が少ないのにもかかわらずこまめに連絡してくれて沢山話した。何枚か仲良くしてる友人と撮った写真をもらって、「ちょっと老け顔は伊達、黒髪猫目が諸伏、この金髪が降谷!」って萩原が教えてくれたっけ。松田は降谷くんとよく喧嘩してるらしくて、「こいつのことは覚えなくていい」ってね。辛いことも沢山あるけど5人で協力して乗り切ってたみたい。
そして、ここは萩原が殉職したマンション。タイマーが止まったからと油断したみたいで遠隔操作で爆発されたって。防護服は暑いから嫌いって会うたびに言ってたけど、ちゃんと着ないとダメだよ。この日、松田が私の家に来て直接伝えてくれた。2人で朝まで沢山泣いた。萩原の早すぎる死を受け止めることができなかった。
松田は部署異動をお願いするそうだ。絶対に犯人を捕まえるんだ、と。そこから4年間は萩原を思うがあまり死に急いでいるようにしか見えなかった。私はただの一般人で、手伝うことができずもどかしかった。
最後に…ここは松田が殉職した観覧車。自分1人の命と民間人大勢の命を天秤にかけ、俺1人の命で沢山の命が助かるなら…と。
あの日、私はここにいた。ゴンドラに飛び乗る松田。下で叫ぶおそらく同僚の女性。そして、目の前で松田が居たゴンドラが爆発。
一通り彼らとの思い出の場所を巡り、ふらふらとした足取りで目に入った喫茶店に入った。ホットミルクティーを頼み、朝から外にずっといたから冷えた体を温めようと思う。
店内はゆったりとした曲がかかっていて、私以外のお客さんはのんびりコーヒー飲みながら新聞読んでるおじさんだけ。注文してからすぐに来たミルクティーを飲みながら、彼らとの思い出に浸る。
「…ハンカチ使ってください」
アイロンがかけてあるのか、皺がなく綺麗に畳まれたハンカチを渡される。ああ、私は泣いているのか…。貸していただいたハンカチにメイクが付かないように目を押さえる。
「すみません、後日クリーニングして返しに来ます」
ずっと俯いていた顔を上げて伝えると、そこには彼らから送られてきていた写真に写ってた人にとてもよく似た人がいた。彼はテーブルに置いてある写真をちらっと見て、おもむろに口を開いた。
「アイツら、こんなに想われていたんだな…。ああ、このことは内密に。それとハンカチは返さなくていいですよ。またここに来てください」
お店の奥の方から、「安室さーん!ちょっと手伝ってください…!」と女性店員の声がした。「僕はこれで。ごゆっくりどうぞ」と言うと声がした方へ行ってしまった。萩原と松田から聞いていた名前とは違うけど、手元にあった写真をちらっと見てから言った言葉から…きっと彼は写真に写ってた人だ。
警察学校での2人はどうだったんだろうね?いつか…聞きたいな。
***
今日ポアロに、警察学校でハギと松田がよく写真を見せながら話してきた女性が来た。ドリンクを彼女のもとに運んだ時、テーブルの上に置いていた写真が目に入り、認識した。
顔を上げずに俯きながらホットミルクティーを飲み、時折写真を見つめる。暫くすると涙が頬を濡らし始めていた。本人はどうやらわかっていないようで、涙が溢れてテーブルに小さな水たまりを作っていく。見るに耐えられず、声をかけてハンカチを渡すと俯いたままハンカチを受け取り、そっとぬぐい始めた。「すみません、後日クリーニングして返しに来ます」と言い、顔を上げた彼女は俺のことを見て目を見開いた。テーブルに置いてある写真をちらっと見て、つぶやく。
「アイツら、こんなに想われていたんだな…。ああ、このことは内密に。それとハンカチは返さなくていいですよ。またここに来てください」
店の奥から梓さんに呼ばれてしまい彼女のもとを後にしたが、あいつらのことでもう少し話してみたかった。今は無理なことを分かっているが、組織が壊滅したら彼女のもとを訪れてみよう。
2020/11/09