春色アフタヌーン
穏やかな春の陽気を感じるある日のことだ。部屋に掃除機をかけ終わった村正はスイッチを切ると伸びをした。朝回した洗濯物はもう既に干し終わり、外の心地よい風を受けベランダで翻っている。掃除もこれで終わりだし、午前中の家事はこれで完了だな、と村正は一息吐いた。
この春から配属先が変わった響河と一緒に1LDKのアパートに引っ越した村正は期間限定で専業主夫として家の家事を任されている。元から一人暮らしをしていたのもあって家事は苦ではなかったし、それも愛する響河のためとあらばむしろ楽しいとさえ思えた。尻ポケットに入れてあるスマートフォンを取り出すと慣れた手つきで近くのスーパーのネットチラシを検索する。今日の特売品とタイムセールの時間をチェックすると画面を消して再びポケットにスマホをしまった。タイムセールは夕方からでそれまでにこなすべき用事もなく、しばらくゆっくり出来ると思った村正は掃除機を片付けるとソファーに腰掛ける。テレビをつけてみるがどのチャンネルもくだらないバラエティか通販番組ばかりで、村正は嘆息するとテレビの電源を消した。ポケットからスマートフォンを出すとメッセージアプリを立ち上げる。響河宛に今日の特売品から考えられる献立の案をふたつほど書いて送信した。仕事中の響河からすぐ返信がくるとは村正もはなから思っておらず、何とはなしにメッセージを遡る。昨日響河が退勤直後に送ってきたメッセージが目に止まった。
【今日は早く帰れるから夜はゆっくり出来るな】
そのメッセージ通り、いつもより早く帰宅した響河は村正とゆっくり夕食を摂り、その後……。村正は昨晩の情事を思い出して身体が熱くなる。やることもないしな、と誰にともなく言い訳じみた独り言を漏らすとソファーから立ち上がった。
寝室の扉を開けると村正はベッドに倒れ込む。もぞもぞと布団に包まって響河の枕を抱きかかえると残り香がふわりと鼻腔を掠めた。まるで響河の首筋に縋り付いている時のようだと思うと体温がじわりと上昇する。熱の籠った息を吐いて下着ごとズボンを脱ぐとベッドの下に放り投げた。ヘッドボードをまさぐって、指先にぶつかったローションのボトルを掴む。指先にローションを纏わせるとそのまま股座に手を伸ばした。後孔の表面をぬるりと這う感覚に爪先が跳ねる。幾分柔らかさの残ったそこを焦らすように指の腹で撫でるとひくついた入口が指先に吸い付いた。
「ん、っ……」
そろそろと指を埋めると泥濘んだ内壁が収縮する。指先に纏わせたローションを中に馴染ませ、前立腺を引っ掻くと快感で爪先が跳ねた。つぷつぷと指の抽送を繰り返して入口を慣らすと挿入する指を増やす。圧迫感を深呼吸でいなして指を動かすと、妙に甘ったるい声が鼻から抜けて頬の温度が上がった。増やした指を中で動かせば確かに快感を得られるが、響河と身体を重ね合わせているような心地にはあともう一歩及ばない。村正は溜め息をひとつ溢すと抱えていた枕を傍らに戻して、空いた手を上衣の裾に差し入れた。勿体ぶるように脇腹をゆっくり撫でながら胸元へ手を這わせていく。すぐ乳首に触れるなんてことはせずに響河がいつもするように薄い胸板の肉を揉みしだいた。自分の手で揉んだところで感じないはずだが、響河の手が触れているのだと思うと途端に熱が込み上げる。ただの思い込みで熱を上げる自分の身体に浅ましさを覚えるが、真昼間から自慰に耽っている時点でどうでもいいことだなと思い直した。揉んでいる間に期待で立ち上がった乳首を指で押し潰すと肩が跳ねる。
「ぅあ…、あ……っ」
こちらも疎かにするなというように内壁が中に埋めたままの指を締め付けて快楽を強請った。中と乳首を同時に触れると快感が背筋を這い登る。これならあと少しでイけそうだな、と熱っぽい息を吐き出して指を動かそうとした瞬間、玄関のあたりから物音がして身体が強張った。続いて耳に届いた聞き慣れた声に心臓が跳ねる。
「村正ー? いるのか?」
「……響河…!?」
* * *
客先から出たところで時間を確認するとちょうど正午を回ったところだった。事務所に戻る前に何処かで食べて行こうと近くでランチをやっている店の記憶を探る。そこまで考えたところでどうせだったら村正と一緒に昼飯を食べようと鞄の中のスマートフォンを掴んだ。メッセージアプリを開くと村正から今日の夕飯の献立についてのメッセージが来ている。これに関しては合流した後に直接話せばいいかとメッセージでの返信は一旦保留して近くまで来たから一緒にメシ行かない?と送信した。幸いここから事務所に戻る途中に自宅がある。返信を待ちながら俺は電車に乗り込んだ。
結局最寄駅に着くまでの間に村正から返信が来ることはなく、買い物中?一旦家帰るよとメッセージを送ってアパートまでの道を歩く。駅から自宅までは十分程の距離だ。その間に返信が来ればいいのだが……と考えながら歩いているとすぐに家に着いてしまった。鞄から鍵を取り出して玄関を開けると家を出た時のまま、村正の靴が揃えて並べられている。なんだ、家にいたのかと思って耳をそばだてるが物音ひとつしなかった。怪訝に思った俺は村正、と呼びかけながらリビングに入る。
「いるのか?」
リビングは綺麗に整えられたままで村正の姿はなかった。一体どこへ行ったんだと心配していると寝室の方から物音と共に慌てた様子の村正の声が漏れ聞こえてくる。家にいたことが分かってほっとしつつ、村正の身に何かあったのかと蹴破る勢いで寝室のドアを開けると真っ赤な顔をして衣服を整えている村正と目が合った。
「あー……、外回りで近くまで来たから一緒にメシでもって思ったんだけど……」
「響河っ、いやその、なんだ、これはだな……っ」
慌てて言い訳を口にする村正だったが、上気した顔と乱れた着衣で何となく事態を把握する。なるほど、オナニーしてたからメッセージにも無反応だった訳だ。俺はジャケットを脱いで棚の上に置くと村正の肩を押してベッドに押し倒す。組み敷いた村正を見下ろすと村正の顔が強張った。
「っ、響河……? 昼飯を食べに行くんじゃないのか……?」
「いや、メシより村正が食べたくなった」
「な、に言ってるんだっ、仕事中だろう!?」
俺の言葉を聞いた村正は耳まで赤く染めると手足をばたつかせて身体の下から抜け出そうと足掻く。
「大丈夫大丈夫、休憩一時間あるし、外回りから帰るの多少遅れたって誰も気にしないって」
ぐいぐいと肩を押し退けようとする腕を掴んでシーツに縫い止めると唇に噛み付いた。村正の唇は固く閉ざされていると思いきや、引き結ばれていたのは一瞬で待っていたと言うように咥内に招かれる。熱を持った咥内の感覚を愉しみながら舌を絡めると飲み下しきれなかった唾液が村正の唇の端から零れた。顔を離すと村正は視線を逸らしてもごもごと何やら小声で呟く。
「…………るのか……」
「ん?」
首をひねって聞き返すと潤んだ瞳をこちらに向けて今度はちゃんと聞き取れる音量で同じ言葉を口にした。
「……一時間で満足させられるのか…?」
「それはもう」
ネクタイを緩めて引き抜くとベッドの下に投げ捨てる。その様子を黙って見つめていた村正は益々目を潤ませ、生唾をこくりと飲み込んだ。
「精一杯頑張る所存です」
ちゅ、ちゅと音を立てながらキスをすると村正の手を掴んで兆し始めた股座に誘導する。
「ちょっとだけ手でシてくれる?」
「ん……」
村正の細い指が器用にベルトを外して、次いでスラックスの前立てを開いた。その間も俺は戯れるような口付けをしながら村正の身体をまさぐる。ボクサーパンツの生地越しに張り出した陰茎の形を確かめるように掌でなぞられ、局部に直接与えられる快感に思わず腰が震えた。先走りが生地に滲み出してしまう前にパンツをずり下ろしてしまうと間髪入れずに村正の指が陰茎に絡み付く。完全に勃起するまで扱くと仕上げと言うように裏筋を指でなぞられて呻き声が口をついて出た。
「これでいいか?」
「ああ」
身体を起こすと村正のズボンとパンツを脱がせて床に落とす。開いた脚の間に座ると尻たぶを割り開いて普段閉ざされている秘部を露わにさせた。つい先程までオナニーしていたそこはローションに濡れ、てらてらと光を反射させるさまは酷く扇情的だ。割り開いたことで柔らかくなったそこも攣られて口を開け、塞ぐものを待つようにひくつかせていた。
「響河……っ、そんなところ、見なくてもいいだろう……!」
「ちゃんと慣らしてあるか確認しないといけないからな」
「私の方は大丈夫だから、」
「そんなこと言ってすぐ無理する癖に」
ベッドに転がっているローションのボトルを掴んで中身を掌に出すと指に纏わせる。指を二本後孔に宛がうと大した抵抗もなく中に飲み込まれていった。
「あ、あ……! もう、いいのに……っ」
「駄目だって。後で辛くなるのは村正の方だって分かってるだろ」
根元まで埋めた指を引き抜きつつもう一本指を増やしてみるが、村正の言う通りすっかり解れている内壁は三本の指を柔らかく包んでいる。指についたローションを中に塗り込めながら悪戯に前立腺を引っ掻くと村正は喘ぎ声を上げて身体を震わせた。
「い、やだ……、指じゃなくて、早く……!」
息も絶え絶えにそう漏らす村正は本当に限界が近いようで涙を浮かべてこちらに視線を向けている。意地悪をしたかった訳ではないんだが、とは思ったものの、無理しないか案じていたのは本心のためごめんとだけ言い残して指を引き抜いた。
「挿れるぞ?」
切っ先が入り口に触れる感覚にぴくりと肩を震わせると熱の籠った息を吐き出す。その呼吸に合わせてゆっくり腰を押し進めると村正は何かから逃げるように身を捩り始めた。
「あっ、ア、待っ…、響河……! 」
ぎゅうぎゅうと痛みを感じる一歩手前くらいの強さで陰茎を締め付けられ、眉間に皺がよる。当の村正はというと背中をぐっと反らし、目蓋を固く瞑っていた。乱れた呼吸と痙攣している内壁はどう見ても陰茎を中に収めただけで達したことを示している。忙しなく上下する胸郭に指を滑らせると呼吸の合間から小さな喘ぎ声が上がった。
「まだ入れただけなのにもうイったのか?」
「ち、違う…! イってなんかいない……っ」
それを聞いた村正は閉じていた目を見開いてかぶりを振る。大方オナニーしていたのがばれてしまった気恥ずかしさと想定より早く絶頂してしまい示しがつかないせいで素直に頷けないのだろう。そう言うことなら、と舌なめずりをして余韻からか小さく痙攣している下腹部に指を伸ばす。
「そうか。じゃあいっぱい気持ちよくしないとな」
戦慄く腰を掴んで中に埋めた陰茎を引き抜くと村正の身体がぶるりと震えた。きゅうきゅうと締め付ける肉の間を無理矢理掻き分けて奥まで捻じ込めば、肉と肉が擦れる感覚が気持ち良くて息が上がる。ゆるゆると腰を動かすと村正の口から悲鳴にも似た嬌声が零れた。
「ぅああ…、こ、うが……っ、ん、あ…!」
先端で前立腺を突き上げるとざわりと中が蠢いて陰茎を咥え込む。敏感になっている肉襞を蹂躙され、途切れることなく与えられる快感に村正はかぶりを振って耐えようとしていた。髪の毛がシーツに当たるぱさぱさという音を聞きながら抽送を繰り返す。達したばかりではつらいかもしれないが時間が限られている以上、手っ取り早く満足させるにはこうする他ない。力なくシーツの上に投げ出された手を取ってその指先に口付けしながら奥に腰を打ち付けた。
「イったばっかで苦しいかもしれないが、もう少し頑張れるか?」
「イ、ってない、と言っている、だろう……!」
この期に及んでまだ認めようとしない村正の姿に思わず笑いが零れる。
「素直じゃない村正も新鮮で可愛いな。いつもの村正も可愛いが」
「〜〜〜〜っ! もう、さっさとイって仕事に戻れ……っ!」
思いもよらない言葉に村正は目を白黒させると顔を背けて枕に埋めた。髪の隙間から見える耳が真っ赤に染まっているのが見えて、唇の端が吊り上がるのが自分でもよく分かる。もう少し素直じゃない村正を堪能したいが、腕時計の文字盤を見るとそろそろ時間が押し迫っていた。身体を倒すと中に収めている陰茎が最奥に当たったのか村正の肩が跳ねる。
「村正、こっち向いて?」
どうやら素直ではないのは言葉だけのようで、村正は素直にこちらを向いて視線を合わせた。薄く開かれた唇にキスを落とすと続きを強請るように目を閉じ首に腕が回される。深く口付けながら小刻みに腰を動かすと飲み下しきれなかった嬌声が唇の隙間から漏れた。最奥を穿つたびに柔らかく吸い付いてくる肉襞にこちらもそろそろ限界が近いと抽送のスピードを速める。
「ん、ああ、あ…っ、またイく…! こうが……っ」
「俺も……っ、一緒にな……」
膝裏を掴んで腰を浮かせると最奥に切っ先を突き立てた。敏感とも言えるそこを無理矢理暴かれた村正はひゅ、と息を呑む。吐精感に身を任せ繰り返し何度も最奥を抉ると早く中に欲しいというように先端を包む肉壁が吸い付くように動いて息が詰まった。体重をかけて最奥に陰茎を捻じ込むとそのまま精液をぶちまける。
「ヒ、ぁ……* 奥、熱……っ*」
うっとりとそう呟く村正の腹の上にも精液が白く飛んでいた。凝っていた息を吐き出して陰茎を引き抜くと新たに与えられた刺激に村正の身体がぶるりと震える。ひくつく後孔から先程出した精液がごぽりと溢れるのを見て生唾を飲み込んだ。続きをしたいのは山々だが時間が差し迫っている。慌ただしく後処理をしてジャケットを羽織るとまだくったりとベッドに身体を沈ませたままの村正の頬に指を這わせた。
「続きはまた夜だな。……今度はいっぱい甘やかすから」
「〜〜〜〜、早く仕事に行け!」
照れ隠しに投げ付けられた枕をさっと躱して玄関に向かう。後ろからまっすぐ帰って来いという小さい声が聞こえて頬が緩んだ。このままでは示しがつかないな、と表情を引き締めつつも俺の足取りはとても軽いものだった。
NTR村正は普段もっと素直なのに、この時ばかりはオナニーバレてしまった手前素直になれないのが可愛い
響河が帰宅したらスーツ姿でセックスせがむ村正もいつか書きたいです