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チリリン・・・ チリン・・・ リリ・・・
静かな森の中で響く涼やかでか細い音。
それに併せて聞こえてくるのは、小さな小さな裸足の足音。
ずるりずるりと片足を引きずりながらも、まるで何かから逃れるように一心不乱に前を睨みつけて、僅かばかり走る様子で幼い少女は息を弾ませていた。
止めどなく血の垂れる足はまるで言うことを聞かない。
打たれた身体中が悲鳴をあげている。
こんなにも空気を求めているのに、なかなかどうして十分に息が吸えない。
がさり。
近くで木の葉が揺れる音がしてびくりと肩が揺れる。恐怖に足が止まった。
即座に音がした方に視線を向ける。が、そこには予想していた敵の姿は見えず、ただただ黒い塊と化した茂みがあるばかり。その向こうには、果たして何が居るのか。
何かに―――誰かに見つからないように息を潜める。か細い吐息が僅かな風の音にかき消える。
やがてただの風の悪戯と判断した少女は、再び覚束ない足取りで歩を進める。チリリン、また音が揺れた。
長い獣道の先は木々が広げる枝のせいで月の光も疎らとなり、暗闇と言って良いほど暗かった。それでも僅かばかり漏れる月光を頼りに歩き続ければ、ふと、月とは違う色に気づく。
目の前の道の先、淡く柔らかな桃色の光が優しく彼女を手招いている。
それに気づいた少女は、漸くほっと安堵した表情を零した。彼女の唯一の友人は今しがた彼女が逃げてきた場所と違って無事らしい。
知っている明かりに希望を得た彼女は、最期の力を振り絞って歩を進める。あと少し。あと少し。
開けた場所に、それは在った。
永い年月、森を抜けた先にある小さな村を見守り、そして村人たちに大切にされてきたその大樹は、月の光を浴びながら桃色の花弁を揺らして煌々と輝いている。
少女はその大樹を見上げ、最早吐息ともいえる声を漏らして微笑んだ。そうして彼女にとって唯一の友人にゆっくりと寄り添って、いつものように根元に穿たれた小さな洞に潜り込む。
力尽き、ごろりと寝転んだ彼女に合わせてチリンと音が転がる。身体の下の土の匂いに、少しだけ鉄臭さが混じった。
まるでこの樹に守られているかのような錯覚に、けれど少女はどうしようもない程安心していた。
痛くて、寒くて、悲しくて、寂しくて、孤独と恐怖に強張った心が最後に求めた暖かな場所。
最期≠ノ、この場所に来られてよかった。
天井を見上げ寝転ぶ少女の瞼がゆっくりと閉じていく。零れた雫は、一体どんな感情を乗せていたのだろうか。
口元に残した少女の笑みを静かに抱きしめるその大樹は、涙の代わりに花弁を散らした。少女の首から下げられた鈴がころりと転がる。その音を最後に、少女のすべての音が、止まった。
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