ただ甘く、切ない

例えば、この世界に巨人が存在しなければあなたを失うことに怯えながら眠る夜はなくなるのに。もし、私に戦う力があるならば、私があなたを守るのに。そんなことをぽろりと口に出してしまう私は、なんて愚かなのだろう。


「例えばとか、もし、とか、そんな理想ばかり言ってんじゃねぇよ。」


そんな私の愚かな言葉を無視するでもなく、眉間に皺を寄せながら、リヴァイは冷たく言い放った。


「だけど…」


考えずにはいられないのだ。明るい未来が欲しかった。豊かな生活を送りたいわけではない。ただ、明日も隣にいられるのだという保証が欲しい。待っていることしか出来ない自分がもどかしくてたまらないのだ。


「この世界に巨人は存在する。存在する限り俺は死と隣合わせだ。そして、お前は弱い。巨人に出くわしたら、直ぐに喰われるだろう。それは変わらない事実だ。」

「わかってる。」


私は兵士でない。なんの力もないただの民間人だ。それに、巨人が存在しないなんて有り得ないことも理解はしている。嫌気が差す。こうやって、どうしようもないことを考えることしか出来ない自分の弱さに。そう考えれば、段々と涙がこみ上げてくる。折角、壁外調査から無事帰ってきてくれたのに、どうして笑顔でいられないのだろう。


「側に居てやれなくて、心配ばかりかけて、すまないとは思っている。だが、俺はこれからも戦い続ける。命を賭して戦った仲間の意思を俺が継がなくてどうする。」

「それもわかってる。」


そんな人だからこそ、私は、惹かれたのだ。


「ナマエ、お前は弱くて構わない。俺に守られていれば良い。」


普段言わないような言葉を口にするリヴァイに驚いて、彼の顔を見ると、真剣な眼差しで私を見つめていた。


「人類のために、なんて大逸れたことばかり考えられるような出来た人間じゃねぇんだよ。俺は。いつだって、お前が幸せに生きられる世界を作れりゃ良と思っている。」

「リヴァイがいればそれでいいよ、私。」

「なら、俺は死なねぇよ。」


不意に私の手を掴み、引き寄せ、彼の胸に顔を埋める形で抱き締められた。彼の鼓動が私をひどく安心させる。


「ナマエ、必ずお前の元に戻る。根拠はない。だが、信じろ。」


そんな約束は、いつか破られてしまうのだと心のどこかではわかっている。きっと彼は私を置いていってしまうだろう。それでも今は、その言葉を信じていたかった。

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