「ねぇ……アルマン………行かないで!!」
誰だろう。女性?――それも若い感じがする。
宿に帰宅した時に、睡魔の波がちょうどいい感じに訪れたので
私はまだ机に突っ伏したままのアレンと神田を横目に
一度大きな欠伸をした後、彼らのスペースの分の床まで陣取って眠りについた。
ふわふわと漂う夢心地の中で、誰かの声が入ってくる。
その声は若い女性の声で、何度も何度も恋人と思われる男性の名をしきりに呼んでいる。
その声は、悲痛に掠れ……時々嗚咽が混じる事から恐らく泣いている。
「アルマン……私を一人にしないで!!」
誰?――ごめんなさい。私はその人ではないんだけど。
何となく申し訳なくなって謝ると、次第にバァーっと頭に光景が、胸を切り裂くような
女の気持ちが否応なしに入ってきて、思わず息を飲んだ。
感情の波が心からあふれ出るほどの女性の気持ちが、私とリンクする。
悲しい。ひどい。行かないで。寂しい。どうして。分からない。
そうして、唇を出た自分の声に重なるように女のと思われる台詞が口からこぼれた。
「私を……もう愛してはいないの?」
自分の声にハッと我に返って焦るも、視線を落とした床板に
うつる大きな男性の影に気がつき、ゆっくりと確かめるように視線をあげる。
ちょうど逆光になっていて分からないが金髪で若い男が、手を伸ばす女を
憐れんでいるのか、見下ろしている。
「ごめんよ。――だが、僕はブリテンの王になるべき男なんだ!!」
そう言って去ろうと背を向けた男に、今度は私の意思で
待ってと叫びながら、頬を伝う涙の冷たさに気づきゆっくりと目を覚ました。
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彷徨いアリス