誘拐

「ん……あれ?――ここっ……」

何だか頭がぼーっとする。その感覚は寝起きの覚醒(かくせい)し出した感じに近い。
思わず涎(よだれ)が垂(た)れた口元をぬぐって、目をシパシパすると目の前にオドオドとした少女の姿が飛び込んできた。

「――良かった」

小さな安堵(あんど)の声が聞こえ、ようやく脳が強制的に覚醒させられる。
丸い目がおっこちそうな程カッと見開(みひら)かれると、目の前の少女が小さく悲鳴(ひめい)を上げた。
そんな少女に驚き、眉を寄せると……思い出したように叫ぶ。


「こっ……ここはどこですか?――それに、私っ!!うぅっ……」

急に動いたせいか、ずきっと頭が痛んでうずくまった。
目が光になれてくると見えるのは廃墟(はいきょ)らしき建物と少女。それと………。


「くっ鎖(くさり)……?」

いくらお仕置(しお)き調教(ちょうきょう)系のボイスCDが好きだからって、自分に生でやりたいと思う程……まだおかしくない。

いや、こんな状況でもボケられたり、そんな物聞いてニヤケるあたり、私はだいぶおかしいけど………。

ちょっと、ボケるのはやめて整理してみると……確か、帰り道で途切れた記憶………そしてこの鎖に繋(つな)がる。
方程式(ほうていしき)をすっ飛ばしたような難問回答に頭がこんがらがった。

焦(あせ)り出すと、どんどん心臓の音がうるさくなる。そのたびに思考がバラバラに散らばって
呼吸も意識しないと止まってしまいそうな程に苦しくなった。

パニックになるのを、目の前の少女に見られているという理性(りせい)だけで抑える。



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彷徨いアリス