「ここが、夢にまで見た雄英高校」
思わず口に出し、呆けた顔をしながら校舎を見つめた。
夢に見た、だけではなく、かつて、妄想の果てに庭に出現させてしまったことを思い出し、もう一度校舎を見つめる。やはり実物に勝るものはない。
校舎を観察しながら試験会場に向かって歩き出す。習慣である観察動作をすることによって雄英に来たことへの興奮も収まっていき、今度は周りの受験生たちの観察を始めた。
直前まで頑張ろうと参考書を見ながら歩く者、緊張のあまり腹を抑えながら歩く者、自信の無さからだろうか、背を丸めながら歩く者、反対に、自信にあふれてふんぞり返って歩く者、または、平然と歩く者、様々である。
自分は周りにどんな人として見えているのだろうか。いや、周りを気にする余裕があるやつはともかく、緊張のあまり周りを気にしすぎている奴から見れば、平然としているように見えるだろうか。
まあしかし、”人事を尽くして天命を待つ”とはよく言ったものだと思う。少なくとも、今から試験開始の数分間で試験の結果が左右されるのならそれまでのこと。実技試験は不確定要素が多そうなのでわからないが、筆記試験については、もう決まっているようなものではないかと思う。故に、参考書を見ながら歩く者の横を通り過ぎながら思う。その数ページの努力で運命が変わるなんて、物語の主人公くらいよ、と。
試験会場についた。いつも通り問題を解くだけだ。
筆記試験が終わり、実技試験の説明が始まった。
プレゼントマイクが試験の説明を始める。
(「本物だ…」)
思わず声に出しそうになりながらプレゼントマイクを見つめる。
”本物”のヒーローに会える機会などそうあるものではなく、興奮して思考が暴走しそうになる。
ある受験生が質問をする声が耳に入り、正気に戻った。質問をしている声をBGMに慌てて配布された資料を見返す。
(「1〜3ポイントの仮想敵、もといロボットの破壊か。先の質問の通り、0ポイントはお邪魔虫。まあロボットなら楽なものね。」)
実際に会敵しなければわからないが、要するに機械を壊せば良いということだ。まあそれなら”想像の範囲内”である。周りが実技試験会場に向かうのに合わせて移動をしつつ、受験生を観察する。
筆記試験では大した差がつかない。実際上位層の中で、さらに差がつくような問題などなかった。つまり、実技試験の結果次第ということだ。実技試験の会場はいくつかのブロックに分けられる。とはいえ、かなりの人数が一つの会場で、限られたロボットの破壊数を競うのだ。速さと戦闘力がものをいう勝負になる。実技試験会場にいくにあたり、筆記試験が思うように行かなかったのだろうか、既に戦意喪失気味に歩く者、個性の都合上だろう、実技に自信が無さそうな者、または、緊張で歩みが遅い者などは良い。しかし、問題は「筆記試験を楽々クリアし、戦闘に自信がある者」だ。ちょうど斜め左に歩いている、アイボリーでつんつんした頭の男子などその典型だ。同じ会場だったら面倒である。
視界から彼を外し、自らの試験会場に向かう。
まあ、ここまでは物語の前座。戦闘シーンこそ本番である。盛り上がる物語にしなくては。
『ハイ、スタート』
放送で言われたらすぐに飛び出した。この戦闘はラスボスに向かう長期戦ではなくラスボス前の前哨戦。まだ”主人公”が出てくる場面ではない。そういう場面。そういう物語。さながら私は、電気系技で勇者の前を蹴散らす騎士あたり。
『目標発見、ぶっころ』
「雑魚は弱点突かれて一撃ワンパン。さっさとショートしろ」
試験開始ともに個性で右手に出現させた、バチバチしている剣をロボットのつなぎ目に向かって振りかざした。黒い煙を上げて倒れていくのを横目に、”騎士”の速さで駆けていく。まあ、騎士なら普通の人より速く走れる風魔法とかありそうじゃん?馬を出せたら完璧なんだけど、まあ想像する規模が大きくて疲れるからそれはなし。
そんな感じで剣を振り回し、人より何倍も速いスピードで駆けまわる。騎士なので女の子が困っていたら助けるのも忘れない。可愛い女の子にあんなロボット向けるなよ。ロボットの前に立ち尽くす女の子の目の前に居たロボットを薙ぎ払い女の子を道の端まで連れて行ったとき、地面が揺れた。
「うわ…なんじゃあれ」
ラスボス降臨、あれが0ポイントロボットか。とりあえず、腰が抜けてしまったらしい目の前の女の子を運びつつ、想像する。物語は佳境、”常人では到底かなわないようなラスボス”が現れる。そこに勇者が現れ、一閃、ラスボスは咆哮の末、砂と化すのだった…。こんなところだろうか。女の子を安全な場所まで下ろし、ラスボスの御前まで駆ける。そこで見たのは、ひとりの緑色の頭の男の子が0ポイントロボットに向かっていく姿だった。
「先を越されたというかなんというか。あれが”本物”の主人公ってやつか…!」
さながら”物語”の勇者、主人公、”ヒーロー”といったところだろうか。男の子が凄まじいパワーでロボットを破壊するのを見て、興奮しながらふと気づく。めっちゃケガしてるじゃんあの子。しかも落ちてくる、あっ、側にいた女の子の個性でちゃんと降りてきた。彼女がヒロインかな?
そこで無情にも試験終了のブザーが鳴り響く。男の子が話しているところを見ると、彼は0ポイント敵を倒す力を持ちながらも、一体も雑魚を倒せていないらしい。どういうことだ。
まあ何にせよ、物語の終幕、。勇者の手当てを忘れてはいけない。もちろんヒロインも。それには回復役が必要。そろそろ私も限界だが。
「二人とも大丈夫?少しだけですが回復いたしましょうか?」
緑の頭のぼろぼろにケガした男の子とほっぺがキュートだが青い顔した女の子に声をかける。
二人は動ける力もあまりないらしく、遠慮がちに回復を頼まれた。”ヒーラー”になった時に出現した杖を二人に向けて、動かした。
「わあ…!もうほとんど痛くない、ありがとう!」
二人に感謝を述べられる。女の子は青い顔から一転、キラキラした顔を向けられるが、男の子は青い顔だ。試験の結果の所為だろうか。あまり余計なことを喋らない方が良いだろう、と思い二人にリカバリーガールの元へ一応向かうように告げて、二人と別れた。
しばらく歩き、振り返ってリカバリーガールの元へ向かう二人の姿を見ながら思う。
ああ、願わくば主人公とヒロインに祝福を。
思わず口に出し、呆けた顔をしながら校舎を見つめた。
夢に見た、だけではなく、かつて、妄想の果てに庭に出現させてしまったことを思い出し、もう一度校舎を見つめる。やはり実物に勝るものはない。
校舎を観察しながら試験会場に向かって歩き出す。習慣である観察動作をすることによって雄英に来たことへの興奮も収まっていき、今度は周りの受験生たちの観察を始めた。
直前まで頑張ろうと参考書を見ながら歩く者、緊張のあまり腹を抑えながら歩く者、自信の無さからだろうか、背を丸めながら歩く者、反対に、自信にあふれてふんぞり返って歩く者、または、平然と歩く者、様々である。
自分は周りにどんな人として見えているのだろうか。いや、周りを気にする余裕があるやつはともかく、緊張のあまり周りを気にしすぎている奴から見れば、平然としているように見えるだろうか。
まあしかし、”人事を尽くして天命を待つ”とはよく言ったものだと思う。少なくとも、今から試験開始の数分間で試験の結果が左右されるのならそれまでのこと。実技試験は不確定要素が多そうなのでわからないが、筆記試験については、もう決まっているようなものではないかと思う。故に、参考書を見ながら歩く者の横を通り過ぎながら思う。その数ページの努力で運命が変わるなんて、物語の主人公くらいよ、と。
試験会場についた。いつも通り問題を解くだけだ。
筆記試験が終わり、実技試験の説明が始まった。
プレゼントマイクが試験の説明を始める。
(「本物だ…」)
思わず声に出しそうになりながらプレゼントマイクを見つめる。
”本物”のヒーローに会える機会などそうあるものではなく、興奮して思考が暴走しそうになる。
ある受験生が質問をする声が耳に入り、正気に戻った。質問をしている声をBGMに慌てて配布された資料を見返す。
(「1〜3ポイントの仮想敵、もといロボットの破壊か。先の質問の通り、0ポイントはお邪魔虫。まあロボットなら楽なものね。」)
実際に会敵しなければわからないが、要するに機械を壊せば良いということだ。まあそれなら”想像の範囲内”である。周りが実技試験会場に向かうのに合わせて移動をしつつ、受験生を観察する。
筆記試験では大した差がつかない。実際上位層の中で、さらに差がつくような問題などなかった。つまり、実技試験の結果次第ということだ。実技試験の会場はいくつかのブロックに分けられる。とはいえ、かなりの人数が一つの会場で、限られたロボットの破壊数を競うのだ。速さと戦闘力がものをいう勝負になる。実技試験会場にいくにあたり、筆記試験が思うように行かなかったのだろうか、既に戦意喪失気味に歩く者、個性の都合上だろう、実技に自信が無さそうな者、または、緊張で歩みが遅い者などは良い。しかし、問題は「筆記試験を楽々クリアし、戦闘に自信がある者」だ。ちょうど斜め左に歩いている、アイボリーでつんつんした頭の男子などその典型だ。同じ会場だったら面倒である。
視界から彼を外し、自らの試験会場に向かう。
まあ、ここまでは物語の前座。戦闘シーンこそ本番である。盛り上がる物語にしなくては。
『ハイ、スタート』
放送で言われたらすぐに飛び出した。この戦闘はラスボスに向かう長期戦ではなくラスボス前の前哨戦。まだ”主人公”が出てくる場面ではない。そういう場面。そういう物語。さながら私は、電気系技で勇者の前を蹴散らす騎士あたり。
『目標発見、ぶっころ』
「雑魚は弱点突かれて一撃ワンパン。さっさとショートしろ」
試験開始ともに個性で右手に出現させた、バチバチしている剣をロボットのつなぎ目に向かって振りかざした。黒い煙を上げて倒れていくのを横目に、”騎士”の速さで駆けていく。まあ、騎士なら普通の人より速く走れる風魔法とかありそうじゃん?馬を出せたら完璧なんだけど、まあ想像する規模が大きくて疲れるからそれはなし。
そんな感じで剣を振り回し、人より何倍も速いスピードで駆けまわる。騎士なので女の子が困っていたら助けるのも忘れない。可愛い女の子にあんなロボット向けるなよ。ロボットの前に立ち尽くす女の子の目の前に居たロボットを薙ぎ払い女の子を道の端まで連れて行ったとき、地面が揺れた。
「うわ…なんじゃあれ」
ラスボス降臨、あれが0ポイントロボットか。とりあえず、腰が抜けてしまったらしい目の前の女の子を運びつつ、想像する。物語は佳境、”常人では到底かなわないようなラスボス”が現れる。そこに勇者が現れ、一閃、ラスボスは咆哮の末、砂と化すのだった…。こんなところだろうか。女の子を安全な場所まで下ろし、ラスボスの御前まで駆ける。そこで見たのは、ひとりの緑色の頭の男の子が0ポイントロボットに向かっていく姿だった。
「先を越されたというかなんというか。あれが”本物”の主人公ってやつか…!」
さながら”物語”の勇者、主人公、”ヒーロー”といったところだろうか。男の子が凄まじいパワーでロボットを破壊するのを見て、興奮しながらふと気づく。めっちゃケガしてるじゃんあの子。しかも落ちてくる、あっ、側にいた女の子の個性でちゃんと降りてきた。彼女がヒロインかな?
そこで無情にも試験終了のブザーが鳴り響く。男の子が話しているところを見ると、彼は0ポイント敵を倒す力を持ちながらも、一体も雑魚を倒せていないらしい。どういうことだ。
まあ何にせよ、物語の終幕、。勇者の手当てを忘れてはいけない。もちろんヒロインも。それには回復役が必要。そろそろ私も限界だが。
「二人とも大丈夫?少しだけですが回復いたしましょうか?」
緑の頭のぼろぼろにケガした男の子とほっぺがキュートだが青い顔した女の子に声をかける。
二人は動ける力もあまりないらしく、遠慮がちに回復を頼まれた。”ヒーラー”になった時に出現した杖を二人に向けて、動かした。
「わあ…!もうほとんど痛くない、ありがとう!」
二人に感謝を述べられる。女の子は青い顔から一転、キラキラした顔を向けられるが、男の子は青い顔だ。試験の結果の所為だろうか。あまり余計なことを喋らない方が良いだろう、と思い二人にリカバリーガールの元へ一応向かうように告げて、二人と別れた。
しばらく歩き、振り返ってリカバリーガールの元へ向かう二人の姿を見ながら思う。
ああ、願わくば主人公とヒロインに祝福を。