僕の一日
※ATTENTION※このお話はドッペルゲンガー20話の少し前のお話になります。まだ20話までお読みになってない方はそちらをご覧になってからお読み下さい。
僕が別世界からやって来たと分かってから、ゼロくんは僕を自分のお家へと招待してくれた。最初は安室さんと呼んでいた僕だったが、同じ顔にそう言われるのも変だと言うことでなんやかんやあってゼロくんと呼ぶようになったのである。ちなみにゼロくんは僕の事を秋良と呼び捨てである。…あれ、僕一応年上…と思ったが余計な事は言うまいと口を噤んだ。
話がずれたが、なんで同じ家に住むことになったかというと、なんでも同じ顔しているなら一緒にいた方が好都合だとかで。まあ同じ顔した人間がその辺をうろうろしてたらたまったもんじゃないもんね。
家を提供する代わりに、僕は家事全般をやるという事になった。元々家事は得意なので何の問題もなく了承した。ただ家にいるだけなんて暇すぎて干からびてしまうし。そんな感じでお互い合意。
仕事人間であるゼロくんは毎日朝早くに出て行き、夜遅くに帰ってくる。なので僕はその間に食事を用意し、昼間に掃除や買い出しなどをするのが日課となった。最早主夫である。
前日にゼロくんの予定を聞いておき、ゼロくんが起きてくる前に食事の支度をする。ゼロくんから貰った携帯電話のアラームで目覚めた僕は、自分の支度をし終わってから今日も彼のために朝ごはんを用意する事にした。
トントントン…と規則正しく包丁でネギを刻む。味噌汁用にネギを刻んでいたら、のしりと背中に重みを感じた。
「…いいにおいする」
肩越しに顔をひょいと出すのは、まだどこか寝ぼけ眼のゼロくん。ワイシャツはボタンも止めずただ羽織っているだけで、スラックスに至ってはただベルトを通してるだけでしっかりと履いていない。彼は朝にあまり強くはないみたいで、朝はこんな感じで結構ぼやーっとしている事が多い。
「おはよう、ゼロくん」
「…おはよ」
くあっと欠伸するゼロくん。まだまだ眠たそうだ。
「んー…今日の朝ごはんは?」
「ご飯とワカメと豆腐のお味噌汁と、焼き魚とほうれん草のおひたし」
そう言えば、きょとりとした顔のまま僕の手元を見詰めた。
「和食だ」
「うん。…苦手だった?」
「ううん、すき」
久々に食べるなと思って。と呟くゼロくん。…確かに、一人暮らししてたら朝忙しくてパンとか簡単な物になりがちだ。きっとゼロくんもそうだったのだろう。物珍しそうに僕が作る様子を背中越しで見詰めている。
「ふふ、もう少しで出来上がるから早く支度しといで」
ポンポンと寝癖のある頭を軽く撫でてあげると、ゼロくんは目を細めてから「うん」とだけ言って洗面所の方へ向かっていった。
洗面所から出てきたゼロくんは、さっきよりはシャキッとしたような顔でしっかりとスーツに身を包んでいた。
「じゃあご飯にしよっか」
「うん」
食卓テーブルに向かい合う形で座ると、お互い手を合わせていただきますをする。それから目の前の食事に手を付け始めた。
「味はどう?」
味噌汁を飲んでるゼロくんにそう声を掛ける。
「美味いよ。秋良は料理上手だな」
「えへへ、良かった。ありがとう」
ゼロくんに褒めてもらって嬉しくてはにかむ。出汁からしっかりとった味噌汁はやっぱり手間がかかってる分美味しく感じるものだ。
そんな他愛のない話をしながら朝ごはんを食べるのが僕たちの一日の始まり。
「はい、コーヒー」
「ありがとう」
食べ終わって食後のコーヒーをゼロくんに出し、一息ついて貰ってる間に僕は食器を片付ける。それから暫くするとゼロくんの出勤の時間になるので、玄関までお見送りをする。
「それじゃあ行ってきます」
「行ってらっしゃい、ゼロくん。気を付けてね」
手を振ってお見送り。ゼロくんが出て行ったのを確認してから、部屋の掃除を開始する。さあ今日も頑張るぞー。
ーーーこれが、僕の一日なのである。