オンリーワン


誰よりも自信があって、誰よりも頂点に固執する男。それが鏑木一差という男を説明するにあたって相応しいと誰もが認めるだろう。そんな彼との腐れ縁はどこまで続くのか。高校まで一緒になってしまったのだ。

「見ろ。IH出場者のみ着ることが許されるこのジャージを!」

クラスメイトに高々と見せつける黄色と白を交えたジャージ。去年1番早くゴールに届けた先輩方の重さを分かっているのかいないのか(絶対わかってない)。

クラスの後ろで賑やかな集団とは少し距離を置いたところから幼馴染の後ろ姿を眺めていた。

鏑木は自分を称賛の目で見つめる集団の中に名前がいない事に気づく。自分の席について頬杖をついている名前の気怠げな瞳と目が合った。

「名前!!」

「うわっ、近」

流石の瞬発力。一瞬で距離を詰めた。先ほど注目を浴びてた人間が正面に立ちはだかっている。

「名前」

「聞こえてるって。IH出るんだってね、おめでと」

段竹は予選で鏑木をアシストしてインハイメンバーから溢れてしまったのだろう、今年は。彼がそれを望んだはずだから、この結果に反論など何もない。

「嬉しくないのかよ」

「嬉しいけど、当たり前だと思ってる。だって強いもの鏑木は」

もちろん段竹も。って言葉はきっと鏑木には聞こえていない。2人を古くから知ってるからこそ、彼らがレギュラーに選ばれると疑いもしていなかった。

「当然だとしても名前に1番喜んで欲しいんだ」

「別に自転車ロードガチ勢な訳じゃないし…」

我儘を貫き通してきた鏑木、長男として何かと我慢や譲ることが染みついた段竹、中心から一歩離れたところから傍観する名前。3人は重なることのない性格で共通点など何もない。特に鏑木と名前は対極に位置していた。正直に言うと、彼を面倒だと思ったことが数え切れないほどある。

「そして名前に1番褒めて欲しい」

「飼い犬の思考の話してる?」

「段竹、コイツ話通じないぞ。アホだ」

「それはお前だ一差」

私に執着する必要よりも不特定多数に自分の強さを知らしめるのが好きだとばかり思っていた。

チラリと時計と見るとあと13分…くらいか、昼休憩が終わり、5限目が始まろとしている。

「名前にとって俺様という存在が1番じゃないと嫌だと言ってるんだっ!」

シーン…と教室が静まった。元々目立つタイプだというのに。声も通りやすくて尚且つデカいとうのに。今この教室にいる人たち皆に聞こえてしまった。かなりの視線を感じ名前は頭を抱える。

「あー、つまり、俺だけ見ろってことね。善処する」

「ああ。あと、善処ってなんだ」

「頭痛い…」

後ろから告白…?などと言った浮ついたヒソヒソ話が飛び交っている。段竹憐みの目で見つめるなら助けて。ポジション交代して、と睨む。

「はぁ…降参。YESって言ったのよ」

その言葉に満足そうな表情へとみるみる変化していく。

「これでフェアプレーだ!俺は名前しか見えてねぇから!」

「段竹、今からコイツ殺そう。死んだらワンチャン治るかもしれない」

「名前も気持ちはわかるが落ち着け」

現在、この2人は付き合ってはいない。感情をそのまま言葉にする一差に名前を彼女にするという段階はまだ高すぎた。まだ思いついてもいないのだろう。

ただ鏑木はこれだけは知っている。自分にとって名前は特別で、誰にも渡さない存在であると言う事を。