▼璃悠出会い
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見かけない、足取りの覚束ない小さな背中が人通りのない休日の校内へ向かう。
馬鹿に大きな校舎、ついでに校長の趣味で構成されたはた迷惑なギミックがそこら中に点在するそこへ、ふらふらと千鳥足を極めている人間が入り込むのを見送るほど冷徹にはなれなかった。
近付いて軽く肩を叩くと、形容しがたい間抜けな声を上げてその子は振り返る。
「あの、ごめんね。何かふらふらしてるから大丈夫かなと思って」
「………」
「…えっと」
大丈夫じゃなさそうだ。
黙ったまま半ば虚ろな色で私を見上げるその子に、返事を待たずにそう結論付けた。
やはり顔を見ても見覚えはなくて、視線を落とすと首から入構許可証がぶら下げられているのが目に入り漸く外部の人間だと知る。
「あぁ外部の方なんですね。誰かの御親族ですか?もしよければ案内して…」
「…貴女」
「はい?」
ぽつりと零した彼女を見つめ返せば、それまで虚ろだった目が徐々に覚醒しぱちりとした丸い黒耀と視線がぶつかった。
少し気弱そうだけれど可愛い子だ。そう胸中で感心する暇もなく、気付けば彼女が私の手を両手で握り締める。
「へ?」
「とっても美人さんですね!」
「は?」
「シンプルな着こなしがとってもお似合いです、そのストールは流行のビビッドですね素敵です」
「あ、うん…?」
さっきのぽやっとした表情はどこへ消えたのか、些か興奮気味に手を握る彼女に思考がついて行かず。
ほぼ疑問系の相槌で返すけれど、気にした様子もなく彼女は話し続ける。
「スタイルが良いから全体的に辛口な今の感じは勿論素敵だけど、少しフェミニン系を取り入れると可愛いかも…肩は華奢だしシフォン系かな…でも折角綺麗だしライン出したいな…」
「…えーと、あの?」
「…あ。あああすみませんあの、つい夢中になってしまいまして…!」
「いえ…それより貴女、もしかして望月悠さんかな」
「え!?え、えっと、そうですけど…どうして」
至極申し訳無さそうに、そして不思議そうに首を傾げる彼女を見つめながら。
あぁ本当に噂通りの、危なっかしくて可愛らしい子だなぁとあふれ出る苦笑を抑えきれなかった。
某氏による「とにかく危なっかしくて、ぽやっとしてて、大体寝不足で頭回ってないし足取りの怪しい、んで服に関する時だけ人の変わる奴」の説明が的確すぎて初対面でも一発で名前当てられる系。
璃悠も可愛い。
2017/07/02
うたプリ