▼シリアスを
気取りたかっただけ
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「あるじさまは、このいくさがおわったらどうするんですか?」
「…うん?」
肩越しに囁かれた唐突な問いに、思わず目を瞬かせて間抜けな声を上げた。
「……私?」
「はい、あるじさまです」
無邪気、とは少し違うものを含んだ笑みを浮かべた今剣に、僅かに思案を巡らせる。
…誰にも知られていない、筈だ。けれど屡々、そう思っているのは私だけなのではないかと思うことがある。
特にこの小さくも大人びた、千年を生きる短刀にはどうにも筒抜けのような気がしてならないのだ。
― 私に、戦の後という未来は与えられていないことが。
「…そうだなぁ、あんまり考えたことないや」
誤魔化すように笑ってみたけれど、宝石のような色の綺麗な目はしっかりと私を見つめて逸らさない。
この目を前にするとどうにも抗うと気が殺がれてしまう、というか、抗う必要があるのかと思い始めてしまうのだから困ったものだ。
けれどこの件ばかりは素直に口を割る訳にもいかないので、下手くそな愛想笑いを続けておいた。
「なんでもいいんですよ、やりたいこととかないんですか?」
「えー…?割と現状に満足してるからあんまり分からないや」
いつだったか、こんのすけに釘を刺されたことを思い出す。
審神者の、特に霊力の強い者は迂闊に受け答えをしてはならない。言霊が意図せぬ結果を呼ぶことになりかねない、相手が神の眷属であるならば尚のこと、と。
…多分今、そういう駆け引きの上にいるのだろう。相手が相手なだけにあまり緊張感はないのだが。
「ぼくたちとどこかいきたいとか、なにがたべたいとか、そんなのもないんですか?」
「戦が終わらなくても、貴方達と一緒にしたいことはやれるから。今が十分幸せだよ」
キーワードは、『戦が終わった後』と『ぼくたちといっしょに』。
一度でもその二つを満たすことを望んでしまえば、きっと彼らはもう躊躇しない。
躊躇なく、私の望みを叶える為になんだってしてしまうのだろう。
「…なにかおもいついたらいってくださいね。あるじさまののぞみなら、きっとぼくたちがかなえてあげます」
「……ふふ、ありがとう。今剣」
ごめんね。
例え終わりが見えていても、まだ私には君達の手に縋る覚悟がない。
シリアス気取ってみたかっただけ。
多分実際は
「なんでですか!のぞめばかくしてあげるのにあるじさまぼくたちといっしょにいたくないんですか!」
「いやだからさぁ人間辞めるのって結構覚悟が…」
「しぬよりこわくないでしょう!」
「あぁやっぱ筒抜け…どこから…?」
「かせんもやげんもつるもとっくにしってます」
「うん君が知ってる時点でそこは諦めたよ」
くらいの緩い感じ。
2017/07/02
とうらぶ