小屋

▼六章クリアした
結果、ベディは幸せにならないと許さない判決が下された


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この感情の名は知らない。

悲哀か、憐憫か、同情か。そんなありふれた名を付けて良いものではない。
痛ましいほど真っ直ぐに忠義を貫こうとした、愚かにも優しすぎた騎士の物語をそんな名で一括りにして良い筈がないのだから。


幾千にも分かれた世界の分岐点の、一つに過ぎないもしもの物語。
彼はその彼ではないのかもしれない、あの苦しみを知らない彼かもしれない。
けれど、そうだとしても。


「………あの、レディ?」
「…………」
「その、このように抱擁頂くこと…大変光栄で、身に余る幸福なのですが。どうか、なさったのですか…?」
「………ベディヴィエール」
「はい?」


駄目よ。許さない。
貴方はそれを望まなくても、例え神がそれを認めなくても。


「貴方は、幸せにならないと許さない」
「っ…?…ふふ、変わったことを仰いますね、レディ」
「絶対、絶対に。どの人間より、英霊より、幸せになって。幸せすぎて辟易するまで、幸せにならないと許さないから」
「…ええ、きっとなれるでしょう。貴女が傍に居てくださるのなら、こんな私でも世界一の幸福者となれる」
「……そんな安い幸せ」
「ふふ。いいえ、世界一の贅沢ですとも。私を幸せにしてくださいますか、レディ?」

銀に輝く右腕が頬に触れる。
本来の彼にある筈のないそれこそ、彼があの物語と切り離された存在でない証。

貴方が、私の胸が張り裂けそうなほどに愛しいと思った彼の時の彼である証なのだから。


「……サー・ベディヴィエール。貴方が望む限り、貴方が飽きるその日まで」
「……その返答は間違いですレディ。…それでは二度と、貴女は解放されることはなくなってしまう」
「いいえ、これが正解。貴方の為を装って、私が幸福になるだけの小賢しい返答でしょう?」
「…… あぁ、まったく」


愚かで愛しい最高の騎士。
貴方が望む限り、飽くほどの幸福を貴方に。



2017/12/10

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