違和感は旅に出ました




「真ちゃん」

「………」

「和くん」

「「………」」


「…おーい、せめて何かリアクションぷりーず二人とも」
「…なぁ緑間ぁ、すげーよな」
「あぁ」
「何が?」
「聞き慣れない筈なのに何の違和感もない」
「何故か空恐ろしいほど馴染むのだよ…」
「実はあれじゃね、俺らガキの頃茉莉さんと会ってんじゃね。そんときの記憶が無意識にこう、とか」
「いやいや流石に君達と会ったことあったら覚えてるんじゃないかな」
「違和感のなさに違和感を持つ程ですが」
「緑間君はそりゃ高尾君に日頃呼ばれてるからじゃないかい?」
「これに呼ばれるのは苛立ちしかありません」
「真ちゃん酷い!!もう一年近く呼んでんのに!!」
「ッチ」
「舌打ちすんな真面目に傷つくだろうが」
「まぁ落ち着き給えよ和くん」
「だって! あ、ほら今もすげぇ違和感なかった」
「んんん、可笑しいなぁちょっとした悪戯のつもりだったんだけど。効果なしとは」
「…何を期待したんですか」
「眉を顰めて止めて下さいっていう緑間君とげらげら笑ってほら真ちゃんも呼んでみ和くーんって!って遊びだす高尾君の流れ」
「あぁ暇なんすね?」
「そうそう、刺激が欲しくてね」
「じゃーご期待に添って真ちゃーんよn」
「呼ばん下僕で十分だ」
「にべもなく。いーじゃんいい機会だぜ?此れを機に友好を深めてさー」
「ッチ…」
「真ちゃん心底うぜぇ時って舌打ちで済ますよな」
「その眼差しが全てを物語ってるよね真ちゃん」
「お、慣れてきましたね真ちゃんに」
「段々楽しくなってきた真ちゃん」
「そうなんすよ癖になりますよね真ちゃん」
「おい人の名前で遊ぶな鬱陶しい」
「真ちゃんに怒られました」
「怒られたね真ちゃんに」
「………」
「はは、ごめんごめん。ちょっと調子乗った、ごめんね緑間君」
「キレんなよー。そーいや名前と言えばさ」
「ん?」
「真ちゃんって茉莉さんのこと名字だよな」
「…だから何だ」
「いやうちの部って割と茉莉さんの事名前で呼ぶ奴多いじゃん?一軍は特に」
「他がどうかは知らんが、先輩なのだから軽々しく呼ぶものではないのだよ」
「えーそりゃ大坪さんとかを名前でってのはあれだけどさぁ…こんだけ仲良くて名字ってのも」
「どうでもいい」
「…って言われてますけど?」
「んー?まぁ緑間君らしいっちゃらしいし私はそこまで気にしないけどねぇ」
「でもやっぱ茉莉先輩の方が嬉しくないっすか?あの緑間だからこそ尚更」
「はは、無理強いは良くないよねぇ」
「おい聞いたか緑間」
「………」
「こらこら。君が聞いてたかい、無理強いは良くないって」
「だってそれは出来れば名前で呼ばれたいってことですよね?」
「うーん」
「……… 努力は、します」
「いや努力するもんじゃないって。呼び方なんて流れで決まるもんだしさ」
「はいはい努力!そうだよ真ちゃん人事を尽くす男だからな!出来る出来る!レッツセイ茉莉先輩!」
「何だその汚い発音は」
「高尾君歌う時はめっちゃ流暢な英語なのにね」
「唐突にdisってくんの禁止!!話を逸らさない!はい!」
「「………」」

「…馬鹿は放って置いてさっさと行くのだよ」
「了解しましたー緑間曹長」
「っあ!おい!」
「リヤカーんとこで待ってるねー和くん」
「ちょ、茉莉さんまで!待てって俺まだ着替えてねぇっつの!」
「三十秒以上待たせたら承知しないのだよ、さっさとしろ下僕」
「ってめ、緑間ぁ!!」



バタンッ


「あー、思ったのとは斜め上だったけど楽しかったー」
「…先輩の暇潰しは度々面倒なのだよ」
「あっははーごめんって。まさかあの流れになるとは思ってなかったからさ」
「馬鹿を調子に乗らせないで下さい」
「調子に乗って馬鹿するのが高尾君の良いところでしょ?」
「鬱陶しいだけです」
「ふふふ、鬱陶しいお調子者と淡白過ぎる堅物。いいコンビじゃないか …あれ、そっち行くの?」
「…おしるこを買いに寄りますので」
「あぁそっか、なるほど。さっき最後の一缶飲んじゃってたもんね」
「別に茉莉先輩は先に行っても構いませんが」
「いいよー、一人は寂しいしついて、 …おぉ」
「…何ですか」
「いやいや。…ホント、違和感なさすぎて違和感ってこういうことだねぇ」
「気持ちが分かりましたか」
「うんすごく。いやー、なるほどなるほど。じゃ、おしるこ探しの旅に出掛けましょうか真ちゃん」
「…ふん」


20140718


此れを機に茉莉先輩って呼ぶようになるし、戯れで真ちゃん和くんて呼び出すし、宮地さんが若干舌打ちする。