おあずけの弊害


何せ経験がない、ので他と比較するなんてことはまず不可能だ。
けれども、そんな彼女ですらはっきりと分かる。

ものすごく、ねちっこい。


己のものでないかのように意志に反して跳ねる身体とやけに高い嬌声を必死に抑えながら、彼女は切れ切れの呼吸を紡ぐ合間に何とか言葉を作る。

「せ、んぱ…」
「…ん」
「しつっこいです…」
「うるせぇ、自由にさせろ」

返る言葉は何時も通りなのに、やけに優しく溶けたトーンであったので反射的に彼女は頬を染めることとなる。
勿論既に限界なほど熱かったのだが、更に体温が上がって冬の夜とは思えないほど身体は熱を帯びていた。

もっと何時もの通り暴言吐いたらどうなんですか、彼氏みたいな甘ったるい顔しやがって。
そんな意味不明の罵りは形を得ることはなく、代わりに荒い呼吸を整えて彼の髪に指を通す。

「汗かいてる」
「お前もだろ」
「…先輩が此処までねちっこいとは思いませんでした」
「突っ込んで終わりが良かったかよ」
「にしたってしつこいですよ。もう疲れました、よく飽きませんね」

しかしまぁ、何とも間抜けな姿だ。会話を続けながら彼女は今更ながら自分の滑稽さを客観的に振り返り不思議な感覚に襲われていた。

ベッドの上で服を脱いで、無防備で情けない姿を晒して。
いわゆる性交渉とはそういうものなのは承知しているが、どこか滑稽に思えて仕方なかった。
それでも、その滑稽な行為も相手が彼ならばと受け入れたのだが。

彼女より二回り、いやそれ以上に大きな彼の身体が覆い被さるように沈んで、彼女の耳元を吐息が擽る。

「…そうそう飽きるかよ、何年待ったと思ってんだ」
「待たせた覚えはありませんよ、御自分でそうしたんです」
「うるせぇ。…我慢してたことには変わりねぇんだよ、好きに触らせろ」
「とかってもう何分弄くり回してると思ってんですか…いい加減いいでしょう」
「気が済むまでだ大人しくしてろ」
「っ、」

ゆるゆると動く大きな手に思わず声を詰まらせる。
緩慢な刺激ではあったが、もうずっとこの状態を続けられては彼女としても辛いものがあった。

というか、まぁ、あれだ。私だって貴方に触られりゃそれなりにその気にはなるわけで。
そうぼやきに近い独り言を胸中で唱えながら、彼女は必死に口を押さえる。

「おい、生意気に抑えてんじゃねえぞ声出せ」
「馬鹿ですか無理ですしつこいです」
「いーだろうが。その方が血出ねぇらしいぞ」
「貴方の凶悪なそれ突っ込んで血出ないわけないでしょう」
「お前がチビだからだろチビ」
「煩いですよ規格外。せめてそこは通常になれなかったんですか凶器ですよ最早」
「よーしお前泣かすわ絶対」

普段通りの軽口なのに、瞼に触れた唇がやけに優しくて不覚にも彼女の心臓の奥は締め付けられるような痛みに苛まれた。


20131207


えっちをえろくなく書いてみよう選手権優勝候補、私です。
宮地さんはやっっっと触れた反動で前戯が本番レベルにねちっこい。ねちっこい。