日吉視点
中学2年になった。
学年が上がって、クラスも変わった。

流石はマンモス校というべきか、新しいクラスには見覚えのある顔が一つもなかった。

席はこの間の席替えでベランダ側から2列目の1番後ろだ。

人間観察が好きな俺にはなかなか良い席だ。

まぁ、だからと言って別にどういうわけでもない。

まぁ、困る事と言えば、鳳が休み時間になるたびにわざわざ俺のクラスまで来るくらいだ。

こいつが来ると女子がうるさくて仕方がない。

なぜ来るのか以前聞いてみたところ

「だってほら、日吉って社交性が無いだろ?だから友達が出来なくて淋しい思いをしてるんじゃないのかと思って心配してるんだよ」
だそうだ。

大きなお世話とは正にこのことで、爽やかな笑顔でそう言い放った鳳の頭を一発ぶん殴ってやりたくなった瞬間だった。

そもそも、鳳はクラスに来るたびに宍戸先輩の話ししかしない。

しかも一方的に鳳が喋っているだけなうえに、今日の宍戸さんの髪は綺麗だったとか、笑顔が可愛らしいだとかそんなことばかりだ。

会話なんて全く成立しない。

ここまで宍戸先輩の話しばかりされていると、実は心配云々は口実で、宍戸先輩の話しをしに来ているだけとしか思えない。

こんな日々を除けば、俺は相変わらず跡部さんに下剋上を果たすべく、テニスの練習に打ち込む日々が続いている。

ふと隣の席に目をやれば、1人の女子生徒と目が合った

大体の女子なら目が合うとすぐに反らすのが常なのだが、彼女は違った。

いつまでもたっても一向に目を反らす気配がないのだ。

なんとなく視線を反らすタイミングを逃してしまい、そのまま彼女を見つめ続けていると、横で鳳が、宍戸さんが心配だ。とぼやいていた。

俺としては、お前のその思考回路が心配だ。

と心の中でツッコミを入れておいた。

そんなことを考えている間も、彼女の視線は反らされることはなく、それからしばらくの間見つめ続けていたのだが、どうにもいたたまれなくなった俺は遂に視線を反らした。


何故だかは分からないが、妙な敗北感に襲われた俺は、心の中で彼女への下剋上を誓い、彼女の方をまたをちらりと見た。

するとさっきと同じ体制のままの彼女とまた目が合った。

どうやら相変わらず見続けられていたらしい。

まさかまた視線が合うとは思ってなくてすっかり油断していたおれは、またもや目を反らすタイミングを逃してしまい、そのまま彼女を見つめ続ける羽目になった。


しばらくすると、ふんわりと彼女が微笑んできた。

瞬間
体中の体温が一気に上がった気がした。

とりわけ顔は特に熱くて、夏でも無いのにジンワリ汗がにじんできていた。

どうすればいいか分からず、慌てて彼女から視線を反らすと鳳が

「あれ?日吉顔が赤いよ?」

なんて言ってきていたが、今はそれどころじゃない。

さっきから心臓がうるさくて仕方がない。

ちょうどそのとき、休憩時間終了のチャイムがなった。

「じゃあ、また来るから」

鳳は慌てて立ち上がると、そう言って自分のクラスに帰って行った。

俺は次の授業を受けるべく、姿勢を少し正した。

顔は相変わらず熱いままで、もしかしたらまだ赤いかもしれない。
風邪でひいただろうか?
別に詰まっている訳でもない鼻をすすってそんなことを考えた。



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