名前は事切れた神崎の遺体からリストを探していた。上着のポケット、ズボンのポケット、ありそうな箇所は一通り探る。やはりと言うべきか、どのポケットにもリストに繋がるようなものは無かった。流石にそんな簡単に見つかるようにはしていないか。息を吐いた名前は次にアクセサリー類を中心に探る。すると、彼女が一番の可能性を考えていたネックレスではなかったが、腕時計を外した時にリストは見つかった。

「今の腕時計ってすごいのね…」

神崎の腕時計は、俗に言うUSB腕時計になっていた。止め金具の部分からコネクタが出ており、腕時計を外さないとコネクタが分からないようになっている。部屋にあったPCのUSBポートに腕時計型USBを差し込み中身を確認してみれば、案の定取引先のリストが隠されていた。それを見た彼女はPCの電源を落とした後、腕時計とPCを手早く纏める。側にPCの鞄型ケースが落とされていたので、それを利用した。
扉からベットまでの道に落ちていた自分の鞄を拾い上げる。中からスマートフォンを取り出し確認すると、バーボンからの連絡は来ていなかった。

「レッドアイよ、任務完了したわ。監視カメラ映像の差し替えをお願いね」

「了解しました」

彼女が電話をかけたのは組織において任務の後処理を行う部署である。用件を伝え電話を切ると、コンマ1秒で彼女のスマートフォンが震え出した。

「バーボンです、保管庫を発見しました。そちらはいかがですか?」

「グットタイミングよバーボン。こちらもリストを入手したわ」

「それでは、用もなくなった事ですし会場から出ましょうか。ロビーで待ち合わせでよろしいですか?」

「オーケーよ、じゃあまた後で」

トン、とタップして通話を終える。目の前の鏡で自分の姿を見ると、酷い有様だった。ドレスは腰まで脱げているし、そこら中に跡はあるし、髪の毛のセットは崩れている。跡の方はどうにもならないので鏡を駆使しながらドレスの編上げを元に戻していく。元々器用な方ではないが、持てる力を駆使してどうにかドレスを着ることが出来た。その上からこれまた床に無造作に落ちていたショールを羽織る。崩れた髪型はどうにもならないので下ろしてしまった。

「それにしても沢山付けてくれたわね…」

自分が確認出来る範囲だけで数個はある。隠しきることは出来ないので仕方ないが、彼に見られたくないという気持ちが少しはあった。

「馬鹿みたい…」

鞄から煙草を取り出し、火をつける。煙を吸い込むと、名前からレッドアイに戻れる気がした。





「遅くなってごめんなさい」

「いえ、僕も今来たところですから」

「ふふ、さっきも言ってましたね」

「本当の事ですから」

名前がロビーに行くと、彼はソファに座っていた。彼女の姿を見るなり立ち上がった彼は、手を取り彼女を出口までエスコートする。ホテルマンに見送られながら無事脱出した彼等は、行きと同じようにRX-7に乗り込みホテルを後にした。

「それで?リストは何処にあったんです?」

「彼が持っていたわ。形を変えてね。見つけるのに苦労したけど」

そう言った名前が腕時計をバーボンに見えるようにゆらゆら揺らすと、彼は感心したようにへぇ…と呟いた。

「保管庫の方は睨んでいた通り図面に存在しない部屋にありました。組織の方に連絡しておいたので、今日の夜にでも回収が入るかと」

「……そう」

細く息を吐く。先程から視線が痛かった。居心地が悪い。十中八九、この跡が見つかってしまったのだろう。無性に煙草を吸いたくなったが、ギュッと手を握り締め我慢する。外に目を向けると深夜という時間帯もあり誰も歩いていなかった。チカチカした装飾も鳴りを潜めている。

「…レッドアイ。もう夜も遅いので、送っていきます。家は何処ですか?」

「…ありがとう。でも、組織の本部でお願い。車、置いてきちゃったから」

運転中ということもあり、彼は前を見たままだった。そこに付け込むように、私は横を向いたまま答える。今彼の顔を見たら、馬鹿みたいに泣いてしまいそうだった。私の返答に彼は分かりました、と言ってハンドルを切る。そこで私達の会話は途絶えた。

お題配布元:確かに恋だった

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