風呂から上がり一息ついていたところで、スマートフォンが震えた。
画面を見るとそこには"STOUT"と表示されている。名前は迷わず通話のボタンを押し、スマートフォンを耳に近付けた。

「Hello?」
(もしもし?)

「Stout?What happened?」
(スタウト?どうしたの?)

「Redeye?It’s great to see you.How about your life in Japan?」
(レッドアイか?久しぶりだな。そっちの生活はどうだ?)

「Not so bad...But,I miss United Kingdom so much!」
(悪くないわ…でも、イギリスに帰りたい!)

「Don't say that.It makes Wisgi happy when you say that.Well...When you feel hard, you can contact with me whenever you want. I am always on your side.」
(そう言うな。お前がそう言うなんてウェルシュは嬉しがるだろうな…まぁ、辛くなったらいつでも言ってくれ。私はどんな時もお前の味方だ。)

「Thanks,Stout」
(ありがとう、スタウト)

「I still regret that... I couldn't save you.」
(私は今でも後悔しているんだよ…お前を救えなかった)

「Stop,Stout.Don’t bring that up,Please.It's a promise,right?」
(止めてスタウト。お願いだからその話はしないで。約束でしょ?)

「I'm sorry...」
(すまない…)

「Don't apologize!」
(謝るのも無し!)

「…I was relieved to see that you looked like you were doing well. When you return from the United Kingdom,you looks like a dead person.」
(…元気そうで安心したよ。イギリスから帰る時、お前はまるで死人のようだったからね」

「I am sorry to make you worry.」
(心配かけてごめんなさい)

「I'm glad I could hear your voice.By the way,go to bed.It's already night time over there, isn't it?」
(声が聞けて良かったよ。ほら、もう寝なさい。そっちは夜中だろう?)

「Me too...I'm happy to hear your voice.I go to bed. Good night,Stout.」
(私も。声が聞けて良かった。もう寝るね。おやすみ、スタウト)

「Good night,Redeye.Sweet dreams」
(おやすみ、レッドアイ。良い夢を)

画面をタップして通話を切る。そしてそのまま無造作にスマートフォンをソファーに向かって投げ捨てた。
レッドアイにとってスタウトという男は父親のような存在の男であった。相手に心を許すことが難しいこの組織の中で、彼女が信用している数少ない人間である。幼い時に両親が殺されて以来、傷付いた彼女の心に寄り添ってくれたのは彼だった。そして、彼女を組織から救おうとしてくれたのも彼だった。

彼は言った。お前を一目見た瞬間、ウェルシュの子供だと分かったと。お前のことを、頼まれたとも。

当時の彼女は24時間体制で監視されており、学校にも通わせてもらえない状況だった。それを学校に通わせるようどうにか説得してくれたのが彼である。彼とベルモットのお陰で彼女は中学、高校、大学と普通の学生らしい生活を過ごす事が出来たのだ。

彼女の視線の先には、ナイトテーブルがあった。引き出しの中にはあのペアリングが収納されている。再開するまで嫌われてしまったと思っていた彼女にとって、彼が優しさを孕んだ瞳で自分を見つめてくるのに少なからず戸惑いを感じた。
ーー怖かった。彼の優しさに懐柔してしまっては、彼を危険に晒すことになる。いや、それはきっと建前だ。私は傷付くのが怖いのだ。彼は自分を利用しようとしているのではないか、そんな考えさえ頭によぎった。彼の優しさを受け入れて、4年前と同じ事を繰り返すなんて耐えられなかった。自己中な人間だと罵られてもいい。元々自分と彼では生きる世界が違うのだ。例え、同じ組織に所属していようとも。

お題配布元:秋桜

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