攫われたコナン君を救い出すため愛車を犠牲にして犯人の車を止める。車から転がり出てきた犯人を拘束しようとすれば、少し前からバイクで追ってきていた世良真純が犯人をバイクで殴り倒した。それにしても何故彼女が此処に…。思案しているとスマートフォンが震えた。画面を見るとそれはどうやらベルモットからのようで、通話ボタンをタップした彼は耳にスマートフォンを近付ける。

「どうやら一応の信頼は得られたみたいだけど…私との約束は守ってくれるのよね?バーボン?」

「勿論ですよ。ご安心下さい」

「それと…貴方、最近レッドアイの事を嗅ぎ回っているそうね?」

「言い方が悪いですよ。少し気になりましてね…勿論、女性として」

「極秘でもないし別にあの子の事を調べるのは構わないわ…ただ、あの子の為にも貴方に忠告をしてあげようと思って」

「へぇ…何ですか?」

「生半可な気持ちであの子に近付くのは止めておくことね。そんなの、あの子の為にも貴方のためにもならないんだから…」

「貴女がそこまで気にかけるとは…珍しい事もあるんですね」

「あの子は私にとっても大切な子なのよ。じゃあ、そういう事だから」

ベルモットが電話を切ったのか、スマートフォンの画面はホームに戻っていた。画面を一瞥した彼は事件現場に視線を戻す。誰かが警察を呼んだのか、辺りにはサイレンの音が鳴り響いていた。派手にやってしまった為、事情聴取は避けられないだろう。面倒な事になったとバーボンは小さく息を吐いた。

それにしても、あのベルモットがあそこまで気にかけるとは。一体名前ーーレッドアイは、組織の中でどのような立ち位置なのか。

此処数日バーボンはあらゆる手を使って彼女の事を調べていた。探偵として、公安として、そして組織の人間として。残念ながら探偵や公安として分かった事は特に無かった。それもそうだ、彼女と自分は高校から大学まで一緒だし、そして卒業してからも数年間共に過ごしたのだ。新たに分かった事といえば、彼女が日本生まれではない事、またハーフである事、それくらいであった。
しかし組織の人間として分かった事はいくらかあった。まず一つ、彼女は優秀なスナイパーであるという事。その腕前は組織の中で1、2を争うと言っても過言ではない程だそうだ。
次に、彼女の両親は組織の人間であったという事。コードネームまで与えられていた人物だったようだが、彼女がまだ小さい頃に亡くなったようだった。彼女から両親の話を聞いた事は無かった為、その理由は降谷零も知らなかった。
更に、彼女が組織の中で慕っている人物も小耳に挟んだ。スタウトというコードネームを持つ男を名前は大層慕っており、スタウトも彼女を可愛がっているようだ。まあ彼女を可愛がっているのはスタウトだけではないようだが。バーボンはスタウトを知らなかったが、組織のデータベースにはスタウトはイギリスを拠点に活動していると記載されていた。
そして1番衝撃を受けた事実は、彼女が組織で育ったという事だった。両親が死んでから彼女は組織にその身元を引き取られ育てられたという。その件にスタウトとベルモットが一枚噛んでいるという事実まで掴むことが出来た。

考えるのを一旦中断したバーボンが顔を上げると丁度パトカーが到着したようで、彼に向かって毛利蘭が手を振っていた。それに対して直ぐに行きますと伝えた後、彼は自らの愛車から鍵を抜いてレッカーの人に託す。そうしてパトカーの後部座席に乗り込むと、滑るようにパトカーは動き出した。


考えてみれば、彼女は高校時代よくギターケースを持っていた。軽音部の幽霊部員だった彼女はギターが上手かったが、部活の活動日では無い日もギターケースを持ち歩いていた。それに対して零は一度疑問をぶつけた事があったが、彼女は当たり障りの無い回答を返してきた。
今考えるとあのギターケース、中身はおそらく…。
窓の外を見る。自分の考えが間違っていなければ、少なくとも10年以上前から彼女はスナイパーとして活動している。思い返せば出会った頃の彼女は、あまり笑わず大人びた雰囲気を持つ女性だった。そんな彼女が1人、放課後の音楽室で悲しそうにギターを弾く姿に惹かれてーー。

「どうやらもっと調べる必要がありそうですね…」

「何か言いました?」

「いえ、何でもありません。そういえば、コナン君、身体は大丈夫ですか?怪我は?」

「大丈夫!怪我はしてないよ」

「そうですか。良かったです」

人当たりの良い笑みを浮かべて笑う安室を、コナンはジッと見つめていた。

お題配布元:確かに恋だった

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