飛行機から降りて到着ゲートまで歩く。イミグレーションを通り抜けてバゲージを取るためエスカレーターを下った。バゲージが出てくるまで時間がかかりそうだったため、椅子にかけた名前は電話をかける。
「…レッドアイか」
「久しぶりねジン。元気だった?」
「愚問だな…着いたのか?」
「ええ、もう直ぐ出れそう。迎えはあるのかしら?」
「安心しな、ベルモットがそっちに向かってるそうだ」
「最悪タクシーと思ってたからそれを聞いて安心したわ。明日はどうすればいいのかしら?」
「組織の本部に朝の10時に来い。任務があるそうだ」
「了解、じゃあまた明日」
電話を切ると丁度名前の白いスーツケースが流れてきたところだった。両手で掴み最後の検査を通り抜ける。片手でスーツケースを転がしながら人の間を縫うように進んだ。そうして外に出て、今度はベルモットが待つ車を探す。彼女が変装していたらどうしようかと不安がよぎったが、それは危惧に終わった。
「クリス」
コンコン、と車の窓を叩く。冬なのにつば広帽子とサングラスをかけた彼女が小さく窓を開けた。
「…変わらないわねレッドアイ。乗って」
トランクにスーツケースを押し込み助手席に滑り込む。名前がシートベルトを着用したのを横目で確認したベルモットは、ウインカーを出し勢いよく車を発進させた。
「向こうはどうだった?」
「まぁまぁだったわ。曇ってばかりだったけど。それよりも早く日本食が食べたいの!」
「あら?向こうで食べなかったの?」
「食べたには食べたんだけど、向こうの日本食って何かが違うのよね…」
ふぅん、と彼女の返事を一瞥したベルモットは名前の目元が僅かながらに赤い事を発見した。それを指摘すると、彼女は笑いながら飛行機の中でやっていた映画に感動したと話す。
「子供向けと思って馬鹿にしてたんだけど、すごく良い話で大人気なく泣いちゃった」
「あら、貴女、子供向けの映画を観るような趣味があったの?」
「たまたまよ、たまたま。たまたま興味を惹かれるような映画がそれしか無かったの!だから笑うのは止めて頂戴!」
クスクスと笑うベルモットに名前は顔を赤くしながら反論する。一通り笑い終えたのか、ベルモットはそれで貴女の家の事だけど、と切り出した。
「ちゃんと手配しておいたわ。勿論、貴女の注文通りセキュリティバッチリのマンションよ。気に入らなかったら自分で引っ越すなりなんなりして頂戴な」
「ありがとう。こんなことクリスにしか頼めないから」
ぼんやりと窓の外を眺める。いつの間にか車は高速道路を降りていたようで、そこには懐かしい風景が広がっていた。4年前となんら変わらない米花町の街並みは、嫌でも彼と過ごした日々を彼女に思い出させる。
「忘れたと思ってたのにな…」
彼女の小さな呟きは誰にも聞かれることなく、冬の曇り空に吸い込まれていった。
お題配布元:確かに恋だった
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