夜だというのに東都の街は人が多い。信号が赤になったのを確認して、ハンズフリーを耳に装着する。そのままある電話番号にかければ、しばらくコール音が鳴った後電話が繋がった。
「あら、バーボンじゃない。事件は解決したの?」
ベルモットは風呂に入っているのか、ピチョン、という水音がする。
「ええ、事件は解決しましたよ…。毛利名探偵のお陰でね」
「あら、そう。ところで、いつまであの探偵とつるむ気なの?キールの一件でシェリーと関わっている疑いのあるあの探偵に張り付きたいって貴方が言うから色々サポートしてあげたけど、もう用はないんじゃない?」
「いや、俄然興味が湧いてきましたよ…眠りの小五郎という探偵にね…。ところで、話は変わりますが」
「…何かしら?」
「レッドアイに、ハニートラップの任務を回すのを止めて頂けませんか?」
ブォン、とエンジンの蒸す音がする。右折レーンに入ったRX-7は、前の車に続いて右に曲がった。アクセルを踏み込みながら、バーボンはあの夜更けのことを思い出す。自然と口角が上がった。
自分の部屋で、自分の服を着て。自分と同じシャンプーの匂いをさせた彼女は、心にグッとくるものがあった。
「あら…仲直りしたのね?」
「お陰様で」
「良いわよ、元々私はあの子がああいった類の任務をするのに反対だから」
手配しておくわ。そう言ったベルモットに感謝の意を述べて電話を切る。そのまま目的地に向かい暫く車を走らせていると、渋滞にはまってしまった。高速道路でもないただの都道でなぜ渋滞が起きているのだろうか。不思議に思ったバーボンがカーラジオをつけると、5km程先で事故が発生したばかりのようだった。既に前後左右に車がいて、八方ふさがりの状態だった。これでは流れてくれるのを待つしかない。一体いつになるのやら、と彼が溜息を吐くと、電話が鳴った。ハンズフリーの通話をオンにする。降谷零のスマートフォンが鳴るということは、公安関係者か。
「風見です。今お時間宜しいですか?」
「ああ、大丈夫だ」
電話の相手は彼が想像した通りの人物だった。風見は確認を取ると、頼まれていた事件の捜査状況を論点をまとめて手短に彼に伝える。
「やはり、警視庁でも有力な情報は掴めていないようです。殺害方法は報道通り頸動脈を抉るように掻き切っています。同じ殺害方法の事件が他に2件ありますが、被害者に共通する点はまだ見つかっていません」
「凶器はどうだ?見つかっているのか?」
「いえ、鋭利な刃物であるということ以外分かっていないようです」
「分かった。引き続き調査を頼む」
通話をオフにすると同時に、前の車のブレーキランプが消えゆっくりと動き始めた。ブレーキからアクセルに踏み替え、前進する。
ここ数日、日本でとある殺人事件が起こっていた。何者かに頸動脈を掻き切られた遺体が次々に発見されたのだ。現場は路地裏や自宅、デパートのトイレなど様々で、室内に荒らされた形跡がないことから物取りの犯行ではないことが推測されている。また自宅の鍵に壊された形跡がないことから顔見知りの犯行と思われたが、被害者達に共通する顔見知りは誰1人存在しなかった。
「現場には一切の証拠を残していない、そして被害者の頸動脈を寸分の狂いもなく確実に掻き切っている…。まさか、な…」
ただの無差別殺人なのか、それとも。嫌な勘ほど当たるものだ。首を振って嫌な考えを振り払った零は、進み始めた車の流れに乗るように再びアクセルを踏み込んだ。
お題配布元:秋桜
[
BACK]