ジンを追って組織の駐車場に行くと、久しぶりに見るポルシェ356Aの隣に私の愛車である赤色のBMWカブリオレが止まっていた。4年前に手放したつもりでいたためビックリしてその場に立ちすくんでいると、後ろから来たクリスに鍵を渡される。

「感謝して頂戴よ?4年間管理しといてあげたんだから」

そう言った彼女はジンの車の後部座席に乗り込む。クリスには後で何かお礼をしないとなと思いながら名前は久しぶりに愛車の運転席に乗り込んだ。鍵を差し込み、エンジンをかける。エンジンの音が懐かしい。

「11時にキールとこのビルの駐車場で待ち合わせしている…お前も間に合うように向かえ。場所は覚えたな?」

「ええ、大丈夫よ。じゃあまた後で」

ウィンドウを上げた彼女はアクセルを踏み込む。駐車場から出ると外は雨が降っていて、少し気分が沈んだ。ハンドルを握り、走らせていると色々なことを思い出す。

「この車の助手席、乗せる男は彼だけって決めてたっけな…」

今となっては叶わない夢となってしまったが、昔の私にとって彼以外の男を乗せるなんて考えられなかった。自嘲気味に笑った名前は、助手席に置いた鞄から煙草とライターを掴み取った。細長くスタイリッシュな印象を持たせるピンクのパッケージから細長い煙草を一本取り出し火をつける。4年間。それは人を変えるには充分過ぎる程の時間。

煙草を口に咥え、左手をハンドルから離す。ポケットを触れば、布越しに拳銃の存在が伝わった。それは、母の形見であるベビーイーグル。

「母さん、父さん…」

彼女の小さな呟きは、煙と共に消えてゆく。





名前が駐車場に着いた時、キールはまだ着いていなかった。車をキャンティの横に停めた彼女はジンの車の後部座席に乗り換える。そうしているうちにキールが到着し、打ち合わせが始まった。

「時間は13時、場所はエディP…インタビュアーの私はDJを例の位置に誘導する…」

キールがそう言いえば、キャンティは興奮したようにスコープを覗き込んだ。そのやり取りを静かに聞いていた名前はジンに問う。

「それで?私は何をすれば?」

「レッドアイ…お前はキャンティとコルンと共にDJを狙ってもらう。狙撃場所やポイントは先日キャンティ達に話したからテメェ等で話し合って好きにしろ。羊の写真はこれだ」

「オーケー」

写真を受け取った彼女がジンの車を降りようとすると、トランクにライフルが積まれているから持って行けとジンに伝えられた。彼女がポルシェのトランクを開けるとその言葉通りライフルケースがそこには存在しており、ケースを持った彼女は自分の車の後部座席にそれを乗せ自身は運転席に乗り込む。

「それじゃ、手筈通りに」

そう言ったキールが車を発進させ、ジンの車もそれに続いた。キャンティが車のエンジンをかけた事を音で分かった名前は、キャンティとBluetoothで連絡を取り合えるよう話をつける。耳にヘッドセットを差し込み、いよいよ彼女もエンジンをかけた。

「それじゃ、あたい達は先に行くよ!」

そう言って勢いよく発進していったキャンティの車を見送った後、彼女も車を発進させる。そうして外の世界に出れば、雨はいつの間にか上がっていたようで曇り空が彼女を出迎えた。

「キャンティ、聞こえる?」

「聞こえるよ!あんたはエディPの真後ろ400ヤード先にある高層ビル杯戸岡田の屋上からDJを狙撃しな!」

「了解。一応確認するけど、エディPって杯戸公園の事よね?」

「ああそうだよ!」

「良かった。じゃあまた後で」

通話を切り勢いよくハンドルを切ると、名前は杯戸岡田ビルに向かって車を走らせた。

お題配布元:秋桜

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