※R15※
後頭部を固定され、深く口付けをされる。彼が執拗に彼女の歯列を舐め回したため背筋に悪寒が走ったが、何とか耐え抜いた。そのまま首筋にも再び口付けを落とされ、その唇はどんどん下へと移動していく。さて、私も仕事をしなくては。
「ねぇ、神崎さん…」
「……何だい?」
「神崎さんって、お仕事は何をしていらっしゃるの?こんな素敵なお部屋を借りれるくらいだから気になっ、」
「少し刺激が強かったかな?ん、まぁそうだね…いろいろ手広くやってはいるけど、このホテルの経営者は僕なんだ」
ドレスの上から彼女の胸を揉みしだく彼はドレスを脱がそうと四苦八苦している。彼女のドレスは後ろが編み込みになっており、そう簡単に脱ぎ着が出来る代物ではなかった。ロングドレスというのもあり脱がさないわけにもいかず、彼はどうにかして上だけでも脱がせようと躍起になっている。
「まあ、オーナーさんだったのね!凄いわ!」
「君にそう言ってもらえると嬉しいな。だからこの部屋は借りたわけじゃなくて自室みたいなものなんだ」
「そうなのね、どうりでセンスの良い家具が多いと思ったわ…」
漸く腰上までの編み込みを緩めることに成功した彼は彼女の膨らみに直に口付ける。リップ音を立てながらいくらかの跡を残されて、この男は嫉妬深い男なんだろうなとぼんやりと思った。
「でも、ホテルのオーナーさんだけでそんなに稼げるの?見たところ、っ、高価な家具ばかりっ、だけどっ…」
「おや、そんな所にまで目を向けていたなんて。流石だね。さっき色々手広くやっていると言ったけど、僕は本当に手広くやっているんだよ。危ない仕事もね…」
「危ない仕事…?」
「そう、危ない仕事。雪には想像がつかないような世界かもしれないね」
そう言った神崎は彼女の頂を口に含んだ。舌先でこねくり回したかと思うと、軽く甘噛みされる。名前にとって神崎の悪戯は気持ちよくなどなかったが、怪しまれないよう可愛らしい喘ぎ声を出した。
ここにきて漸く話題まで持って行けた。太腿の銃に気付かれる前に、リストの在り処を聞き出さなくては。彼女は心配そうな顔を取り繕う。
「危ないお仕事なんて、心配だわ…そういうお仕事にとって情報はとても大事と聞きますし、命がいくつあっても足りないんじゃ…」
「ふふ、雪は優しいね。そうだね、情報はとても大事だ。それこそ、命と言っても良いくらいにね」
「いのち…」
「この世界では情報が盗まれたら、死を意味する。…雪なら、どうする…?」
そう言った神崎は名前に再び口付けを送る。舌を追いかけられ吸われながらも、彼女はしっかりと神崎の言葉の意味を考えていた。名前の口内を堪能した神崎は唇を離す。お互いの唇から伸びる唾液の糸を見つめながら彼女は言葉を紡いだ。
「私なら…自分で持っておくかもしれません。だって、盗まれたら死んでしまうのでしょう?」
「…頭の良い子は嫌いじゃ無いよ」
そう言った神崎は名前の頭を優しく撫でた。
「雪の言う通り、私は身に付けているんだ。少し形を変えてね…」
お喋りは終わりだとばかりに神崎は名前の身体をベットに押し倒す。この男からこれ以上の情報は聞き出せそうにないと判断した彼女は、早速彼を処分することにした。胸元で執拗に行われている彼の愛撫を受けながら、彼女は自分のドレスの裾をたくし上げていく。暫くすると脚の付け根に到達し、ホルスターに指先が触れた。神崎に気付かれないように注意を払いながらホルスターの外側に付いたポケットからAPTX4869を取り出す。指先にそれをしっかりと挟み込み、彼女はドレスの裾を元に戻した。
「ねぇ神崎さんっ、早くっ、早く脱がして欲しいわっ」
愛撫を続ける彼の頭を抱え込みながら息も絶え絶えといった様子を彼女は演じる。まんまと彼女の策略に騙された神崎は、彼女の腕を掴み上体を起こさせた。
「気が回らなくて悪かったね…今脱がしてあげるから…」
そう言った神崎は彼女をしっかりと抱き寄せ背中の編み込みを解いていく。彼の肩口に顎を乗せた名前は、そっと息を吐いて濡れた瞳を閉じた。ゲームオーバー、さよならの時間だ。指先に挟んでいたAPTX4869を口に含む。彼に個人的な恨みはないけれど、これは命令である。今までハニートラップにかけた男達に比べると、この男は抜群に紳士的だったと彼女はぼんやりと思った。
「神崎さん」
「ん、何だい?このドレスは脱がすのに一苦労するね…」
「…キスしましょう」
神崎と身体を離し、腕を彼の首に回す。そうやって顔を近づけていけば、殆どの男が必ず彼女の口付けを受け入れるのだ。例に倣い、神崎も彼女の口付けを受け入れた。死の接吻はAPTX4869を彼が飲み込んだ事を確認出来るまで続く。自分が何かを飲み込んでしまったことに気が付いた神崎は、急いで唇を離した。
「……雪!!今私に何を飲ませた!!」
「どうされたの、神崎さん?」
「白々しい演技は止めろ!!くそっ」
人が変わったように荒々しく怒鳴り散らす神崎の頬を撫でる。その身体は細かく震えていて、少しだけ罪悪感が生まれた。
「ふふふ…どうせ最期だから教えてあげましょうか。貴方がいけないのよ神崎さん。組織の物を横領したりして」
「!!お前、まさか…」
「…コードネームはレッドアイ。これだけ言えば充分かしら?」
「…くそぉっ!!!…うっ……」
胸を押さえ苦しみ始めた神崎の身体を受け止める。静かに背中を撫でてやれば神崎は顔を上げて名前の首に手をかけた。
「許さない、雪、私を、」
死ぬ恐怖からか神崎は支離滅裂な言葉を発する。首を緩く締め上げる手をそのままに、彼女は目を閉じた。そうしている内に彼の身体から力が抜けた。首に絡みつく手も力を失っている。目を開ける。事切れた神崎の身体をベットに倒すと、見開いたままの目を手で優しく閉じてやった。
「…どうか、安らかに」
紅緋色の瞳は、何を写すのか。
?
紅緋色 ■
お題配布元:秋桜
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