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「い、や…っ、!!」

なまえは足を止めずに走り続ける。身体の震えが中々収まらない。そのためうまくバランスを取ることが出来ず、空を飛ぶことが出来なかった。


夕方。奴良組は幹部会議が終わり、そのまま宴会が行われていた。リクオと遊んでいたなまえだったが、リクオが総大将、ぬらりひょんに呼ばれてしまい暇になってしまったのである。

その暇が、なまえを夕方の街へと誘い出した。

「少しだけならだいじょ−ぶ。それになまえはお空を飛べるもの」

何処かで聞いたような台詞を並べ、夕方の街を歩くなまえ。夕方の街は初めて見るものばかりで、彼女の好奇心を掻き立てた。

「わあっ、これなんだろ?」

「きれ〜」

彼女は自らの欲望に従って街を回り始める。闇はすぐそこまで迫っていると知らずに――。




*

*

*


気が付くと辺りは真っ暗闇に包まれていた。なまえは新しい発見にあまりに夢中になり、全く気付かなかったのである。

「そろそろか−えろ、」

石を蹴りながらなまえは帰路につく。早く帰らなくては黒羽丸に叱られてしまう。もう辺りは真っ暗だ。急がなくては、なまえが走り出そうとした刹那。

「旨そうな小娘だ」

運悪く妖怪が現れてしまったのだ。

「い、や…っ、!!」

そして物語は冒頭へと遡る。



怖くて怖くて堪らない。段々と息が苦しくなってきているのが分かる。しかし今立ち止まる訳にはいかなかった。

「くくく、小娘ェ〜逃げても無駄だ」

しかし妖怪は1匹ではなかった。今まで姿を見せなかった仲間であろう妖怪達が前後左右から次々と現れ、ついになまえは囲まれてしまったのである。

「ゃ…、」

「小娘ェ〜もう逃げ場は無いぞ」

360度。何処を見渡しても妖怪に囲まれている。逃げられない。怖い。でもここでやらなければ、自分は死んでしまう。

――あの時のように、守ってくれる人はもういない。

震える羽根ををどうにか制御して広げる。

「くくく、今更羽根を広げてどうするというのだ?」

大丈夫、出来る。出来なきゃ駄目だ。頑張るんだ、なまえ!

「灼熱鳥!」

現れた炎の鳥は妖怪達に向かって行く。そして何匹かの妖怪を焼ききった。しかしまだ子供。彼女の弱い妖力では全ての妖怪を滅することが出来なかった。

「こ、小娘〜!!よくも仲間を」

仲間をやられ、怒りに染まった妖怪達。一気に彼女との間合いを詰め、牙を剥く。

「しねぇぇえい!!」

自分を喰おうとするその姿。その姿があまりにも恐ろしくて、あまりにもあの日と重なって見えて、なまえの時は――完全に、止まってしまった。

身体が、動かない。やられる…!そう思ってなまえがギュっと目を瞑った刹那。ドォォオン、と凄い音が聞こえた。あまりの轟音に、恐ろしくてなまえは目を開けられないでいる。そんな彼女に、漆黒の彼――黒羽丸は近付いた。

「なまえ」

「…!?」

よく知っている声が聞こえた。パッと目を開けたなまえは上を向く。するとそこにはやはり、頭の中で思い浮かべた人物がいた。

「くろ−まる、」

「遅くなって悪い。怖かったろ」

「くろ−まる、」

「兄ちゃんが来たからにはもう大丈夫だ」

「…っ、に−ちゃん!!」

怖かったよ、となまえは黒羽丸に抱き着いた。助かった安心感からか、はたまた黒羽丸という兄貴分が助けに来てくれたからなのか…とにかく彼女は、堰を切ったかのように大声で泣き出したのである。

「泣くな、なまえ。今こいつらをやっつけてやる」

「…っ、うんっ、」

「だから少しここで待っていろ。必ず戻ってくる」

ぐすり、と鼻を鳴らしながらこくりと頷いた。そんな彼女の頭を優しくひと撫でし、黒羽丸は敵に向かっていく。

「貴様ら。奴良組のシマで暴れただけでなく我が妹まで傷付けるとは」

生かしてはおけん、そう言った黒羽丸は不適に笑う。そして手に持った錫杖を振りかざし、敵に向かって行ったのだった。









「そう言えば…なまえ。お前、なんで勝手に街に出た。あれほど言っただろう!1人で外に出てはいけないと」

「ごめ、んな、さいっ!」

「…でもお前が無事で本当に良かった、」

「…ひっく、」

「本当に心臓が止まるかと…」

「ごめ゛ん゛な゛さ゛ぁ゛あ゛あ゛い゛!!」
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