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ド−ンという大きな音がした。縁側でうつらうつらしていたなまえの目は一気に冴える。音の発生源を探してきょろきょろしていると、夜空に何かが打ち上がっているのが見えた。
「花火だ…」
立ち上がったなまえは羽根を広げ、もっとよく見えるだろう屋根の上まで飛ぶ。なまえは今や自由自在に飛ぶことができるようになっていた。屋根の上についたなまえは瓦にちょこんと座り、夜空を見上げた。ちょうど花火が打ち上がったところで、独特の音がする。
「ひゅるる〜ぱ−ん!」
花火が上がるのと同時にその音を口真似する。興奮したなまえは立ち上がり、きゃっきゃっとはしゃいだ。相変わらず花火は大きな音をたてて夜空に華を咲かせている。
「きれ〜」
手を延ばす。掴めそうで掴めない花火はちょうど夜空に満開の華を咲かせたところだった。見とれたなまえは、足を滑らせてしまう。
「ぎゃぁぁあ!!」
そこからは早かった。まだ身体が小さいためか屋根から滑り落ちるスピードはとても速く、なまえは羽根を動かすことが出来ない。落ちる!咄嗟に目を瞑ったが、不思議なことに衝撃は感じない。
「お前は俺にどれだけ心配をかけたら気が済むんだ…」
目を開けると呆れたような黒羽丸の顔が目の前にあった。てへへ、と誤魔化すように笑ったなまえは彼の腕からどうにか抜け出してまた屋根瓦の上に座る。前とは違い墜落自体はさほど怖くなかった。ただ、墜ちるスピードは未だに慣れない。飛ぶ練習をした時に何回か墜ちたため、少しの距離ならへっちゃらになってしまったからである。
「はなび−!」
「そうだな、」
膝の間になまえを座らせた黒羽丸は優しく微笑んで彼女の頭に手を置いた。いつの間にか花火はラストスパ−トになっていて、沢山の花火が夜空に打ち上がっている。
「お前、前にも見たことあんのか?」
パトロ−ルから今さっき帰ってきたのだろうトサカ丸がそう言って2人の隣に座った。なまえはトトちゃんだ−!と嬉しそうに笑う。
「ある!」
「ほ−。でもこんなでけぇのは初めてだろ」
「うん」
蒸し暑い夜だった。暑くてぐずっていた自分を連れた兄は、羽根を広げて花火のギリギリ近くまで寄ってくれたのだ。その時のことを思い出したなまえは、黒羽丸に擦り寄った。これ以上、その時のことを思い出したくなかったのだ。黒羽丸はなんとなくなまえの気持ちが分かったのか、彼女の背中に優しく腕を回してやる。夜空には、最後の花火が打ち上がっていた。
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