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「まてこら−っ!!」
「や−だよっ」
ドタタタ、と激しい音をたてて長い廊下を走り抜ける。なまえの髪からはポタリポタリと水滴が垂れていて、彼女がお風呂上がりだということは容易に連想出来た。
「てめぇまだびしょ濡れじゃないか−っ!」
「じぶんで乾かせる−!」
「風邪ひいたらど−んすだコラ−っ!」
「ひ−か−な−い−っ!」
タオルを持ったトサカ丸は風のようなスピードでなまえを追い掛けているが、逃げるなまえのスピードもだいぶ早い。季節は夏。お風呂上がりのなまえは濡れた髪をドライヤ−で乾かすことを極端に嫌がる。理由は簡単、暑いのだ。元々孔雀妖怪は普通の妖怪よりも基礎体温が少し高めだ。それ故彼等にとって夏は厳しい季節である。ドライヤ−で髪の毛を乾かすなんて持っての他、折角水風呂で冷やした身体をまた温めるだけだ。
「…っ、捕まえたぜこの悪餓鬼チビ助」
「や−だぁぁあっ!!はなして−!」
おいかけっこはトサカ丸がなまえを捕まえたところで終了。足の早いなまえでも大人の鴉天狗の体力には敵わなかったのであった。
「ドライヤ−が嫌ならせめてタオルで拭いとけって」
ぐわしぐわしと音が聞こえてきそうな力強さでトサカ丸はなまえの髪の毛を拭く。勿論、なまえは嫌そうな顔で痛がった。
「いたい−!トトちゃんいたい−っ!!」
身体を捻りに捻り、やっとのことで自由の身になったなまえは急いでトサカ丸から距離を取った。今やなまえの髪の毛はほぼ水分が無くなっていて、その事実はトサカ丸の腕力がいかに強かったかを表している。
「なまえ!まだ濡れてんだろ!」
「も−平気だもん!」
そしてまたおいかけっこが始まったのだった。しかし2回目のおいかけっこは案外早く終止符が打たれることになる。
「くろ−まる!トトちゃんがいじめる−っ!」
「なんだと?」
「あのね、あのね、なまえのこと潰しそうないきおいで頭ごしごししてくるの!」
「…だぁぁああっなまえ!兄貴に告げ口すんな!!ちょ、誤解だ兄貴ぃぃい!!」
「問答無用」
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