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「よくやった!」

一先ず彼女は落ち着いている。あれから鴆の所へと急いだ黒羽丸。やはり彼女はかなり重症だったようで、もう一足遅ければ彼女の命は消えていたかもしれないと鴆に言われた。

「にしてもこいつ…何の妖怪だ?羽根が見たことない色をしてやがる」

鴆は未だ意識が戻らない彼女の羽根の色を見詰めた。鴉天狗のように黒でもない、自分達のように透き通っているわけでもない。例えるなら、七色か。まだ骨格が安定していない小さな羽根を撫でながら、思案する。

「鴆様。報告のために本家にこの子を連れていこうと思うのですが…」

動かして平気ですかね?となまえを横目で見ながら黒羽丸は問う。すると鴆はおぅ、ただしあんまり揺らすなよ、という返答をした。

「ありがとうございます」

黒羽丸はそっとなまえを抱き上げた。そしてなるべく彼女の身体が平行になるようにしてやる。ん、と声を漏らしたなまえだったが目を開くことはなかった。

「鴆様もご一緒に行かれますか?」

「わりぃ、オレ今あんま体調がすぐれね−んだわ。後日そいつの様子見ついでに本家に行かせてもらうぜ」

そう言いながら鴆は戸棚から瓶を取り出す。そして中身を確認した後、黒羽丸にそれを手渡した。

「これ。こいつが目を覚ましたら飲ませてやってくれ」

「?」

「ただの痛み止めだ。この怪我じゃ数日は身体が痛むだろうからな」

「確かに…」

今彼女の身体は至るところに包帯が巻かれている。擦り傷、切り傷、挙げれば埒があかないくらい沢山の怪我をしていた。中でも致命傷になるかもしれなかったのは彼女の腹に空いた大穴。

「ったく誰がやったってんだ、こんなひでぇことをよ…」

「…………」

彼女は奴良組のシマで倒れていた。と、言うことは奴良組の誰かの仕業ということか。だとしたらそれは大問題である。何処の組の子かは分からないが、この子が所属する組が攻め込んでこないとも限らない。所謂(いわゆる)御礼参りというやつである。

「…それでは鴆様。そろそろ失礼させていただきます」

「あぁ、引き留めて悪かったな」

瓶を黒羽丸に手渡した鴆はひらひらと手を振った。一礼した黒羽丸は敷居を跨ぎ外に出る。そして暁天に向かって漆黒の羽根を広げた。
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