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「…………」

二度目の寝覚めはあまり良いものではなかった。なまえの周囲には何匹かの妖怪がいる。そして部屋の外で中の様子を窺っている妖怪達は、その2倍は優に越えていた。

「お目覚めかな、お嬢さん」

「…………」

なまえは怯えと警戒心が混じった瞳で自分に声をかけてきた妖怪――即ちぬらりひょんを見つめる。――怖かった。妖が、怖かった。どんな妖でも自分に近付いて欲しくなかった。

「こないで、」

「…………」

「なまえに、ちかよらないでぇっ…!」

――これ以上、みんなを傷付けないで。



彼女が住んでいた山は、妖に襲われた。誰に襲われたかは覚えていない。ただ覚えているのは、その妖が自分達孔雀妖怪の生き肝を狙っていたこと、両親は生き肝を奪われた揚げ句殺されてしまったこと、そして

――自分を庇って兄は、死んでしまったこと

それだけだった。

「おい、てめぇら」

「…何ですかな総大将」

「少し出ていろ。こいつと2人きりにしてくれ」

「そっ、総−大−将−!!」

総大将の申し出に鴉天狗は困ったように唸った。確かにこの子はまだ子供。しかし総大将と2人きりにしてよいものなのか。我が奴良組の跡取りであるリクオ様はまだ幼い。今総大将が亡くなってしまっては、奴良組の大将がいなくなってしまうのである。組の解散にも繋がりかねない。

それに、二代目が殺されたばかりなのだ。

この子が刺客ではないという証拠はない。馬鹿息子によれば奴良組のシマで倒れていたそうだが、先程は屋敷を焼ききる勢いで炎を暴走させていた。倒れていた理由は分かりかねるが、何故奴良組のシマにいたのか。しかも今、この時期に。

「いくら総大将の頼みであっても、お聞きすることは出来ませぬぞ」

「いや、聞いてもらう。ほら、てめぇら。早く出てけ」

「そ、総大将〜…」

困り果てた鴉天狗は羽を散らしながらパタパタと周りを舞う。そうしている間にも、素直に総大将の言うことをきいて部屋から出ていく妖怪達。そんな中鴉天狗をむんずと掴んだ首無は総大将と目配せし、その場を立ち上がった。

「これ、首無!離さんか!」

「総大将がこう仰っておられるのです。我々が口を出すことは無いでしょう」

そのまま彼を引き摺るようにして(鴉天狗は空中で一生懸命抵抗していた)首無は部屋を出ていく。部屋には鴉天狗が散らした羽根と、遠くから聞こえる「総大将〜!!」という声だけが残った。

「…さて、」

「…………」

「五月蝿いのもいなくなったところで、じじぃと話をせんかの?」

「…………」

唇をギュっと噛み締め、目の前の妖怪を睨んだ。口を開く気なんて、全く無かった。この時のなまえには、全ての妖怪が敵に見えたのだ。
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