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「くり、ます?」
「クリスマス、だ。クリスマス」
「くりすます!」
ツリーの一番上の星を飾っている、なまえが踏み台から落ちないように支えてやりながら黒羽丸はその周りの装飾を進めていく。なまえ本人はてっぺんを飾り付けることが出来たことでかなりご機嫌な様子である。12月下旬の奴良組は忙しい。何故ならばクリスマス、大晦日、お正月、とイベント事を1つも逃さずきっちり行うからである。理由は言わずとも宴会の為である。この組の妖怪達は酒に目がなかった。
「ね−黒羽丸−」
「なんだ?」
「くり…ます?ってなあに?」
「クリスマスな、クリスマス。クリスマスというのはな、いつも良い子にしている子にサンタクロースがプレゼントを届けにくる日のことだ」
「しゃんた、ろ−す?」
「サンタクロースだ、サ・ン・タ・ク・ロース」
「さんた!」
嬉しそうに笑ったなまえは踏み台から飛び降りる。ふわり、と綺麗に着地した彼女はなまえの所にもくるかな〜、と期待を込めて黒羽丸に聞いた。
「なまえがいい子にしていればきっと来るぞ」
「なまえ、いい子だもん。だからきっとくるよ!」
「ならお手紙を書かないとな」
「おてがみ?」
「この間文字を教えてやったろう?あれでサンタさんに欲しいプレゼントを頼んだらどうだ?」
そっか!と笑顔を浮かべた彼女はさっそくサンタクロースへの手紙を書くことにした。若菜から手紙セットと鉛筆を貰い、机に向かう。しかしサンタさんへ、と便箋に書き始めたところで手が止まってしまった。
「なまえの欲しいもの…なんだろ−?」
どうしたのかと聞けば首を傾げてそう言うので、黒羽丸は彼女にいろいろ助言してやる。そうすればなまえはすらすらと手を動かし始めたので、黒羽丸はそっと退室した。彼女が何を書いているのかはクリスマスイブの夜までのお楽しみだ。
「一晩で叶えられるお願いだといいが…」
*
*
*
ドンチャン騒ぎが行われている広間とはうって変わり、部屋にはなまえの寝息が響き渡っている。自分はサンタクロースを見るから寝ない、と意気込んでいた彼女も襲ってくる睡魔には勝てなかったようだ。黒羽丸はそっと彼女の枕元まで移動した。枕元には彼女が用意したサンタへの手紙と靴下が置いてある。なまえを起こさないようにそっと手紙を手に取った黒羽丸は、その封を切った。
「……………」
手紙を読み進めるにつれて、黒羽丸が知らなかった事実が発覚する。
「総大将が秘密でくれたガディバのチョコが欲しい…」
一体いつの間に貰ったのか、溜め息を吐いた黒羽丸はそういえばなまえが珍しく夕飯を残した日があったことを思い出した。おそらくあの日に貰ったのだろう、秘密でおやつを食べていたからお腹がいっぱいだったに違いない。なまえにはキツく言い聞かせなければいけないと思いつつ総大将の悪事はどうにかならないものかと頭を抱えた。
再び手紙を読む行為に戻った黒羽丸だったが、読み進めるにつれて彼の眉間には皺が増えていく。そして、ようやく手紙を読み終えた彼はそっと眠るなまえの頭を撫でた。夢の中にいながらもその手の存在に気が付いたのかなまえは嬉しそうにすりよる。
「なまえ……」
なまえが奴良組に来てから随分経った。最近の彼女は来たばかりの頃のように辛そうに泣くことなど忘れ、楽しそうに笑ってばかりだったというのに。過去というものは一生消えず、その小さな心を蝕んでいるのだ。
「……言われなくともずっと一緒にいてやる」
ずっと兄貴でいてやる、だから泣くな。
黒羽丸のその言葉に眠りつつも反応したのかなまえはギュッと彼の袖口を強く握った。それを無理してほどこうとはせず、黒羽丸はなまえの頭を撫でてやる。暫くそうした後彼女のもう1つの願いを叶えるために彼はそっと部屋を後にしたのだった。
「わぁ〜〜っ!ガディバのちょこたくさん!ホントにさんたさん、来たんだ!」
「なまえがいい子だったからな。それよりなまえ、以前総大将から秘密でこのチョコを貰ったと聞いたんだが…」
「うっ……黒羽丸が何でしってるの…」
「親切なサンタさんはお前の悪事を俺に教えてくれてな。今年は目を瞑るが、来年からは考えるとも言っていたぞ」
「……もうしない!もうしないから!だからさんたさん、なまえの所にもきて−っ!!」
「うわ、ちょ、なまえ、泣くな…!」
「………おっ、珍しい珍しい。兄貴がなまえのこと泣かしてやがる〜」
「うわぁぁああん!」
「トサカ丸!!余計なことを言うな!!なまえ、お願いだから泣き止んでくれ…」
「さんた、さぁぁああん!来ないなんてやだぁぁああ!良い子にするからぁぁああ!!」
さんたさんへ
そ−だいしょ−が秘密でくれたガディバのちょこがもういっかいたべたいです。でもこんどはくろうまるとかささみね−ちゃんともたべたいのでたくさんください。
あとは、ずっとみんないっしょにいれるようにしてください。だれかがいなくなるのは、もういやです。
なまえより
MerryX'mas
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